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4部
最終話(だが、情報過多!)
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ーーーーーーーそれから13年後、
「お父様を自由にし、このお屋敷から出て行きなさい!悪役令嬢セレナーデ!!」
ピンクの髪をした少女がレイス伯爵&バーンハイム子爵邸門前で仁王立ちしている。
対するは、門の内側に立つもうじき4歳になる幼女。
チョコレート色の髪を白い大きなリボンで結び、淡いクリーム色のエプロンドレスを着た幼女は、母譲りの榛色の瞳をまん丸にして不思議そうに小首を傾げている。幼いながら父譲りの整った顔立ちはまるでお人形のように愛らしい。
「ルーナお嬢様、お屋敷に戻りましょう!」
「執事を呼んでこい」
「ここを通して!私はお父様に会いに来たの!私はオリオン・レイスの娘よ!!」
「おとーたまは、おちごとよ?」
門扉のさわぎを聞きつけ、侍女を連れた令嬢が二人屋敷からこちらへ近づいてくる。
先を行くのは母譲りの燃えるような真っ赤な髪を一つに結いあげ、幼女と同じ白のリボンで結ぶ令嬢。少し吊りあがり気味の瞳は父譲りの紫。
「ルーナ、私の妖精姫。門扉で騒ぐ野良猫のせいでお昼寝から目覚めてしまったのね。かわいそうに」
「スカーレット様、ルーナ様は兄の出迎えに出たのではないでしょうか?」
後ろ続くのは紅茶色の髪にブルーサファイアの瞳を持つ少女。マリアベル・ボルト男爵令嬢だ。
妖精姫と呼び、幼女を愛おしげに抱き上げた赤い髪の少女はレイス伯爵家の長女。リルマーサの娘、スカーレット・レイス伯爵令嬢である。
つまり、この妖精姫こそセレナーデの娘。もうじき4歳になるルーナ・バーンハイム子爵令嬢なのだ。
さらに庭の方から騒ぎを聞きつけた少年が二人、打ち合い稽古をしていたのだろう模造刀を持ったまま駆け付けた。
「どうしました、お姫さま」
「目が覚めたなら、お兄ちゃま達とおやつにしましょう」
ショートの黒髪に紫色の瞳。まるでハロルド・レイスを小さくしたような姿。
年子である二人は、双子と間違われるほどに容姿が似ている。
リルマーサの息子、レイス伯爵家12歳の長男ローガンと11歳の次男ラウルだ。
幼い頃からの母を見て育ったレイス家の子供達は、自然とセレナーデの子を「お姫様」と呼んだ。爵位は当然自分たちの方が高いのに、当たり前の様にルーナの世話をし、スカーレットに至っては溺愛していた。
セレナーデは結婚後10年子供を授かることができなかった。
オリオンに離縁を進める者や愛人を斡旋しようとする者が現れたが、オリオンはけんもほろろに断った。
仕舞いには「北に送られた女の呪いでは」などという噂も流れたが、
「それは無いわ。呪いだなんて…ボルトの父がそんなこと許すはずが無いもの」
キャメロン・ボルト夫人が微笑みながら噂を踏み潰して消した。
今度こそはと期待しては落胆し、悲しいような寂しいような表情で俯くセレナーデを胸に抱きしめ、オリオンはできるだけ明るい声で慰めた。
「セレナの子だ。きっと何処かであちこち寄り道しているだけだろう」
「でも、こんなに長くできないなんて…」
「アニデス兄上に似ているのだとすれば、もう少しかかるかもしれないな」
オリオンの言葉にセレナーデがクスッと笑った。
「…いざとなれば兄さんのところから一人貰えばいい。バーンハイムの血に拘るならアニデス兄上に相談しよう」
「……はい」
隣国で公爵の夫となったアニデスは既に3人の娘を授かっていた。
子供好きなセレナーデはリルマーサの子供達を我が子のように愛おしみ共に育児に励んでいた。
レイス家の子供達ももう一人の母のようにセレナーデを慕っていたので、養子に出されたとしても勝手知ったる隣の家。爵位は変わるだろうが、籍が変わったからといって大して変わることは無いし、セレナーデの憂いを払うことができるならば否やは無かった。
しかし、この話を聞いた三姉弟は揉めに揉めた。
「私が養子に行くから。ローガンは長男なんだしこのまま伯爵家を継ぎなさい」
「姉上が婿を貰えばいいでしょう!僕がセレナ様の本当の息子になります」
「待って、この場合どう考えても次男の僕でしょ!?」
仕舞いには「決闘だ!」と言い出してセレナーデはオロオロしてしまい、話に決着が着かぬまま有耶無耶となった。
直後、セレナーデの妊娠が発覚したからである。
結婚10年目にして出来た子供にバーンハイム子爵邸は上を下への大騒ぎ。お隣レイス伯爵家はお祭り騒ぎとなった。
セレナーデは生命の不思議と人体の神秘に触れ、出産後放心状態。我が子を抱く彼女の背景に宇宙空間が見えた気がしたが、立ち会ったリルマーサは疲労から見た幻覚として処理した。
