10 / 12
別章 砂の海
6
しおりを挟む昇りつめ、弾ける寸前で焦らされ、ゆっくりと波が引いていくまで身体の中心から遠い髪や足を撫でられる。僅かな砂が肌の上に零れるだけで感じてしまうほど、颯の身体は高められ、幾度か優しく突き放された。
呼気を送られるたびに黒風のあやかしの気で満たされて、痛みはない。
だが口を吸われるたびに、颯の中から何かしら大事なものが奪われてゆく。
だめだ、放せと言おうとしたのに、口からでた言葉は気持ち良いだった。
また、抗う言葉が消えていく。
助けて、いやという否定の言葉は黒い靄のなかに飲み込まれ、これはおかしいと思う思考さえ鈍くなっていく。黒海の名前を呼びながら愛撫に身をゆだね、抗うことができなかった。
「颯のここに呪をかけた。だからもう私が良いと云うまでいけないぞ」
黒風の手の中で雁首の周りをゆるくなぞられる。見えない輪を嵌められ、脈打つのがわかる。
ふふ、と淫蕩な声で黒風は笑った。
解放を求めてひくひくと動くそこを、黒風は愛おしげに先端を舐めた。
颯の身体は釣り上げた魚のように跳ねた。
「颯は優しい子だから、私を手伝ってくれるだろう。この熱さで乾いて死にそうだったのだ。颯にはイドを掘るのを手伝ってもらうぞ」
黒風、と何度名前を呼んだかわからなかった。
今度は黒風が颯の名を呼ぶ番だった。
「颯、ああ、颯…こんなに簡単にこんな身体になってしまって。颯は生前も悪魔になっても誰も殺めたことがないな。こんな清らかなまま堕ちてくるなど思いもしなかった。あの堕落した殉教の徒よりもずっと…ああ、颯、比べ物にならない」
悪魔とはなんだ、と問いかける暇も与えられなかった。
颯の腰は頭より高い位置に支えられ、白い脚を持ち上げられて開かれ、黒風は口唇の歪んだ狂者の笑みを浮かべて黒く太い杭を沈めてゆく。
「颯、だめだ、目を開けて良く見ろ。繋がっているだろう。お前は俺の物になるのだ」
激しく腰を動かしながら、先に抑えがきかなくなったのは黒風の方だった。杭の先が身体に入るだけでは癒せぬ渇望に支配されて、黒風は颯の身体をかき抱き何度も口づけた。
「…っ…あっ…ぁぁ黒風」
突き上げられ、身体の中を搔きまわされ、内に籠る熱を吐き出すことも許されず、颯は悲鳴をあげた。
片手は黒風の身体にすがりついたが、もう一方の手は、爪が剥がれそうな程必死で床を掻いていた。
拒絶する言葉を奪われ、先ほどまで優しく体を包んでいた黒い靄に襲われ、本能的な怯えで颯の身体は逃げようとしていた。
「逃げることなど、許さない」
黒い靄が足首に鎖のように絡みつく。
「颯、俺の渇きを癒してくれるだろう?」
渇いていると言った黒風の欲望が、激しく蠢き震え、颯の身体の中で弾けた。境目からじゅぶじゅぶと水音が聞こえた。颯の身体を横たえたまま、黒風がゆっくりとまだ硬い杭を引き抜く。
熱い手が颯の立ち上がったままの男根を包みこむ。
「颯、いっていいぞ」
ゆるく呪の周りをなぞられた。
颯はわけもわからず、黒風の口中で果てた。
0
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる