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28. 埴輪ちゃん冒険譚
しおりを挟む望に離宮内の警邏を任命された乳白色の埴輪警備隊は建物内のアチコチに散らばっていき、怪しい生き物の気配を探っていた。
そして全員が同じ様に、最後に厨房に何やら異物の気配を感じて集まったのである。
次々に運ばれて行く食事。
どんどん自分たちの前を行き過ぎるワゴン達。
しかし彼らは動かない。
しかも透明化しているらしく厨房で立ち働いているコック達も気付かない。
最後のワゴンがメイドの手によって彼らの前を通り過ぎようとした時に彼らのうちの一人(?)の隊員がワゴンのタイヤの前に身を投げだした。
「あら? ワゴンが何かに引っかかっちゃったわ・・・ナニコレ? 人形?」
メイドがローラーを覗き込み、白い埴輪を見つけて首を傾げる。
隊員1人が犠牲になり――と言っても魔法で出来た体は丈夫なので実は痛くも痒くも無いのだが――ワゴンを停止させ半透明の埴輪達がワラワラとワゴンの下段に乗り込んだ。
山盛りの埴輪を乗せたままの銀のクローシュを運んでいくメイド。
そして主人の部屋でそのクローシュが開けられた時に彼らは瞬時に合体してその短い手を可能な限りびよ~んと伸ばし、ガラスの器に入った邪悪なオーラを放つ生き物を窓からポーイッと投げ捨てたのである。
×××
ローザ夫人がほう、と感嘆の溜息を一つついた。
「まぁ・・・なんて健気な・・・」
「埴輪ちゃん! 身を投げだして私達を守ってくれたのねッ」
「という事らしいです」
白い壁をスクリーン代わりにムービーを眺めていた望が、ルーカスを振り返る。
「・・・分かった」
微妙な顔で埴輪と共にドア前で動画を見ていたルーカスが溜息をついた。
最初部屋に飛び込んだ時は白い埴輪と赤い埴輪が客間の床にワラワラいたのに焦ったが、どうやら誰一人火傷をしていなかった事に安心した。
×××
外に放り出されていたフレイムスライムはモフモフ警備隊に取り囲まれ、彼らの魔法によって拘束された上にルーカスの凍結魔法によってあっという間に粉砕され敢え無く昇天した。
部屋にいた望や母達に一体何があったのかを聞くと、望が徐ろに白い大きな埴輪の胸辺りをカパッと開けて(?!)USBメモリー(!)を取り出し、どう見ても潰れたカエルのような形の小さなプロジェクターを赤いスーツケースから取り出して記録画像を見始めたのである。
――望、お前なんつう非常識な魔法だよ!? 何だよ、そのカエルが潰れたようなプロジェクターは? アッチでそんなの流行ってたの? それと埴輪警備隊ってなんなんだよ?! しかも何で2色の埴輪??
無表情を装ってはいるものの、頭の中は疑問符の嵐のルーカスである・・・
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