部屋の前でウロウロし続け、鬱陶しいから座ってそこから動くなと兄に命じられたオリオンは、真っ直ぐに姿勢を正して廊下に座したまま我が子の産声を聞いた。許可を経て部屋に飛び込み、セレナーデと我が子の無事を確認すると、二人を抱きしめて泣いた。
「…ありがとう、愛している」
その言葉にセレナーデの表情が綻ぶ。それは今までで一番美しく、喜びと慈愛に満ちた微笑みだった。
「ようやく会えたな…」
「オリィ、貴方今日から「お父様」ですよ」
照れたように微笑み、涙で潤む紫の瞳をセレナーデは一生忘れることはないだろう。
促されて初めて抱いた我が子の軽さにオリオンが固まる。
兄の子も抱いたはずなのに、我が子が余計に儚く感じて戸惑った。それでも柔らかな頬を撫でれば、むず痒そうに身じろいだ赤ん坊に、自分の指をしっかりと握られて、その強さに安堵した。オリオンは父として自分が守ってやらねばと気を引き締めて、腕の中で眠る赤ん坊をいつまでも見つめていた。
喜びに咽び泣き「よかった」「よかった」と壊れたように繰り返すリルマーサをハロルドが宥めて、祝いと労いの言葉をかけてくれた。
数日後に面会許可が出た三姉弟は、三つの頭を突き合わせ齧り付くように赤ん坊を見つめ
「目が開いた!私を見たわ。スカーレットお姉さまですよ」
「違う、俺を見たんだ!ロー兄さまだよ、お姫さま」
「僕だよね、お姫さま。ラウルだよ」
争う声にルーナが泣き出し、三姉弟はリルマーサに叱られて部屋から追い出されてしまった。
「40にしてこんなに可愛らしい妹ができるとは…」
妹となる赤ん坊に会いにジーク・ボルト男爵がやってきたのはその翌日のことだった。
「今頃お父様は向こうで祝宴を上げているのではないかしら」
「父上、次は私に抱かせてください!おいで~ルーナァ」
「お兄様、次は私です」
生後3週間の伯母に手を伸ばすロバートとマリアベルを無視して、キャメロンがジークの腕から赤ん坊を受け取った。
「当然でしょ!私がお姉様なのですから。ずっと妹というものが欲しかったのです」
キャメロンは腕に抱くセレナーデの子が愛おしくてならなかった。
婚約者から裏切られ、傷つけられ、死期の近い義父の元に嫁がされてきたセレナーデ。それでも直向きに人を想い、愛を与えることのできる女性は、自分の出産を助け、初めての育児を一緒に頑張ってくれた。順風満帆とは言えない人生で、再び手を取り結ばれた相手との間に子供が授からず、口さがない周囲の声に苦しめられ、時に自分を責め、思い悩むセレナーデの姿をずっと見てきた。
「ずっと…、待っていたのよ」
「ちょっと!私を無視するんじゃないわよ!!」
ピンクの髪の少女が鉄製の門を掴んでガンガンと揺らし、スカーレットに抱かれたルーナが大きな音にビクッと肩を震わせた。
「門から下がりなさい、私の妖精姫が怖がっているじゃない」
ルーナの性格はどうにもセレナーデに似てしまったようで、スカーレットはそのふわふわした雰囲気から「妖精姫」とあだ名をつけた。
そこへ蹄の音が徐々に近づき、子供達の視線はそちらに向かった。
「…これは何の騒ぎです?」
シリウスによく似た黒毛の馬からひらりと降りたのは、柔らかな銀髪にブルーサファイアの瞳をした長身の青年。今年から王立学園の騎士科に入学した、ジーン・ボルトの息子ロバート・ボルトは見事に祖父ジオン・ボルトの青年時代そっくりに成長していた。
穏やかな微笑みで馬を引いてくる姿に屋敷のメイドが熱いため息を漏らす。
ピンクの髪の少女も御多分に洩れず頬を染めて、先ほどまでの癇癪を引っ込めた。
「あ、あなたは…?」
しかし、少女の問いには答えず、見向きもせぬまま近くの使用人に手綱を渡して馬を撫で、厩舎へと促した「コスモ、ご苦労様。また後で…」
コスモと呼ばれたこの牝馬は、シリウスとアローラの間に生まれた馬でバーンハイム子爵家の所有ではあるがもっぱらロバートが面倒を見ていた。
そう、セレナーデは7年前に失恋したのだ。
シリウスはオリオンを乗せて第一王子の護衛として遠乗りに同行した際、一緒に来ていたシセーラ・フロスト公爵令嬢が乗る美しい白馬アローラと恋に落ちた。長年人参を貢ぎ続けたセレナーデは呆気なくも捨てられてしまい、崩れ落ち悔しさにハンカチを噛む彼女に天窓から注ぐ光はスポットライトのよう…。
「すまない、セレナ。君にずっと言えなかったんだが…」
「オリオン?」
「シリウスは優秀で、交配を希望する馬主が多く…既に何度か見合いをしている」
「なんですって…!?」
「無論、シリウスがその気にならなければ交配はできないが…その…」
「まさか…」
「シリウスにはすでに5頭ほど子供がいる」
ーーどこの馬の骨ともしれない牝馬との間に隠し子が5頭も…!
