乙女ゲームのバグ令嬢〜婚約破棄からの断罪劇が始まるようですが、冤罪は良くないと思います!〜【完結】

モナカ

文字の大きさ
6 / 44
1部

1-6

しおりを挟む

「シセーラ様、ヘチマ観察日記の105ページをお願い致します」

ハッ!我に返りこちらを見るシセーラ様。お二人の雰囲気をお邪魔してしまい申し訳ありません。ですが、今私の存在お忘れではなかったですか?気のせいですよね、こんな状況ですもの。ええ。

「105ページ…」

シセーラ様はヘチマ観察日記のそのページを読むことを躊躇され、本当にいいのか?と気遣わしげな視線で確認されました。
ゆっくりと頷いて真っ直ぐに視線を合わせると、静かに「わかったわ」とお応えくださいました。
一つ大きく息を吸い込み、お読みくださいます。

『9の月18の日
 ヘチマはすっかり大きくなって、緑のカーテンの役目を立派に果たしています!お礼にたっぷり水をあげましょう。丁度通りかかられた学園長先生が「もう少ししたら実も収穫できるでしょう」とおっしゃってくださいました。楽しみです。本日は騎士科で剣技大会があり、オリオン様は見事に勝ち抜き優勝されました。勝利はキャンベラ様に捧げられたようです。ヘチマの向こう、騎士科の実技準備室内から人の声がします。今日は暑かったので窓が開いてるようです。「オリオン様が望んだ優勝のご褒美を差し上げます」女性の声がして人影が見えました。夕日の差し込む室内でオリオン様がキャンベラ様を抱いています。衣服を乱し、口付けを交わされ…情交の音と喘ぎ声にひどい吐き気が襲い、学園長先生が医務室に連れて行ってくださいました。背後で「剣は国に捧げるが、この心と体は貴女のものだ」と愛を誓う言葉が聞こえました。婚約者として私はどうしたら…』

そっとシセーラ様が手帳を閉じられました。
ホール内はシン…と静まり、卒業生の父母達は皆愕然とした表情です。
しかし卒業生達はキャンベラ様の自由奔放な振る舞いは暗黙の了解だったので、気まずげに視線を落として流れ弾に当たらぬよう堪えているようです。
視線の先でみるみる真っ赤に染まるキャンベラ様が王太子殿下とオリオン様を交互に見ながら「ち、違うの、これは!」慌てて弁解しております。ぎゅっと抱いた王太子殿下の腕に、さらに胸を押し付けて上目遣いをし「信じて、私にはアルファードさまだけ」甘えた声で哀願しています。
「学園長、今の話は誠か?」陛下の声に学園長先生が前に出ました。
学園長先生は沈痛な面持ちで、私に労わりの眼差しを向けてくださいます。

「…申し訳ございません、私の監督が行き届かず。学園では彼女がオリオン・レイスの婚約者であることは知られていませんでしたし、このまま知らぬふりをしておけばセレナーデ・バーンハイムの名誉は守られると思っておりました。彼らも若気の至りなのだろうと。まさか王太子殿下がキャンベラ・ロックハートを選ぶとは思わず」
「待って!何かの間違い…そうだわ!学園長先生はお歳ですもの、きっと耄碌されて見間違えられたのです!!」

言うに事欠いて「学園長は歳で耄碌している」だなんて。
王太子殿下がキャンベラ様の絡みつく腕を放させ、距離をとられました。もはや甘い雰囲気はありません。

「キャンベラ、学園長先生は私の叔父だ」
「…え?」
「老けて見えるかもしれんが、ワシの弟だ。耄碌するにはまだ早いと思うのだがな?ラミアス」
「耳も目も頗る健康ですよ、兄上」

学園長先生が陛下に歩み寄り「老けて見えるは余計です。兄上がいつまでもお若いだけです」と苦笑して返した。

「…で、でもあれは王太子ルートに入るまえ…そうよ!あれはアルファードさまとお付き合いする前だもの」

「無効でしょ!」と輝くような笑顔を向けていますが、最早お得意の笑顔も響いていないようで王太子殿下は無表情です。
パシッ!乾いた音に目を向ければ、王妃様が扇を閉じたところでした。

「我が国において、王位継承権を持つ者に嫁ぐ場合は処女性が求められます。医師の診察をお受けなさい」

王妃の言葉にキャンベラ様が固まります。周囲のご夫人方が『はしたない』『淫らだ』と嫌悪する目を彼女に向け、キャンベラ様は縋るような瞳で「アルファードさま」と王太子殿下に手を伸ばすも、スッと避けられてしまいました。

「なぜ…?愛してるって言ったじゃない、それでハッピーエンドなはずでしょ!?ヤッたら一発アウトだなんて攻略サイトにも載ってなかった!選択肢は間違ってなかったはずよ…私は、ちゃんと2年かけて攻略対象キャラの好感度を上げて、イベントをこなして…ようやく開いた王太子ルートだったのに……」

ーー『攻略サイト』とはなんでしょう?
ーー『攻略対象キャラ』の『好感度』とは?『イベント』?…どこかで聞いたよう気もしますが、思い出せません。
よくわかりませんが、キャンベラ様はだいぶ混乱されているご様子です。

視線を感じて目を向ければ、こちらを凝視するキャンベラ様が

「…そうよ、アンタよ!アンタが出てきて全部おかしくなった。そもそもアンタみたいなキャラはいなかったハズよ!アンタ一体何なのよ!?」


ーーワタクシ?

ーーワタクシ、デスか?


「………ワタクシ…は、…『バグ』…です…」


あら?『バグ』ってなにかしら?
まぁいいでしょう。おや、どうなさいました?
キャンベラ様が驚愕の表情のまま膝から崩れ落ちました「運営ぃぃぃぃ!!」ガンッガンッ「制作スタッフゥゥーー!!!」バン!バン!床に拳を叩きつけながら何か叫んでいらっしゃいます。拳が痛そうです。
見かねた陛下がキャンベラ様をホールから連れ出すよう命じられました。

しおりを挟む
感想 276

あなたにおすすめの小説

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。

和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。 「次期当主はエリザベスにしようと思う」 父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。 リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。 「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」 破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?  婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した

基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。 その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。 王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。

処理中です...