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まさかの裏切り

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「翔馬、起きろってばー。」

どこからか文也の声が聞こえる。
だけど、今はいいところなんだ。

「むにゃ~。もう食べられないよ~。」

いくら食べても減らないご馳走に、俺は幸福感で満たされていた。

「仕方がない。無理矢理にでも起こすか。」

バシャーーー!!

「うわっ、何?冷たっ!」

突然びしょ濡れになり、俺は飛び起きた。
慌てて周りをキョロキョロ見ると、呆然としている文也と、桶を持った春則がいた。

「なんだよ、今いいところだったのに。」

俺はオーバーに不貞腐れて、春則の反応を伺った。

「何がいいところだ。もっと周りをよく見てみろ。」
「えっ?どういうこと?」

訳がわからないまま、俺はさらに目を凝らした。
そしてようやく、今自分たちの置かれている状況に理解した。

「これって、鉄格子⁉︎」
「そうだよ。俺たち閉じ込められたんだよー!」

文也は今にも泣きそうな声で叫んだ。
その声を聞いて、俺も急に不安になった。

「なんで、どうしてこうなったんだよ。しかもどうやって俺たちを捕まえたんだよ。」
「おそらく、食事に睡眠薬でも仕込まれていたんだろ。そして俺たちが眠っている間に、ここへ運んだって訳か。」

それが本当だとしたら、初めからすべて罠だったということになる。
あの時助けてくれた村人も、楽しい宴も、俺たちも騙すための嘘だったのか!

「そうだとしたら、やっぱりお金を騙し取られたんだ。くそー、返せよ俺の10円…!」
「いや、そこじゃないでしょ!」
「なんで文也は腹立たないんだよ。お金は大事だろ。」

それからしばらくの間、文也と言い争いをしていたが、春則に止められた。

「とにかく今は、ここから脱出する方法を考えろ。」

そう言いながら春則は桶を持ち上げると、鉄格子に思い切り投げつけた。
やはりというか、鉄格子はびくともしなかった。

「というか、なんで樽なんてあるんだ?」
「それには、体を洗う用の水が入ってたんだって。」

え?なにそれ、どういうこと?

「そんな事なんで知っているんだ?文也。」

春則は恐ろしい形相で、文也に詰め寄った。
このままではさっきの喧嘩よりまずいことになると思い、俺はすぐに間に割って入った。

「待てって!一旦落ち着いて。」
「理由を説明しない限りは、無理な相談だ。」

今ここで俺が退いたら、確実に文也は一発殴られるだろう。

文也、早く何か言えよ。

応答しない文也を疑問に思い、彼に目をやった。
すると文也は、俯いたまま立ち尽くしていた。

これくらいでビビる奴じゃないと思い、さらに顔を覗き込むように見た。

あれ?もしかして、笑ってる?

その時、奥の方で扉の開く音がした。
それを聞いた瞬間、全員が動きを止めた。

だから俺は、全神経を耳に集中させて、外の様子を窺った。
すると何人かの足音がこっちに向かってくることが分かった。

そしてとうとう俺たちの前に、村人たちがやってきた。
その中心には、肩まで伸びた白髪と、立派な口髭が特徴の、いかにも偉そうな爺さんがいた。

「村長、この者たちがそうです。」
「ふむ。なるほどな。」

村長はそう言いながら、じっと俺たちを見つめている。

いよいよまずいことになってきた。
これから俺たちは、どうなるんだろう?

「村長さん。約束通り、イケメンを連れてきました!」
「たしかに、これは見事なものだな。ご苦労だったな、文也よ。」

えっ、なんでこの爺さん、文也の名前を知っているんだ?

俺にはまったく状況が飲み込めない。

「ごめんね、2人とも。俺、最初からグルだったんだ。」

なっ、なんだってーーー⁉︎
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