セレナーデはあまりの仕打ちに言葉を失った。
オリオンは上機嫌を隠し、失恋の痛みに涙するセレナーデを慰めて支え、愛を深めた。
「……勝った」オリオンがセレナーデには聞こえぬ小さなつぶやきを漏らす。
「おじさま、小さい」と幼いながら何かを見透かしたスカーレットに突っ込まれたが、無視である。
「ろばぁと、おかえりなたい」
「はい、只今戻りました。ルーナ伯母さま」
小さな手を広げて迎えられ、ロバートは蕩けるような微笑みでルーナに手を伸ばした…が、マリアベルが間に入って彼を追い払った。
「ちょっと、手を洗って着替えてからにしてくださいまし、お兄様!」
「放しなさい!このお屋敷に住むべき本当の娘は私なのよ!追い出すべきは、その子供の方よ!」
ロバートが入った隙に自分も門を潜ろうとしたピンクの髪の少女が門番に抑えられて喚く。
「何あれ?」
「…おそらく、お祖母さまの敵よ」
「……へぇ」
妹の言葉でロバートの周囲の温度が下がる。変わらぬ微笑みのままひやりとした冷気を放ち、ピンクの髪の少女を一瞥した。
一方、その頃。屋敷の裏の畑では、
「お母様、随分と色々お植えになったのですね。ヘチマと人参はわかりますが、これはなんです?…あまり元気が良くないようですが」
日傘をさすキャメロン・ボルト男爵夫人が指差す先には、紫色の葉をして黒い蕾を持つ禍々しい植物が植えられていた。
支柱を整える作業を終えたセレナーデが振り返ると、当然のようにリルマーサ・レイス伯爵夫人がハンカチを取り出して額の汗をぬぐった。
「セレナ様、あまり無理をなさらずお休みください。お腹の子に障りますよ」
「ありがとう、マーサお姉様。でも、私よりもマーサの方が休まなくては、お腹重いでしょ?」
セレナーデは4か月前に第二子を妊娠が発覚した。リルマーサはさらにその2月前に発覚、現在妊娠6か月である。
「お二人共です。で?結局これは何ですの?」
「兄に送ってもらったダンジョン植物の1つで、ズッキーニだと思うのですが…」
あれからセレナーデは兄に頼み隣国のダンジョン植物を研究していた。もちろん、学園の校医のエルザ・スタンリーの手を借りて。
見た目は同じでもダンジョンで独自の進化を遂げた植物は、思わぬ効果が付与されていることがある。
セレナーデはそれを自ら育てて確認し、新たに薬として利用できないかと試行錯誤中なのだ。
「このズッキーニは魔物の毒を吸収して育つようなのです。魔物の毒を無毒化して栄養に変えているのではないかと。
収穫された実は無害で食べても問題ないそうです。この特徴を活かして薬に応用できれば…」
「…お父様の様に魔物の毒に蝕まれた患者を助けることができる?」
セレナーデはコクリと頷いて目を伏せ微笑んだ。おそらく、心の中で穏やかに微笑む彼の姿を想っているのだろう。
「…お母様……」
「でも、魔物の毒を栄養にしているだけあって、ここの土では上手く育たない様ですね」
「では、騎士団で魔物討伐に行ったらお土産に生き血を持って帰るようにジークにお願いしておきましょう」
「魔物の生き血…!」
「セレナ様、この植物だけ他の植物に影響がないよう別のところに植え直し、子供達が悪戯しないように柵を…」
魔物の生き血と聞いてセレナーデの目がカッ!と開き、今後の計画を立てているところで、メイドが息を切らしてこちらに駆けて来るのが見えた。
「お、おお、奥様!大変です!!」
奥様3人は顔を見合わせ、肩で息をするメイドを待った。
「今(ぜぃ)お屋敷の、門で…(はぁ)ピンクの髪の(ぜぃ)女の子が、自分は(ぜぃ)バーンハイム子爵の娘(ぜぇはぁ)セレナーデ奥様を出せと…!!」
「「「はぁ!??」」」
メイドには息を整えてゆっくり戻るよう言い、奥様3人は門扉へと急いだ。
門扉では我が子達合計6人と門を挟んで確かにピンク色の髪をした少女が対峙している。
セレナーデはあのピンク色の髪とスカイブルーの瞳に既視感をおぼえた。
「おじょ…セレナ様、あれは…」
「お母様、もしかしてあの娘って!でも、どうやって北の地を出たのかしら」
ーーまさか…
「お母様に聞いたの。私の本当の父親はオリオン・レイス伯爵子息だって!
恋人だった二人が引き裂かれて、その隙に悪役令嬢セレナーデがお父様を貶めて無理矢理お婿にとって縛り付けた…
だから無実の罪で囚われている私達親子を助けに来れないんだって」
ーー嗚呼、キャンベラ様。あなた一体どういう子育てをなさったの?
ところで『悪役令嬢』ってなんだったかしら?まあ、いいでしょう。今はそれどころではないわね。
「おとーたまは、おかーたま、だいしゅきよ!」
ルーナは幼く、何を言われているのか意味まではわからなかったが、懸命に頭を働かせて言い返したが
「それは間違いよ!騙されているだけ」
バッサリ否定された。初めての経験に3歳児がショックを受けて固まっている。
「私のお母様がその美しさ故に無理矢理王子様のお妃様にされちゃって、お母様を失って悲しみのどん底だったお父様の心の隙間に悪役令嬢セレナーデが入り込んで騙したの!お母様を手に入れた王子様は公爵令嬢に誘惑されて浮気して、捨て置かれたお母様は王宮で散々虐め抜かれ、ボロボロにされて無実の罪で北に送られちゃったのよ」
「いや、その時点でオリオン様の子供なら計算合わないでしょう」堪えきれずにメイドが突っ込んだ。
「無実の罪って…証拠も証人も揃った明確な有罪だったろう」
「見たとこ平民だが、公爵家と王族に喧嘩売ってるのか?」門番二人も突っ込んだが、自分の演説に酔いしれる少女の耳には届かない。
「男爵令嬢でティーカップより重いもの持ったことないのに、世話をする侍女もなく北の地で強制労働を強いられて…なんて可哀想なお母様!」
「強制労働の犯罪者に侍女は付けませんよ」執事の突っ込みもやはり届かない
「え?私男爵令嬢だけどルーナ様余裕で抱き上げられるわよ」思わず漏らすマリアベル嬢。
「ルーナ様は羽のように軽いから」すでに相手にしていないスカーレット嬢は、腕の中のルーナをあやすことを優先している。
「だから!私が悪役令嬢を追い出してお父様を救い出し、このお屋敷にお母様を迎え入れて一緒に暮らすの!
