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94. 異世界7日目

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 続々と集まってくる各国の代表達は、今回の『災厄』を終えた際に現れた『天人』からの情報開示をされた後に国家間協議を終えるまで滞在する事になる。

 その為様々な身分と人種で王城内はごった返す事になった。

 協議が開催されるのは1週間後であり、その際に『召喚の乙女』も出席を求められていて、望と涼子はその話しを聞くだけでウンザリ顔になった。


「会議って言われてもねー・・・」

「うん。私達まだこの国にすら馴染んでないのに・・・意見なんか出せませんよ? 適当にやっといて下さい」


 ニコニコ胡散臭く笑うフィンレー王子の笑顔を、目を細めて睨む涼子と眉を下げる望。


「うーん、まあ建前上出席して欲しいっていうか・・・」

「ま。要するに『召喚の乙女』はこの世界においての最高権力者なんだけど・・・この機会に各国に見知って貰うのが目的だな」


 ノワール王子が分かりやすく説明してはくれるが・・・要は見世物かな?


「国外に知り合いが増えていい事ありますか? 仕事で給料が発生する訳じゃあるまいし。そんな事に駆り出されるくらいなら王都の八百屋さんと顔見知りになったほうが得します」


 思わず人差し指と親指で『オカネ$』マークを作る望と、


「そうだよね~無駄にLINE申請されても、顔も名前も一致しないんじゃ会話すらしないから顔合わせなんか意味無いのと一緒だよね?」


 と、フィンレー王子の熱視線を無視して、望お手製のトリュフを大量に口に放り込む涼子――目がめっちゃ輝く・・・美味しかったらしい。


「「この世界救うのは仕方ないけど! 私達も住む所だし~!」」

「「・・・」」


 ・・・何でこうまで2人が頑ななのか・・・ソレは昨日に遡る。



×××



 「お帰りなさいませ」


 庭でのピクニックを堪能してドアを潜ると、美しいカーテシーでローザ夫人に出迎えられたのだが、その表情は能面のようである・・・

 まるで表情筋が仕事をしていない以前のルーカスのようだ。


 ――コレ、実は怒るの我慢してるんじゃ・・・

「実は先程、侯爵様から連絡がありまして」

 ――さっきの白鳩よね?

「ノゾミ様と、リョーコ様の伴侶候補に対して国外から『待った』が出たらしく・・・」

「「え?」」

「・・・」

「国王陛下がその旨を了承したらしく、侯爵が慌てて知らせて参りましたの。オホホホ・・・フザケンジャナイワヨ。その直後に陛下の印が押された書状が離宮に舞い込みまして、ルーカスの伴侶を隣国の王女に指名するという内容でしたの」


 彼女が両手で持つ扇が『ミシリッ!』と音がした。


「えー、なんで? 他国ってどういう事? え、王女って?」

「どういう事でしょうか?」

「今集まりつつある国外の代表の中に、ルーカスにご執心の王女様が居られますがその方が反対を唱えられておりますの。そして陛下の指名されたお相手もその方ですの。マッタクジョウダンジャナイワヨ」


 なんか、小声で呟いている気がする・・・気の所為かな?


「隣国の王女殿下なのですが、降嫁先を元々国外にお求めで、以前我が国の王子達とのお見合いにいらしたのですが、その時にルーカスを見初めたらしく伴侶はルーカスが良いと言い出しましたの」

「え、ソレってスッゲー我儘じゃ?」

「ええ。国内では貰い手が居ない程の我儘王女ですの」

「居ない? え?」

「つまりその姫と縁を結ぶぐらいならと軒並み釣り合いの取れそうな高位の貴族子息達がお相手の爵位は関係なく婚約や婚姻をしてしまいましたの。又同様に中位の貴族子息達も慌てて婚約者を作ったという、逸話の持ち主ですの」


 オホホホ~と笑うローザ夫人の額に幻の青筋が見えた気がする・・・


「何でそんなに・・・」

「単純に恐ろしい程の散財癖ですわ。後は身分を傘に着てやりたい放題ですわね」

「「・・・」」

「こちらからは何度も何度も何度もお断りの書状を送っておりますけれど、まーったく意に介さず釣書を何度も送りつけて参りますので国内に着いた途端に転移魔法であちらの国王陛下の元に直接返す呪いをワタクシが掛けましたの」

「凄いですね・・・」


 呆然と返すしかない望。

 他国の王様の所に陛下に無断で突き返すって、どのくらい拒否されているかがどんなに鈍感でも分かりそうなものである。


「あんなのが・・・ゴホン・・・その様な方を迎えるなんてどんな貴族家でも大商家でも嫌ですし、嫁いだ途端に王女の散財で没落してしまいますわ。隣国の国王夫妻は末姫をいたく可愛がられておられるようですが、あんなに躾が悪い娘なんて言語両断ですッ!」

『バキッ!』

「「あ・・・」」


 とうとう扇が、ローザ夫人の腕力に平伏した音がした・・・

 

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