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13. 賓客扱い

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 「・・・理想といいますか、昔からずっと好きな女性はいます」


 機嫌の悪そうな顔のままで視線を合わせること無く、王子達2人に向かってムッツリと返事をするルーカス。


「「え?」」


 烏の濡れ羽色の艷やかな髪の毛はオールバックにされ後ろに向かいキッチリ流されていて襟足の辺りで髪紐で一纏めにされている。

 端正な横顔はあいも変わらず無表情だが、その整った顔が歪むのを神が嫌がって表情筋を使うのを禁止したのじゃないかと疑ってしまう位には、綺麗な顔をした男だ。

 侯爵家の長男だがその腕っぷしの強さと、この国では珍しいくらいの魔法の腕の両方を請われ魔法剣士として王族の護衛騎士を務めている。

 フォルテリア家の者に多い群青色の瞳は彼の出自が歴史のある家系であることを示しており、毛並みの良さに惹かれて貴族女性達に群がられてきた過去がある。

 そのクセ誰に対しても靡くなびく事は皆無で冷たくあしらわれた女性達から女嫌いなのだと囁かれているのだが・・・


「え、お前、女に興味があったのか! 男色家だと思ってたぞ!」

「・・・」


 感情の浮かびにくい仮面のような顔の下で、失礼な物言いの第3王子の口に丸めたタオルをいつ突っ込めばいいのかを考えているのに2人は気付かない。


「殿下。私は男色家ではありません。至ってノーマルに女性が好きです。もっとも対象は限られますが」


 新たな情報に驚愕の色を隠せない第2王子と、ハッと気が付いたような顔の第3王子。


「そうか・・・」

「え、ノワール? どうしたの?」


 フィンレー王子は、弟の覇気のない返事に更に驚いた顔になった。


「何でもないよ兄さん」


 ノワール王子は王宮魔術師のローブのフードをバサリと脱いで、無表情のルーカスに視線を向けた。


「・・・」


 ルーカスはそれ以上何も言わなかった。



×××



 「とにかく出迎えの馬車が待ってるからさ、二人共そっちに向かってくれるかな? ジジイと一緒に俺もついてくからさ」


 妖精族だというカインは、困り顔になって此方を振り向いた。


「うん、まあいいけど・・・」


 若干顔が赤いまま答える涼子と、無言で頷く望。


「何処へ行くんでしょうか?」


 今更ながら、これから行く先次第で不自由になりかねないという状況を危惧したのは望だ。

 異世界転移に魔女に聖女――魔法のある世界に未だに教えられていない災厄。

 気が動転していて確認を忘れていたが神官長が目を回し時間に隙間が出来た事で、やっと頭が冷静になってきたようだ。


「私達を閉じ込めるような場所ならお断りしたいんだけど?」

「ん? ああ。ノゾミは見掛けより隨分大人みたいだな・・・もっともな心配だな。安心しろ。これからあんたらが行く場所は王家の管理してる離宮だよ。何しろ王家の賓客だからね」

「賓客ですか?」

「ああ。本来ならあっちの世界の住人をこっち都合で強引に招いたんだからな。当然だろ?」


 ――この国は、自分達の常識に照らし合わせてもおかしな所は無さそうだ。


 寧ろ涼子の発言のほうがこの世界での常識には則していないのかも知れないな、と望は苦笑いになった。

 


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