そしてお母様と同じように貴族令嬢として王立学園へ通って、素敵な殿方と恋に落ちるのよ」
スカイブルーの瞳を輝かせ夢見るように斜め上を見つめるピンクの髪の少女。一体何が見えているでしょう。
「わかったでしょ!あんたは速やかにここを出て行きなさい!!」
ビシッ!と指差してますが、全員呆れ顔です。
あら、指差されたルーナが驚いて泣いてしまいそうです。泣いたら最後、子供達の容赦ない総攻撃が始まってしまうでしょう。
「妄想癖が激しいのかな」ローガン様ため息をつくのはお止めなさい、幸せが逃げてしまいますよ。
「思い込みも激しい子みたいだね」ラウル様、笑顔で言ってますが目が全く笑っていませんね。
「新聞とか読まないタイプのお嬢さんなのでは?」マリアベル、貴女だって新聞より大衆紙派でしょ。
「そもそも字が読めい可能生もあります」文字が読めても内容を理解できるかが問題よね、マーサ。
「いや、他人の話も聞いてないぞ、あれは」ローガン様ったら女の子に向かって「あれ」呼ばわりはいけませんね。
「ああー、ルーナ伯母さまが眉間にシワ寄せて泣くの我慢してる可愛い」
「「「ロバート!」」」こんな時にデレデレしない!
「誰か王宮までオリオン叔父様呼びに行く?」スカーレット様、さては飽きてますね?
「すでに騎士団に使いをやったので、ジークが連れて戻るでしょう」キャメロンさんったらいつの間に!
「さすがお母様、仕事が早い!」そうね、マリアベル
ーーでは、騎士団が到着するまで時間稼ぎが必要ですね。
淑女らしい微笑みをたたえ、スカートの裾を整えて背筋を伸ばす。
コツコツと靴音を響かせながら子供達の前に立ち、鉄製の門へと向かいます。
挨拶は大切です。
「お初にお目にかかります、私が当屋敷の女主人セレナーデ・バーンハイムでございます」
ピンクの髪の幼気な少女がスカイブルーの瞳に憎しみを込めて、こちらを睨んできます。
孤軍奮闘な彼女に多勢に無勢で火力過多なのは申し訳ないけれど、
当方ブランクがございますのでトントンということで。
彼女の言うことはお粗末な嘘ばかりで、これ以上は聞くに堪えません。
ここで事実を知った方がいいでしょう。
それに冤罪は良くないと思いますしね。
お久しぶりの断罪劇(?)ですか。
残念ながら今回は「婚約破棄」はございませんが、いいでしょう。
では、張り切って参りましょう…!
『乙女ゲームのバグ令嬢~婚約破棄からの断罪劇が始まるようですが、冤罪は良くないと思います!~』
ーーおわりーー
ーーー余談を少しーー
その後、ピンクの髪の少女は騎士団によって強制送還されました。
未成年のため本人は不敬罪の罪は免れたが…
マーサの義父「北の辺境伯殿。此度の事、災難でしたな。
犯罪者とはいえ元第一王子妃だからと目を掛けていたのが仇となりましたか。
手に余るようなら例の親子はこちらに譲ってくれまいか?」
北の辺境伯「ほう。あの厄介者を引き受けてどうなさる?」
マーサの義父「なぁに。うちの鉱山は人手不足でなぁ。働き手が欲しいだけよ」
マーサの義父・南の辺境伯様は娘もさることながら孫娘のスカーレットが可愛くて仕方ない。
そんなスカーレットからマーサのママに「先日こんなことがりまして~云々。母も身重だというのに、屋敷に押しかけられて大変不愉快でしたわ!」というお手紙が届き、ママは速やかに南の辺境伯様にお手紙を読ませたそうです。
当然、南の辺境伯様はお怒りに。
キャンベラ親子は南の辺境に護送され、炭鉱に送られて、更に過酷な労働を強いられることとなったのです。
キャンベラ「…な、ぜ?」
なお、キャンベラは子供の寝物語程度の気持ちでペラペラ作り話をしたので、まさか娘がそれを丸っと鵜呑みにして信じているとは思っていなかった。
◇◇◇◇***◇◇◇◇***◇◇◇◇***◇◇◇◇
長編になってしまってしまいましたが、完走までお付き合いいただきありがとうございました!
お気に入りに登録してくださった方、評価くださった方、感想をくださった方、チラ見で通り過ぎたあなた!皆様、本当にありがとうございました。
衝動と思いつきの瞬発力で初めて書いた恋愛小説、誤字・脱字もさることながら、拙い文章で読みにくいところも多々あったでしょう。
それでも楽しかった、面白かったと思って頂けたなら、書いた私幸いでございます^^
せっかく小説の投稿方法を覚えたので、また何か書いてみたいなぁ~
その時はまた是非お付合い頂けたら嬉しいです!
