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裏切りの代償

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今、俺と春くんは、村人たちに取り囲まれている。

春くんは村長の言葉に激昂して、今にも飛びかかろうとしているところを、取り押さえられていた。

俺はというと、村人サイドの人間なので、高みの見物をしていた。

とはいえ、まさか翔馬がこんな目に遭うとは、夢にも思っていなかったので、ぶったまげた。

「ジジイ!てめえ、翔馬に指一本でも触れてみろ。タダじゃおかないからな!!」

まるで自分の事のようにぶち切れている春くんを見て、非常に違和感があった。
なんでただの友達なのに、ここまで怒るのか、理解に苦しむところだ。

「あの…、俺、男ですけど…。」

翔馬はまだ理解していないみたいだ。

そんな事承知で、ここに連れてきたに決まってるだろう。
この村人たちは、全員ホモなのだ。

翔馬、恨むなら、イケメンで生まれた自分を恨むんだね。

「さあ、此奴を連れて行け。」

村長が命令すると、村人たちは翔馬を連行していく。

「うわっ⁉︎助けて春則ーーー!!」

ギリギリのところで、翔馬は格子戸を掴み、踏みとどまった。

春くんは懸命に村人たちを振り切ろうともがいたが、その甲斐虚しく、翔馬は格子戸から引き離された。

「翔馬……、翔馬ああああ!!」

とうとう翔馬はどこかへ連れて行かれ、それと同時に俺たちは村人たちから解放された。

「それじゃあ、俺はもう帰るわ。」

意気揚々と鉄格子から出ようとしたが、何故か扉を閉められてしまった。

「あれ?翔馬たちを連れてきたら、助けてくれる約束でしたよね?」

非常に嫌な予感がしつつも、一応村長に尋ねてみた。

「そんなわけなかろう。お主らは、口封じのために、ヤリステの刑に処す。」

なんですか、その刑は⁉︎

「要するに、掘られるのですか?」
「ピンポーン!ご名答じゃ。」

何と俺も、この村長たちに嵌められていたのだ。

「約束が違います!俺だけでも助けて下さーい!!」

叫び声も虚しく、村長は振り返る事なく立ち去ってしまった。

そして春くんと2人ぼっちになってしまい、気まずいったらない。

こんな時は、とりあえず仲直りしておくべきだろう。
そうすれば、今後逃げ出す際、何かしら役に立つことだろう。

こんなところで男としての人生を終わらせるわけにはいかないのだ。

「春くん、ごめん。俺、あいつらに脅されていたんだ。」

すると春くんがチラッとこちらを見た。
その顔を見る限り、怒ってはいない様子で、ホッと胸を撫で下ろす。

「よかった。わかってくれっ──⁉︎」

ドカッ!!

春くんは急に距離を詰めたかと思えば、俺の顔面に怒りの鉄槌を下した。
その衝撃で、俺は勢いよく尻餅をついてしまった。

彼は全然許してくれてなどいなかったのだ。

ふらふらと立ち上がろうとすると、春くんが俺の胸ぐらを掴んだ。

「今ので済んだと思うなよ。」

さらに数分間、俺はボコボコに殴られた。

すっかり頬が腫れ上がった俺は、誠心誠意、地べたに這いつくばって謝った。

「謝るなら、翔馬に謝れ。」
「はいー!もちろんです!」

この瞬間、俺は完全に春くんの言いなりになった。

なんとか許してもらえた俺は、これまでの経緯を説明することにした。
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