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11. カイル

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 「あれ、聖女殿も魔女殿も何でそんな所に? って、じーさん何でそんなトコにひっくり返ってんだ??」


 少しだけ低めの澄んだアルトボイス。

 歌を唄ったら、きっとうっとりするだろうなと思わせるような艶のある声が後ろから聞こえた直後、彼女達の眼の前にキラキラと光の粒が舞ってその中から茶色くて肩までの長さの髪の毛に、若草色の瞳と白い肌の何とも綺麗な少年が現れた。

 白い神官服から見えている手は男らしく若干ゴツいが全体的に小さく見えるが身長は望と同じくらいなので150センチ位だろうか。


「もうとっくに離宮に移動したと思ってたのに。どうしたこんな所で? 迷子か?」


 キョトンとした顔が非常にキュートだ。


「あ、さっきの石造りの部屋に居た人?」

「ん? ああ。ジジイの隣りにいたのが俺だよ魔女殿、だろ多分」

「魔女の望よ」


 望は自分が魔女だと言い当てられたので素直に魔女だと名乗った。


「へえ。近くで見るとやっぱアンタ美人だな。俺はジジイの養子でカイルだ。宜しくな。ここではジジイの補佐が仕事だ。ソッチの聖女殿は?」

「涼子だよ」

「ふうん。リョーコも宜しくな。で、ジジイどうしてひっくり返ってんだ?」

「あ~・・・カルチャーショック?」

「何だそれ」

「人って自分の理解の範疇を超えると意識を放棄できるのねえ~・・・」

「ははあ、なるほどあんたらの世界の常識がジジイに合わなかったってところか?」

「まあ、そんな感じ。貴方は気が利いてそうね。この状況でそこまで頭が回るんだから」

「さてね。俺もそれなりの年齢だからな」

「え? 10代じゃないの?」

「え、ああ。違うよ。もうとうに30歳は超えてる」

「「ええ?」」

「俺は人族じゃないからな」


 ニカッと笑って彼は長い茶色の髪の毛を耳に掛け隠れていた耳を出した。


「俺は妖精族だから。これ以上は姿が変わらんのさ」


 御伽に出てくるエルフのように彼の耳は少しだけ長くて先が尖っていた・・・



×××



 「おい、ジジイ寝てんじゃね~ぞ。王子達を待ちぼうけにさせんじゃねーよ。後で神殿に文句が来るだろうが」

「お? おお、カイルか。どうした茶の時間か?」

「ジジイ、ついに耄碌もうろくしたか。リョーコとノゾミを案内してたんじゃなかったのか?」


 ハッとして周りを見回すおじいちゃん。


「ああ。夢じゃなかったのか・・・聖女殿も魔女殿も間違いなくおいでになっとる。残念じゃ・・・」

「ジジイやっぱ耄碌したか? 聖女と魔女が来て喜んだばっかだろ? なに残念とか言ってるんだよ?!」


 養父の顔を覗き込みながら渋顔になるカイル・・・

 成程彼の言い分は、多分事情を知らない人にとってはマトモである。


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