「お父様を自由にし、このお屋敷から出て行きなさい!悪役令嬢セレナーデ!!」
ピンクの髪をした少女がレイス伯爵&バーンハイム子爵邸門前で仁王立ちしている。
対するは、門の内側に立つもうじき4歳になる幼女。
チョコレート色の髪を白い大きなリボンで結び、淡いクリーム色のエプロンドレスを着た幼女は、母譲りの榛色の瞳をまん丸にして不思議そうに小首を傾げている。幼いながら父譲りの整った顔立ちはまるでお人形のように愛らしい。
「ルーナお嬢様、お屋敷に戻りましょう!」
「執事を呼んでこい」
「ここを通して!私はお父様に会いに来たの!私はオリオン・レイスの娘よ!!」
「おとーたまは、おちごとよ?」
門扉のさわぎを聞きつけ、侍女を連れた令嬢が二人屋敷からこちらへ近づいてくる。
先を行くのは母譲りの燃えるような真っ赤な髪を一つに結いあげ、幼女と同じ白のリボンで結ぶ令嬢。少し吊りあがり気味の瞳は父譲りの紫。
「ルーナ、私の妖精姫。門扉で騒ぐ野良猫のせいでお昼寝から目覚めてしまったのね。かわいそうに」
「スカーレット様、ルーナ様は兄の出迎えに出たのではないでしょうか?」
後ろ続くのは紅茶色の髪にブルーサファイアの瞳を持つ少女。マリアベル・ボルト男爵令嬢だ。
妖精姫と呼び、幼女を愛おしげに抱き上げた赤い髪の少女はレイス伯爵家の長女。リルマーサの娘、スカーレット・レイス伯爵令嬢である。
つまり、この妖精姫こそセレナーデの娘。もうじき4歳になるルーナ・バーンハイム子爵令嬢なのだ。
さらに庭の方から騒ぎを聞きつけた少年が二人、打ち合い稽古をしていたのだろう模造刀を持ったまま駆け付けた。
「どうしました、お姫さま」
「目が覚めたなら、お兄ちゃま達とおやつにしましょう」
ショートの黒髪に紫色の瞳。まるでハロルド・レイスを小さくしたような姿。
年子である二人は、双子と間違われるほどに容姿が似ている。
リルマーサの息子、レイス伯爵家12歳の長男ローガンと11歳の次男ラウルだ。
幼い頃からの母を見て育ったレイス家の子供達は、自然とセレナーデの子を「お姫様」と呼んだ。爵位は当然自分たちの方が高いのに、当たり前の様にルーナの世話をし、スカーレットに至っては溺愛していた。
セレナーデは結婚後10年子供を授かることができなかった。
オリオンに離縁を進める者や愛人を斡旋しようとする者が現れたが、オリオンはけんもほろろに断った。
仕舞いには「北に送られた女の呪いでは」などという噂も流れたが、
「それは無いわ。呪いだなんて…ボルトの父がそんなこと許すはずが無いもの」
キャメロン・ボルト夫人が微笑みながら噂を踏み潰して消した。
今度こそはと期待しては落胆し、悲しいような寂しいような表情で俯くセレナーデを胸に抱きしめ、オリオンはできるだけ明るい声で慰めた。
「セレナの子だ。きっと何処かであちこち寄り道しているだけだろう」
「でも、こんなに長くできないなんて…」
「アニデス兄上に似ているのだとすれば、もう少しかかるかもしれないな」
オリオンの言葉にセレナーデがクスッと笑った。
「…いざとなれば兄さんのところから一人貰えばいい。バーンハイムの血に拘るならアニデス兄上に相談しよう」
「……はい」
隣国で公爵の夫となったアニデスは既に3人の娘を授かっていた。
子供好きなセレナーデはリルマーサの子供達を我が子のように愛おしみ共に育児に励んでいた。
レイス家の子供達ももう一人の母のようにセレナーデを慕っていたので、養子に出されたとしても勝手知ったる隣の家。爵位は変わるだろうが、籍が変わったからといって大して変わることは無いし、セレナーデの憂いを払うことができるならば否やは無かった。
しかし、この話を聞いた三姉弟は揉めに揉めた。
「私が養子に行くから。ローガンは長男なんだしこのまま伯爵家を継ぎなさい」
「姉上が婿を貰えばいいでしょう!僕がセレナ様の本当の息子になります」
「待って、この場合どう考えても次男の僕でしょ!?」
仕舞いには「決闘だ!」と言い出してセレナーデはオロオロしてしまい、話に決着が着かぬまま有耶無耶となった。
直後、セレナーデの妊娠が発覚したからである。
結婚10年目にして出来た子供にバーンハイム子爵邸は上を下への大騒ぎ。お隣レイス伯爵家はお祭り騒ぎとなった。
セレナーデは生命の不思議と人体の神秘に触れ、出産後放心状態。我が子を抱く彼女の背景に宇宙空間が見えた気がしたが、立ち会ったリルマーサは疲労から見た幻覚として処理した。
