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猫と踊る娘
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「お薬飲んだ?」
子猫を抱いたまま問いかける少女の言葉に、青年は顔をしかめてかぶりを振った。
「…お前には関係ない」
青年の言い草に少女の頬がぷっと膨らむ。「心配してるんだよ!」
青年は一度少女を睨んでから、不機嫌そうにそっぽを向いた。「何でお前に心配されないといけないんだよ」
「具合悪そうな人を見て、心配しない人っていると思う?」
少女は座ったままの青年に詰め寄る。「此間だって頭痛そうにしてたじゃん!」
ケティも心配してる、と主張する少女の腕の中で、毛玉がなぁと声をあげた。同意したつもりなのだろう。
「知ってるんだからね、君がお医者様からお薬沢山頂いてる事!」
青年は暫く迷惑そうに少女と子猫を睨んでいたが、やがてため息をついて呻くように呟いた。
「…苦いから嫌いだ」
「子供みたいな事言わないの!」
余計なお世話だと青年は毒づく。しかし。
「…私やだよ、ジンが大好きな絵、描けなくなるの」
ふと見せた、少女の悲しげな顔に、青年は沈黙した。
「…右の棚にある篭の中身全部持ってこい」
沈黙の末に青年が小さな声で唸る。パッと顔を輝かせた少女は、腕に抱いた猫を青年に押し付け、軽やかに身を翻した。かと思うとすぐに両手に篭を抱えて戻ってくる。
「なんか凄いいっぱいあるんだけど!」
「ここんとこずっと飲んでないから…たまったんだ」
バカ!と叫びながら、少女は傍にあった水差しからグラスに水を注いで青年に差し出す。差し出された水を無言でひったくって、青年は大量の錠剤や粉剤を喉の奥へ流し落とし始めた。口に薬を含むたびに渋面を作る様は、少女に窘められたように、まるで嫌いな食べ物を食べさせられる子供のようだった。
最後の錠剤を三杯目の水で流しこむと、青年はトン、と音を立ててグラスをテーブルに戻す。「水」と低く要求するのに答え、少女は青年の手にしたグラスにもう一度水を注いだ後、自分のポケットを探って何かをテーブルに乗せた。水を口に含みながら青年がちらりとそちらに視線をやる。キャンディだった。
「此間街で踊ってたら、おじさんがお金と一緒に袋の中に投げ込んでくれたの」
視線で問いかける青年に笑って少女は答える。「薬を飲めたご褒美ね」
「…ガキかよ」毒づきながらも手を伸ばす。膝の上にいた子猫と目があって、彼は訊かれもしないのに言い訳がましく呟いた。
「…口直しにはなるだろ」
包み紙を破って中身を取り出すと、無造作に口に放り込む。それを見た少女はなぜか嬉しそうに笑って篭を抱えると、さっと身を翻した。
「お皿洗ってくるね!」
キッチンへ去っていく少女の後ろ姿を見送ってから、青年は膝の上で丸まった子猫を優しい手つきで撫でながら、小さく呟く。
「…甘い」
――――――――――――――――――――――――――――――――
「猫と踊る娘」 了
子猫を抱いたまま問いかける少女の言葉に、青年は顔をしかめてかぶりを振った。
「…お前には関係ない」
青年の言い草に少女の頬がぷっと膨らむ。「心配してるんだよ!」
青年は一度少女を睨んでから、不機嫌そうにそっぽを向いた。「何でお前に心配されないといけないんだよ」
「具合悪そうな人を見て、心配しない人っていると思う?」
少女は座ったままの青年に詰め寄る。「此間だって頭痛そうにしてたじゃん!」
ケティも心配してる、と主張する少女の腕の中で、毛玉がなぁと声をあげた。同意したつもりなのだろう。
「知ってるんだからね、君がお医者様からお薬沢山頂いてる事!」
青年は暫く迷惑そうに少女と子猫を睨んでいたが、やがてため息をついて呻くように呟いた。
「…苦いから嫌いだ」
「子供みたいな事言わないの!」
余計なお世話だと青年は毒づく。しかし。
「…私やだよ、ジンが大好きな絵、描けなくなるの」
ふと見せた、少女の悲しげな顔に、青年は沈黙した。
「…右の棚にある篭の中身全部持ってこい」
沈黙の末に青年が小さな声で唸る。パッと顔を輝かせた少女は、腕に抱いた猫を青年に押し付け、軽やかに身を翻した。かと思うとすぐに両手に篭を抱えて戻ってくる。
「なんか凄いいっぱいあるんだけど!」
「ここんとこずっと飲んでないから…たまったんだ」
バカ!と叫びながら、少女は傍にあった水差しからグラスに水を注いで青年に差し出す。差し出された水を無言でひったくって、青年は大量の錠剤や粉剤を喉の奥へ流し落とし始めた。口に薬を含むたびに渋面を作る様は、少女に窘められたように、まるで嫌いな食べ物を食べさせられる子供のようだった。
最後の錠剤を三杯目の水で流しこむと、青年はトン、と音を立ててグラスをテーブルに戻す。「水」と低く要求するのに答え、少女は青年の手にしたグラスにもう一度水を注いだ後、自分のポケットを探って何かをテーブルに乗せた。水を口に含みながら青年がちらりとそちらに視線をやる。キャンディだった。
「此間街で踊ってたら、おじさんがお金と一緒に袋の中に投げ込んでくれたの」
視線で問いかける青年に笑って少女は答える。「薬を飲めたご褒美ね」
「…ガキかよ」毒づきながらも手を伸ばす。膝の上にいた子猫と目があって、彼は訊かれもしないのに言い訳がましく呟いた。
「…口直しにはなるだろ」
包み紙を破って中身を取り出すと、無造作に口に放り込む。それを見た少女はなぜか嬉しそうに笑って篭を抱えると、さっと身を翻した。
「お皿洗ってくるね!」
キッチンへ去っていく少女の後ろ姿を見送ってから、青年は膝の上で丸まった子猫を優しい手つきで撫でながら、小さく呟く。
「…甘い」
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「猫と踊る娘」 了
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