オネェ男子と、みがけ女子力!

黒いたち

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LESSON*5 金曜日

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「あんたが目指すのは、王道ナチュラルメイク」

 金曜日の放課後。
 うちに来た恭介は、固そうな黒いバッグを、二つも抱えていた。

「これって、メイク道具?」
「一つは、スキンケア用品ね」
「スキンケア?」
「ベースの肌がキレイだと、二割増しでかわいく見えるわよ」
「な、なるほど!」

 テーブルに、三面鏡がセットされる。

「この鏡を見ながらやるわよ」

 恭介が、私の背後から手を伸ばす。

「まずは――」

 耳元で恭介の声がして、距離の近さになぜかあせる。
 鏡の中の自分が、赤くなっていく。

「聞いてる?」
「え、は、はい!」

 あわてて横を向くと、至近距離に恭介の顔があり、息をのんだ。
 色素の薄い瞳は、吸い込まれそうなほどキレイだ。
 恭介が口を閉じ、ジッと私を見つめる。
 その、キレイに整った顔が近付いてきて――

「いたっ!」

 ゴツッとデコピンをされた。

「帰る」

 恭介が、てきぱきとメイク道具を片付けはじめた。

「恭介?」

 おでこをさすりながら、彼の名を呼ぶ。

「当日、わたしがメイクをすればいいだけの話だから」

 こちらを見ずに、立ち上がる。

「待って、恭介」
「うるさい」
「ごめん。私がちゃんと聞いてなかったから――」
「ばっかじゃないの!?」

 恭介が、やっとこちらを見る。
 なにかを耐えるような、苦しそうな表情だった。

「明日また来るから、覚悟しておきなさいよ!!」

 息を荒げた恭介の顔は、泣きそうなほど歪んでいた。
 私から逃げるように、彼は部屋を飛び出す。
 あわてて立ち上がった私の前で、部屋の扉が、大きな音を立てて閉まった。
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