部屋の前でウロウロし続け、鬱陶しいから座ってそこから動くなと兄に命じられたオリオンは、真っ直ぐに姿勢を正して廊下に座したまま我が子の産声を聞いた。許可を経て部屋に飛び込み、セレナーデと我が子の無事を確認すると、二人を抱きしめて泣いた。
「…ありがとう、愛している」
その言葉にセレナーデの表情が綻ぶ。それは今までで一番美しく、喜びと慈愛に満ちた微笑みだった。
「ようやく会えたな…」
「オリィ、貴方今日から「お父様」ですよ」
照れたように微笑み、涙で潤む紫の瞳をセレナーデは一生忘れることはないだろう。
促されて初めて抱いた我が子の軽さにオリオンが固まる。
兄の子も抱いたはずなのに、我が子が余計に儚く感じて戸惑った。それでも柔らかな頬を撫でれば、むず痒そうに身じろいだ赤ん坊に、自分の指をしっかりと握られて、その強さに安堵した。オリオンは父として自分が守ってやらねばと気を引き締めて、腕の中で眠る赤ん坊をいつまでも見つめていた。
喜びに咽び泣き「よかった」「よかった」と壊れたように繰り返すリルマーサをハロルドが宥めて、祝いと労いの言葉をかけてくれた。
数日後に面会許可が出た三姉弟は、三つの頭を突き合わせ齧り付くように赤ん坊を見つめ
「目が開いた!私を見たわ。スカーレットお姉さまですよ」
「違う、俺を見たんだ!ロー兄さまだよ、お姫さま」
「僕だよね、お姫さま。ラウルだよ」
争う声にルーナが泣き出し、三姉弟はリルマーサに叱られて部屋から追い出されてしまった。
「40にしてこんなに可愛らしい妹ができるとは…」
妹となる赤ん坊に会いにジーク・ボルト男爵がやってきたのはその翌日のことだった。
「今頃お父様は向こうで祝宴を上げているのではないかしら」
「父上、次は私に抱かせてください!おいで~ルーナァ」
「お兄様、次は私です」
生後3週間の伯母に手を伸ばすロバートとマリアベルを無視して、キャメロンがジークの腕から赤ん坊を受け取った。
「当然でしょ!私がお姉様なのですから。ずっと妹というものが欲しかったのです」
キャメロンは腕に抱くセレナーデの子が愛おしくてならなかった。
婚約者から裏切られ、傷つけられ、死期の近い義父の元に嫁がされてきたセレナーデ。それでも直向きに人を想い、愛を与えることのできる女性は、自分の出産を助け、初めての育児を一緒に頑張ってくれた。順風満帆とは言えない人生で、再び手を取り結ばれた相手との間に子供が授からず、口さがない周囲の声に苦しめられ、時に自分を責め、思い悩むセレナーデの姿をずっと見てきた。
「ずっと…、待っていたのよ」
「ちょっと!私を無視するんじゃないわよ!!」
ピンクの髪の少女が鉄製の門を掴んでガンガンと揺らし、スカーレットに抱かれたルーナが大きな音にビクッと肩を震わせた。
「門から下がりなさい、私の妖精姫が怖がっているじゃない」
ルーナの性格はどうにもセレナーデに似てしまったようで、スカーレットはそのふわふわした雰囲気から「妖精姫」とあだ名をつけた。
そこへ蹄の音が徐々に近づき、子供達の視線はそちらに向かった。
「…これは何の騒ぎです?」
シリウスによく似た黒毛の馬からひらりと降りたのは、柔らかな銀髪にブルーサファイアの瞳をした長身の青年。今年から王立学園の騎士科に入学した、ジーン・ボルトの息子ロバート・ボルトは見事に祖父ジオン・ボルトの青年時代そっくりに成長していた。
穏やかな微笑みで馬を引いてくる姿に屋敷のメイドが熱いため息を漏らす。
ピンクの髪の少女も御多分に洩れず頬を染めて、先ほどまでの癇癪を引っ込めた。
「あ、あなたは…?」
しかし、少女の問いには答えず、見向きもせぬまま近くの使用人に手綱を渡して馬を撫で、厩舎へと促した「コスモ、ご苦労様。また後で…」
コスモと呼ばれたこの牝馬は、シリウスとアローラの間に生まれた馬でバーンハイム子爵家の所有ではあるがもっぱらロバートが面倒を見ていた。
そう、セレナーデは7年前に失恋したのだ。
シリウスはオリオンを乗せて第一王子の護衛として遠乗りに同行した際、一緒に来ていたシセーラ・フロスト公爵令嬢が乗る美しい白馬アローラと恋に落ちた。長年人参を貢ぎ続けたセレナーデは呆気なくも捨てられてしまい、崩れ落ち悔しさにハンカチを噛む彼女に天窓から注ぐ光はスポットライトのよう…。
「すまない、セレナ。君にずっと言えなかったんだが…」
「オリオン?」
「シリウスは優秀で、交配を希望する馬主が多く…既に何度か見合いをしている」
「なんですって…!?」
「無論、シリウスがその気にならなければ交配はできないが…その…」
「まさか…」
「シリウスにはすでに5頭ほど子供がいる」
ーーどこの馬の骨ともしれない牝馬との間に隠し子が5頭も…!
セレナーデはあまりの仕打ちに言葉を失った。
オリオンは上機嫌を隠し、失恋の痛みに涙するセレナーデを慰めて支え、愛を深めた。
「……勝った」オリオンがセレナーデには聞こえぬ小さなつぶやきを漏らす。
「おじさま、小さい」と幼いながら何かを見透かしたスカーレットに突っ込まれたが、無視である。
「ろばぁと、おかえりなたい」
「はい、只今戻りました。ルーナ伯母さま」
小さな手を広げて迎えられ、ロバートは蕩けるような微笑みでルーナに手を伸ばした…が、マリアベルが間に入って彼を追い払った。
「ちょっと、手を洗って着替えてからにしてくださいまし、お兄様!」
「放しなさい!このお屋敷に住むべき本当の娘は私なのよ!追い出すべきは、その子供の方よ!」
ロバートが入った隙に自分も門を潜ろうとしたピンクの髪の少女が門番に抑えられて喚く。
「何あれ?」
「…おそらく、お祖母さまの敵よ」
「……へぇ」
妹の言葉でロバートの周囲の温度が下がる。変わらぬ微笑みのままひやりとした冷気を放ち、ピンクの髪の少女を一瞥した。
一方、その頃。屋敷の裏の畑では、
「お母様、随分と色々お植えになったのですね。ヘチマと人参はわかりますが、これはなんです?…あまり元気が良くないようですが」
日傘をさすキャメロン・ボルト男爵夫人が指差す先には、紫色の葉をして黒い蕾を持つ禍々しい植物が植えられていた。
支柱を整える作業を終えたセレナーデが振り返ると、当然のようにリルマーサ・レイス伯爵夫人がハンカチを取り出して額の汗をぬぐった。
「セレナ様、あまり無理をなさらずお休みください。お腹の子に障りますよ」
「ありがとう、マーサお姉様。でも、私よりもマーサの方が休まなくては、お腹重いでしょ?」
セレナーデは4か月前に第二子を妊娠が発覚した。リルマーサはさらにその2月前に発覚、現在妊娠6か月である。
「お二人共です。で?結局これは何ですの?」
「兄に送ってもらったダンジョン植物の1つで、ズッキーニだと思うのですが…」
あれからセレナーデは兄に頼み隣国のダンジョン植物を研究していた。もちろん、学園の校医のエルザ・スタンリーの手を借りて。
見た目は同じでもダンジョンで独自の進化を遂げた植物は、思わぬ効果が付与されていることがある。
セレナーデはそれを自ら育てて確認し、新たに薬として利用できないかと試行錯誤中なのだ。
「このズッキーニは魔物の毒を吸収して育つようなのです。魔物の毒を無毒化して栄養に変えているのではないかと。
収穫された実は無害で食べても問題ないそうです。この特徴を活かして薬に応用できれば…」
「…お父様の様に魔物の毒に蝕まれた患者を助けることができる?」
セレナーデはコクリと頷いて目を伏せ微笑んだ。おそらく、心の中で穏やかに微笑む彼の姿を想っているのだろう。
「…お母様……」
「でも、魔物の毒を栄養にしているだけあって、ここの土では上手く育たない様ですね」
「では、騎士団で魔物討伐に行ったらお土産に生き血を持って帰るようにジークにお願いしておきましょう」
「魔物の生き血…!」
「セレナ様、この植物だけ他の植物に影響がないよう別のところに植え直し、子供達が悪戯しないように柵を…」
魔物の生き血と聞いてセレナーデの目がカッ!と開き、今後の計画を立てているところで、メイドが息を切らしてこちらに駆けて来るのが見えた。
「お、おお、奥様!大変です!!」
奥様3人は顔を見合わせ、肩で息をするメイドを待った。
「今(ぜぃ)お屋敷の、門で…(はぁ)ピンクの髪の(ぜぃ)女の子が、自分は(ぜぃ)バーンハイム子爵の娘(ぜぇはぁ)セレナーデ奥様を出せと…!!」
「「「はぁ!??」」」
メイドには息を整えてゆっくり戻るよう言い、奥様3人は門扉へと急いだ。
門扉では我が子達合計6人と門を挟んで確かにピンク色の髪をした少女が対峙している。
セレナーデはあのピンク色の髪とスカイブルーの瞳に既視感をおぼえた。
「おじょ…セレナ様、あれは…」
「お母様、もしかしてあの娘って!でも、どうやって北の地を出たのかしら」
ーーまさか…
「お母様に聞いたの。私の本当の父親はオリオン・レイス伯爵子息だって!
恋人だった二人が引き裂かれて、その隙に悪役令嬢セレナーデがお父様を貶めて無理矢理お婿にとって縛り付けた…
だから無実の罪で囚われている私達親子を助けに来れないんだって」
ーー嗚呼、キャンベラ様。あなた一体どういう子育てをなさったの?
ところで『悪役令嬢』ってなんだったかしら?まあ、いいでしょう。今はそれどころではないわね。
「おとーたまは、おかーたま、だいしゅきよ!」
ルーナは幼く、何を言われているのか意味まではわからなかったが、懸命に頭を働かせて言い返したが
「それは間違いよ!騙されているだけ」
バッサリ否定された。初めての経験に3歳児がショックを受けて固まっている。
「私のお母様がその美しさ故に無理矢理王子様のお妃様にされちゃって、お母様を失って悲しみのどん底だったお父様の心の隙間に悪役令嬢セレナーデが入り込んで騙したの!お母様を手に入れた王子様は公爵令嬢に誘惑されて浮気して、捨て置かれたお母様は王宮で散々虐め抜かれ、ボロボロにされて無実の罪で北に送られちゃったのよ」
「いや、その時点でオリオン様の子供なら計算合わないでしょう」堪えきれずにメイドが突っ込んだ。
「無実の罪って…証拠も証人も揃った明確な有罪だったろう」
「見たとこ平民だが、公爵家と王族に喧嘩売ってるのか?」門番二人も突っ込んだが、自分の演説に酔いしれる少女の耳には届かない。
「男爵令嬢でティーカップより重いもの持ったことないのに、世話をする侍女もなく北の地で強制労働を強いられて…なんて可哀想なお母様!」
「強制労働の犯罪者に侍女は付けませんよ」執事の突っ込みもやはり届かない
「え?私男爵令嬢だけどルーナ様余裕で抱き上げられるわよ」思わず漏らすマリアベル嬢。
「ルーナ様は羽のように軽いから」すでに相手にしていないスカーレット嬢は、腕の中のルーナをあやすことを優先している。
「だから!私が悪役令嬢を追い出してお父様を救い出し、このお屋敷にお母様を迎え入れて一緒に暮らすの!
