こがらしはしぬことにした

小目出鯛太郎

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砂の国

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「兄貴達はおさかんだな、なんだ、こがらしあれにあてられちゃったのか?」

 後ろからうなじをくすぐられた凩の口から、ぴゃいっと小鳥のさえずりの音が漏れる。

「そんなんじゃ見えないだろ?」
 砂塵さじんに抱えられ凩は仰天した。

 見るものではないと思う、いや、見てはいけないと思う。


 孔雀の羽が隠していたものがすっかり見えてしまった。



 熱波しむんの広く逞しい胸に両腕をついて、時に撃たれたようにのけぞる白い姿を。

 熱波の赤銅色の髪を手綱のように掴み引き揚げて口づける二人の姿を。

 束風の新雪を筆でひとすじなぞったような美しい筋肉の境目を熱波の赤銅色の太い指が愛し気に撫で、薄い色の胸の飾りをこねるのも、束風の腰を掴み黒い杭が蠢くのも、その激しさの果てに白い杭から飛沫が飛ぶのも見てしまった。

 なんてきれいなんだろう、と近くで恍惚とした声がした。


 耳を押えていいのか、目を押えていいのか、最後には、凩は全てを諦めて顔を砂塵の胸に押し付けた。


「ねんねには刺激が強すぎたか…?」

 耳元で囁かれて、凩は叫びたかった。ねんねではない!おれは束風と歳がそうかわらないんだぞ、と。

 何故、こうも違うのか。

 心の中でいろんな感情が嵐のように渦巻く。

「ほら、あーんして」
 幼子にするように、口の中に甘酸っぱい果実が押し込まれた。

 凩はぐずぐずと噛んだ。


「ごめんな、屋敷に甜瓜めろんがなくて、別の果物なんだ。でも甘いだろう?」
 口の中に入った果実は甘かった。

 だが無性に悲しくなった。

 これが本当に欲しいものかな?

 ぽろりと涙が零れた。


「う、泣くなよ。凩目を閉じて」
 口の中に覚えのある甘い味が広がる。

 啜るとまた、じゅわりと甘い味が広がった。ぬるりとした厚みのあるものが凩の口の中を探って甘い雫を落としていく。

 ばかばか砂塵これはめるんじゃない。

 文句を言おうという気が失せた。甘くて、ふわふわして、くらくらとして何かを考えることからも解放されるような気がして、甘い雫を夢中で舐めた。

 砂塵の太腿の上に抱え上げられ、甘い雫を啜る間、確かめるように髪や肩や背中を熱い手が滑っていく。
 体が少しでも跳ねると何度もそこを撫でられた。

 着物の裾がとうにはだけていることも、凩は気が付かない。

 身体に重みが加わって動けず、足を閉じることもできず、足の間に砂塵の身体があって、凩は息苦しさに押しやろうと藻掻いた。

「おもい、よ、さじん、おも、い」

 途切れ途切れに訴える。

「凩、なぁ、まだたりないか?」

 凩の訴えなどまるで聞こえなかったように、耳元に囁かれ、耳朶の後ろを音を立てて吸われた。

 胸元もひどくはだけ、それ以上開かれては帯などしている意味がまるでなくなってしまう。
 襟のあわせを掴もうとした凩の手を取り、砂塵は指に口づけた。

「凩、指が揺らいでいる。あとどれほどで変化する?お前の本当の姿が見たい」


 赤い唇と、赤い舌と、甘い雫は、中から凩を攻め始めた。

 苦しい、息ができない。風のあやかしの身に心臓はないけれど、早鐘を打つようにどくどくと音がする。
「ばかぁ!さじんのばか」

 罵る語彙が見つからなかった。
「これがほんとうのおれだって、おとなになんかなれない」

 放せよと、拳で砂塵を殴った。どれほどの威力もなく、酔ったせいでなお弱い力で打たれて、砂塵は凩の小さな顔を両手で挟み、また口づけた。

 追ってくる濡れた舌と熱い唇を避けようと凩は懸命になる。すり抜けるのも、とんぼ返りも得意なはずなのに。
 体は重く、熱かった。
 砂塵にのしかかられたまま、更に熱い手が足の付け根に触れて、凩は悲鳴をあげる。


「どんなに口をつけたって、束風みたいにはなれないんだ」

 凩は声をあげて泣いた。



 

 



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