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大陸の東にあるボルビック王国。本日は王立学園高等部の卒業式があり、今はその夜会の真っ最中。
1番大きなホールには色とりどりのドレスを着た女生徒が婚約者や親類にエスコートされ、皆一様に嬉しそう。
天井のシャンデリアはキラキラと輝き「まるで朝露に濡れた蜘蛛の巣のようね」美しい。
不意に周囲が静まり、ホールの空気が張り詰めた。
動きを止めた人々の視線は、ホール中央に立つ3人に注がれています。
金髪碧眼でいかにも王子らしい青年、王太子アルファード・ボルビック殿下は白い礼服を身につけ、その腕にキャンベラ・ロックハート男爵令嬢を抱いています。純白のドレスに身を包み、珍しいピンク色の髪をハーフアップにした彼女は、スカイブルーの瞳からポロポロと真珠のような涙を溢れさせた。
独り対峙するシセーラ・フロスト公爵令嬢は、白金の髪を複雑に編み、ドレスは淡い碧色…王太子の瞳の色ですね。琥珀のような瞳を伏せ、堪えきれずに肩が震えています。
「シセーラ・フロスト!今日をもって君との婚約は破棄させてもらう!」
ーー嗚呼、始まってしまったようですね。
「君は嫉妬にかられ随分キャンベラ嬢を虐げてきたそうだな。しかも突き落として殺そうとまでしたとか…。そんな女性と結婚などできない、君には自分の犯した罪を償ってもらう!」
王太子殿下ははキャンベル嬢を抱き寄せ
「これからは僕が君を守ろう、愛している」
「…アルファードさま!」
茫然自失の状態で佇むシセーラ様を放って、なんか盛り上がってるみたいです。
「王太子ルートでしたか」
そんな断罪劇をホールの壁際で見ていた私の口から、ついポロリとつぶやきが漏れてしまいました。
◇◇◇◇***◇◇◇◇***◇◇◇◇***◇◇◇◇
「お嬢様!お気を確かに!!」
「おや?」私はいつの間にお昼寝していたのでしょう。見慣れた自室のベットの天蓋をぼうっと眺めていたら、視界に侍女のマーサが飛び込んできました。
「おや?ではありません!しっかりなさってください」
「ええ…と、『乙女げー』…?『逆ハーレム』?『断罪イベント』…??」
ゆるゆると身を起こしながら先ほど見た夢を思い出します。
「お嬢様?」
「ねぇ、マーサ。『すまほ』ってなにかしら…?手のひらぐらいの板に色々な絵が代わる代わるに映し出されるの…何かとても大事なことがあったような……でも、思い出せないわ……なんだったのかしら…?」
慌ててマーサが部屋を飛び出し、お医者様を呼んできました。マーサは私よりも7つ年上で、そばかすの可愛い赤毛の侍女なのですが、少し慌てっぽいところがあります。けれど根はしっかり者のマーサは私にとって姉のような存在でもあるのです。
「お嬢様は日頃から少しぼんやりして、ズレていらっしゃいますが、今日は一段と変です!!」
マーサったら、本人を前にしてそれは失礼なんじゃない?残念ながら否定はできませんけれど。
お医者様まで哀れなものを見るような目で見ないでくださいまし。
「お嬢様、ご自分のお名前と年齢はお分かりになりますか?」
「…セレナーデ、バーンハイム子爵の娘で、今年で15歳になりました」
「お嬢様は王立学園の制服を試着中に鼻血を噴いてお倒れになったのですよ!?」
マーサに言われて思い出しました。そうでした。私は私立の女学院を卒業し、婚約者のいる王立学園の高等部に入学するべく制服を新調して、今日はその試着をしていたのでした。鏡に映るのはチョコレート色の髪に榛色の瞳をした少女。不細工とは言いませんが飛び抜けて美人とも言い難い顔立ちです。キャラメルブラウンの制服はワンピースからボレロ、靴下に至るまでオーダー品でシリアルナンバーがついてるそうです。校章のブローチに婚約者の瞳と同じ紫色のリボンをつけて襟元へ…そこで私の意識は途絶えました。新調した制服に鼻血がついていないか心配です。
