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旅の始まり
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10月12日
いつも通り俺は引きこもってゲームに熱中していた。10月12日がなんの日かも忘れて。俺はあの一次試験の日から家に引きこもっていた。なぜか合格しているという自信があったからだ。当時の学校の担任も最初のうちは電話を掛けてきたり、心配している素振りを見せてきたが不合格だったのか?と思ったようでもう電話もなにもしてこない。そういえば通っていた学校には合格発表が10月12日だという事を言っていなかった。それなら間違えられても同然だ。親にもてきとうな理由を付けているが、こっちも不合格だったと思ったらしく慰めの言葉と次は頑張ろうという言葉を掛けてきた。こっちにも合格発表が10月12日という事を言っていなかった。一次試験の日から我が子がずっと部屋に引きこもっていたらそれは親も心配するだろう… もう10月に入った頃くらいから親もなにも言ってこなくなっていた。
ゲーム中、眠気を晴らそうと思ってパソコン画面から目を逸らした。そしたら地面に無造作に置かれている横浜市消防局のパンフレットが目に入った。「あぁ… 今日だったな」と思いだし、ゲームのタスクを切って合格発表のページへ飛ぶ。面倒臭い受験者情報を入力して、受験番号が書かれているページへ。俺の番号は128。マウスを動かしてスクロールをする。101、103、104、108といった具合に案外合格してるじゃんと安心する。さらにスクロールして115、125… 顔がジワジワ赤らむ。「これ… やばないか…」一気に10人飛んだ事への焦りが隠せなくなる。俺は目を瞑ってスクロールする事を決めた。ゆっくりとマウスを動かした。そして目を開けた。
128、130…
「あった、あったわ」咄嗟にこの声が出た。にやけは止まらないが口からはこの言葉しか出なかった。必死に頑張っていた人は大声で叫んだりするのだろうが、なにせカンニングしただけの俺は奇跡、まぐれ当たりという感覚なだけだった。しかしやはり心のどこかでは嬉しかったらしく、親に大声で「消防受かった!!」と2階の自分の部屋から伝えた。なにを今更。頭おかしくなったか?と言わんばかりの返答が1階から返ってくる。もう見せた方が早いと1階にズタズタと降りて行って、パソコンの画面を父親と母親に見せつけた。そしたらポカーンという表情でパソコンを見た後、父親から抱き締められた。父親に抱き締められたのは初かもしれない。「良く頑張った、良く頑張ったぞ祐介」と言われた。父親に誉められのはいつぶりだろう。母親は泣いている。よほど嬉しかったらしい。そして父親は抱き締めた後、俺に時計をプレゼントしてくれた。それは新品の「Gショック」。うちは貧しいといえば貧しい家庭だったので高い物は誕生日にも買ってもらえなかった。パソコンだって自分のバイト代で買ってたし、チャリだって親のお下がりだった。「この時計は祐介が一次試験に合格した時に渡そうと思って買っていたんだ。祐介が落ちたと思っていたからもう捨てようかと思ってた。」と言われてハッとした。まだ一次試験に受かっただけなのだ。後は体力試験、面接、身体検査がある。日にちは消防側が指定するらしいのでそれまでやっぱり俺はゲームをすることにした。どうせ消防士になっても時間はあるだろうけど、やはりゲームがしたい。という事で俺は部屋に戻りゲームのタスクを開いた。
Gショックくれるくらいなら新品のPCが欲しい。消防士になったらゲームをする時間なんて無くなるのだろうか、それは絶対に避けたい。なんて思いながら俺は画面の中の世界で武器と弾薬をかき集めた。
いつも通り俺は引きこもってゲームに熱中していた。10月12日がなんの日かも忘れて。俺はあの一次試験の日から家に引きこもっていた。なぜか合格しているという自信があったからだ。当時の学校の担任も最初のうちは電話を掛けてきたり、心配している素振りを見せてきたが不合格だったのか?と思ったようでもう電話もなにもしてこない。そういえば通っていた学校には合格発表が10月12日だという事を言っていなかった。それなら間違えられても同然だ。親にもてきとうな理由を付けているが、こっちも不合格だったと思ったらしく慰めの言葉と次は頑張ろうという言葉を掛けてきた。こっちにも合格発表が10月12日という事を言っていなかった。一次試験の日から我が子がずっと部屋に引きこもっていたらそれは親も心配するだろう… もう10月に入った頃くらいから親もなにも言ってこなくなっていた。
ゲーム中、眠気を晴らそうと思ってパソコン画面から目を逸らした。そしたら地面に無造作に置かれている横浜市消防局のパンフレットが目に入った。「あぁ… 今日だったな」と思いだし、ゲームのタスクを切って合格発表のページへ飛ぶ。面倒臭い受験者情報を入力して、受験番号が書かれているページへ。俺の番号は128。マウスを動かしてスクロールをする。101、103、104、108といった具合に案外合格してるじゃんと安心する。さらにスクロールして115、125… 顔がジワジワ赤らむ。「これ… やばないか…」一気に10人飛んだ事への焦りが隠せなくなる。俺は目を瞑ってスクロールする事を決めた。ゆっくりとマウスを動かした。そして目を開けた。
128、130…
「あった、あったわ」咄嗟にこの声が出た。にやけは止まらないが口からはこの言葉しか出なかった。必死に頑張っていた人は大声で叫んだりするのだろうが、なにせカンニングしただけの俺は奇跡、まぐれ当たりという感覚なだけだった。しかしやはり心のどこかでは嬉しかったらしく、親に大声で「消防受かった!!」と2階の自分の部屋から伝えた。なにを今更。頭おかしくなったか?と言わんばかりの返答が1階から返ってくる。もう見せた方が早いと1階にズタズタと降りて行って、パソコンの画面を父親と母親に見せつけた。そしたらポカーンという表情でパソコンを見た後、父親から抱き締められた。父親に抱き締められたのは初かもしれない。「良く頑張った、良く頑張ったぞ祐介」と言われた。父親に誉められのはいつぶりだろう。母親は泣いている。よほど嬉しかったらしい。そして父親は抱き締めた後、俺に時計をプレゼントしてくれた。それは新品の「Gショック」。うちは貧しいといえば貧しい家庭だったので高い物は誕生日にも買ってもらえなかった。パソコンだって自分のバイト代で買ってたし、チャリだって親のお下がりだった。「この時計は祐介が一次試験に合格した時に渡そうと思って買っていたんだ。祐介が落ちたと思っていたからもう捨てようかと思ってた。」と言われてハッとした。まだ一次試験に受かっただけなのだ。後は体力試験、面接、身体検査がある。日にちは消防側が指定するらしいのでそれまでやっぱり俺はゲームをすることにした。どうせ消防士になっても時間はあるだろうけど、やはりゲームがしたい。という事で俺は部屋に戻りゲームのタスクを開いた。
Gショックくれるくらいなら新品のPCが欲しい。消防士になったらゲームをする時間なんて無くなるのだろうか、それは絶対に避けたい。なんて思いながら俺は画面の中の世界で武器と弾薬をかき集めた。
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