そしてお母様と同じように貴族令嬢として王立学園へ通って、素敵な殿方と恋に落ちるのよ」
スカイブルーの瞳を輝かせ夢見るように斜め上を見つめるピンクの髪の少女。一体何が見えているでしょう。
「わかったでしょ!あんたは速やかにここを出て行きなさい!!」
ビシッ!と指差してますが、全員呆れ顔です。
あら、指差されたルーナが驚いて泣いてしまいそうです。泣いたら最後、子供達の容赦ない総攻撃が始まってしまうでしょう。
「妄想癖が激しいのかな」ローガン様ため息をつくのはお止めなさい、幸せが逃げてしまいますよ。
「思い込みも激しい子みたいだね」ラウル様、笑顔で言ってますが目が全く笑っていませんね。
「新聞とか読まないタイプのお嬢さんなのでは?」マリアベル、貴女だって新聞より大衆紙派でしょ。
「そもそも字が読めい可能生もあります」文字が読めても内容を理解できるかが問題よね、マーサ。
「いや、他人の話も聞いてないぞ、あれは」ローガン様ったら女の子に向かって「あれ」呼ばわりはいけませんね。
「ああー、ルーナ伯母さまが眉間にシワ寄せて泣くの我慢してる可愛い」
「「「ロバート!」」」こんな時にデレデレしない!
「誰か王宮までオリオン叔父様呼びに行く?」スカーレット様、さては飽きてますね?
「すでに騎士団に使いをやったので、ジークが連れて戻るでしょう」キャメロンさんったらいつの間に!
「さすがお母様、仕事が早い!」そうね、マリアベル
ーーでは、騎士団が到着するまで時間稼ぎが必要ですね。
淑女らしい微笑みをたたえ、スカートの裾を整えて背筋を伸ばす。
コツコツと靴音を響かせながら子供達の前に立ち、鉄製の門へと向かいます。
挨拶は大切です。
「お初にお目にかかります、私が当屋敷の女主人セレナーデ・バーンハイムでございます」
ピンクの髪の幼気な少女がスカイブルーの瞳に憎しみを込めて、こちらを睨んできます。
孤軍奮闘な彼女に多勢に無勢で火力過多なのは申し訳ないけれど、
当方ブランクがございますのでトントンということで。
彼女の言うことはお粗末な嘘ばかりで、これ以上は聞くに堪えません。
ここで事実を知った方がいいでしょう。
それに冤罪は良くないと思いますしね。
お久しぶりの断罪劇(?)ですか。
残念ながら今回は「婚約破棄」はございませんが、いいでしょう。
では、張り切って参りましょう…!
『乙女ゲームのバグ令嬢~婚約破棄からの断罪劇が始まるようですが、冤罪は良くないと思います!~』
ーーおわりーー
ーーー余談を少しーー
その後、ピンクの髪の少女は騎士団によって強制送還されました。
未成年のため本人は不敬罪の罪は免れたが…
マーサの義父「北の辺境伯殿。此度の事、災難でしたな。
犯罪者とはいえ元第一王子妃だからと目を掛けていたのが仇となりましたか。
手に余るようなら例の親子はこちらに譲ってくれまいか?」
北の辺境伯「ほう。あの厄介者を引き受けてどうなさる?」
マーサの義父「なぁに。うちの鉱山は人手不足でなぁ。働き手が欲しいだけよ」
マーサの義父・南の辺境伯様は娘もさることながら孫娘のスカーレットが可愛くて仕方ない。
そんなスカーレットからマーサのママに「先日こんなことがりまして~云々。母も身重だというのに、屋敷に押しかけられて大変不愉快でしたわ!」というお手紙が届き、ママは速やかに南の辺境伯様にお手紙を読ませたそうです。
当然、南の辺境伯様はお怒りに。
キャンベラ親子は南の辺境に護送され、炭鉱に送られて、更に過酷な労働を強いられることとなったのです。
キャンベラ「…な、ぜ?」
なお、キャンベラは子供の寝物語程度の気持ちでペラペラ作り話をしたので、まさか娘がそれを丸っと鵜呑みにして信じているとは思っていなかった。
◇◇◇◇***◇◇◇◇***◇◇◇◇***◇◇◇◇
長編になってしまってしまいましたが、完走までお付き合いいただきありがとうございました!
お気に入りに登録してくださった方、評価くださった方、感想をくださった方、チラ見で通り過ぎたあなた!皆様、本当にありがとうございました。
衝動と思いつきの瞬発力で初めて書いた恋愛小説、誤字・脱字もさることながら、拙い文章で読みにくいところも多々あったでしょう。
それでも楽しかった、面白かったと思って頂けたなら、書いた私幸いでございます^^
せっかく小説の投稿方法を覚えたので、また何か書いてみたいなぁ~
その時はまた是非お付合い頂けたら嬉しいです!
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