1番大きなホールには色とりどりのドレスを着た女生徒が婚約者や親類にエスコートされ、皆一様に嬉しそう。
天井のシャンデリアはキラキラと輝き「まるで朝露に濡れた蜘蛛の巣のようね」美しい。
不意に周囲が静まり、ホールの空気が張り詰めた。
動きを止めた人々の視線は、ホール中央に立つ3人に注がれています。
金髪碧眼でいかにも王子らしい青年、王太子アルファード・ボルビック殿下は白い礼服を身につけ、その腕にキャンベラ・ロックハート男爵令嬢を抱いています。純白のドレスに身を包み、珍しいピンク色の髪をハーフアップにした彼女は、スカイブルーの瞳からポロポロと真珠のような涙を溢れさせた。
独り対峙するシセーラ・フロスト公爵令嬢は、白金の髪を複雑に編み、ドレスは淡い碧色…王太子の瞳の色ですね。琥珀のような瞳を伏せ、堪えきれずに肩が震えています。
「シセーラ・フロスト!今日をもって君との婚約は破棄させてもらう!」
ーー嗚呼、始まってしまったようですね。
「君は嫉妬にかられ随分キャンベラ嬢を虐げてきたそうだな。しかも突き落として殺そうとまでしたとか…。そんな女性と結婚などできない、君には自分の犯した罪を償ってもらう!」
王太子殿下ははキャンベル嬢を抱き寄せ
「これからは僕が君を守ろう、愛している」
「…アルファードさま!」
茫然自失の状態で佇むシセーラ様を放って、なんか盛り上がってるみたいです。
「王太子ルートでしたか」
そんな断罪劇をホールの壁際で見ていた私の口から、ついポロリとつぶやきが漏れてしまいました。
◇◇◇◇***◇◇◇◇***◇◇◇◇***◇◇◇◇
「お嬢様!お気を確かに!!」
「おや?」私はいつの間にお昼寝していたのでしょう。見慣れた自室のベットの天蓋をぼうっと眺めていたら、視界に侍女のマーサが飛び込んできました。
「おや?ではありません!しっかりなさってください」
「ええ…と、『乙女げー』…?『逆ハーレム』?『断罪イベント』…??」
ゆるゆると身を起こしながら先ほど見た夢を思い出します。
「お嬢様?」
「ねぇ、マーサ。『すまほ』ってなにかしら…?手のひらぐらいの板に色々な絵が代わる代わるに映し出されるの…何かとても大事なことがあったような……でも、思い出せないわ……なんだったのかしら…?」
慌ててマーサが部屋を飛び出し、お医者様を呼んできました。マーサは私よりも7つ年上で、そばかすの可愛い赤毛の侍女なのですが、少し慌てっぽいところがあります。けれど根はしっかり者のマーサは私にとって姉のような存在でもあるのです。
「お嬢様は日頃から少しぼんやりして、ズレていらっしゃいますが、今日は一段と変です!!」
マーサったら、本人を前にしてそれは失礼なんじゃない?残念ながら否定はできませんけれど。
お医者様まで哀れなものを見るような目で見ないでくださいまし。
「お嬢様、ご自分のお名前と年齢はお分かりになりますか?」
「…セレナーデ、バーンハイム子爵の娘で、今年で15歳になりました」
「お嬢様は王立学園の制服を試着中に鼻血を噴いてお倒れになったのですよ!?」
マーサに言われて思い出しました。そうでした。私は私立の女学院を卒業し、婚約者のいる王立学園の高等部に入学するべく制服を新調して、今日はその試着をしていたのでした。鏡に映るのはチョコレート色の髪に榛色の瞳をした少女。不細工とは言いませんが飛び抜けて美人とも言い難い顔立ちです。キャラメルブラウンの制服はワンピースからボレロ、靴下に至るまでオーダー品でシリアルナンバーがついてるそうです。校章のブローチに婚約者の瞳と同じ紫色のリボンをつけて襟元へ…そこで私の意識は途絶えました。新調した制服に鼻血がついていないか心配です。
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