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「シンデレオ」
しおりを挟む男しかいない世界。当然アダムとアダムから、アダムしか生まれない世界。
そこにシンデレオという可愛い男の子がいました。自分を生んでくださった美しい父上は彼が幼い頃に亡くなり、もう一人の父上はママハーハという名の新しい伴侶を迎えました。
そして、そのママハーハには顔だけは綺麗だけど意地悪な双子の連れ子が。シンデレオはママハーハと双子の連れ子に影でいじめられていましたが、さらに父上がパンを喉に詰まらせて亡くなると、住んでいたお屋敷からも追い出されてしまいました。
ママハーハは高らかに笑いながらいいました。
「シンデレオを追いだした小屋の森には、雄鶏と雄牛と雄馬しかいないのよ。あの子は痩せ細って野垂れ死ぬだろうね」
しかし、ママハーハは肝心なことを忘れていたのです。この世界には“雄”しかいないことを(なんで忘れていた?)
父上が死んでから元々食事さえ与えられていなかった、シンデレオはひもじさに森の小屋でしくしく泣いていました。
そこにもぅ~という雄牛さんの声が。シンデレオが外に出れば、雄牛さんの見事な雄ぱいからは、滴るミルクが。なにも食べておらず喉も渇いていたシンデレオはごくりと喉を鳴らしました。
「飲んでいいの?」と聞けば、もぅ~という雄牛さんのお返事。その雄っぱいにシンデレオはむしゃぶりつきました。ごくごく飲んで元気いっぱい。さらにはコケコケと雄鶏さん二羽が、毎日かわるがわる交互に卵を産んでくれました。この雄鶏さんたちは普段はとっても仲が悪くてケンカばっかりなのですが、
なぜか毎日卵をかわりばんこに産んでくれるのです。ケンカップルという言葉とリバという言葉をシンデレオは学んで、あれがそうか~と思うのはシンデレオがもっと成長したあとの話です。
そして森の散歩には雄馬さんが必ずついて来てくれました。ある日の散歩で凶暴なクマに出くわしたとき。
雄馬さんはその強力な一蹴りで、凶暴クマを一撃で倒したのです。それを見てシンデレオは叫びました。
「雄馬さん、僕を弟子にしてください!」
そこからシンデレオと雄馬の修行がはじりました。シンデレオは雄馬と森を駆け、蹴りを学び、雄牛さんの乳と雄鶏さんの卵でぐんぐんとたくましく成長しました
数年後、白亜のお城のバルコニーにて王国の王子様はため息をひとつつきました。
「まったく、どいつもこいつもなよなよしていて、俺の好みじゃない」
王子様は文武両道。長身ですらりと、さらにほどよく筋肉がつき、みんなの憧れでしたが、きゃあきゃあと集まってくる着飾った物達には全然興味がわきません。
王子の好みは自分と同じぐらいに戦える、魂のバディでライバルで恋人だったのです。
どこかに自分の理想の伴侶(と書いてバディと読む)はいないかと、王子が一人森で馬を走らせていたときに、それに出会いました。
それは大きなクマでした。王子は剣を抜いて、クマにきりかかりましたが
そのクマは素早い一蹴りで、王子の剣をその腕からとばしました。ならば格闘だ! と王子はクマに掴み掛かりました、普段の王子もクマの首ぐらい素手でゴキリと折るぐらい鍛えているのです。
がっしりと手を組み合いギリギリと力比べとなり、「このクマ……デキる」と王子がつぶやいたとき
「あのぉ……私は人間です」との声がクマからしました。
よくみればそれは、クマの毛皮をかぶった漆黒の髪はぼうぼうに伸び放題、髭の伸び放題の男でした。
「お前人間か?」
「はい」
そもそも、両手を組み合った時点、いやいや裸足の足で剣を蹴り上げられた時点で気付くべきですが。
この王子頭が筋肉すぎて、ちょっとうっかりなところがあるのです。
しかし、その毛むくじゃらの人のきらめく星の様な瞳を見つめて、王子の心臓は跳ねました。
自分と対等に戦える。それにこのすんだ瞳はとても心が清らかな男に違いない。俺はこいつに惚れた。
恋に落ちた瞬間でした。
「あなたは?」とシンデレオは王子様に名を訊ねました。王子様はとっさに答えました。
「俺は魔法使いだ」
「魔法使いさん」
なぜそんな風に名乗ったか王子様にもわかりません。それは話の都合上……(以下略)。
「魔法使い」と名乗った王子は呼び寄せた侍従達にシンデレオの髪と髭を整えさせて、服も整えました。またお供の雄馬の背にも立派な鞍ものせました。
「この馬にまたがり、今夜、城で行われる舞踏会にお前は行くのだ。そこで幸福が待っているだろう」
「え?魔法使いさんがいれば私は別に……」
シンデレオもまた、王子を見て心臓がひとつ跳ねました。森に追放されて久しぶりにみた人。それも自分と同じぐらい力強くたくましいなんて……。
これは恋?
いやいや、シンデレオ。単に久々にみた人に恋しくなっているだけ……ごほごほ。
「城で俺も待っている」
王子はそう言い残して、颯爽と白馬で去っていきました。
そして、夜となった宮廷舞踏会。
ママハーハに引き連れられた顔だけは綺麗に成長したけど、その顔に性格の悪さが出ている双子は意気揚々と舞踏会に参加してました。
ママハーハも双子も自信満々でした。ママハーハが「どちらが選ばれるかしら?」と言えば「僕達両方だよ」「きゃあ、美しい僕達二人ともなんて王子様も幸せだね~」とはしゃいだ声をあげます。
王子様が目の前にきたときも、ママハーハへと双子は自信満々の顔でした。
しかし、王子はそんな三人など全く無視して、目の前を通り過ぎていきました。ママハーハが慌てて「お待ちください!」と声をあげて、双子が「美しい僕達がお目にはいらないのですか!」と王子様の前をふさぐように飛び出します。
「無礼者!」と衛兵達に三人はたちまち取り押さえられて、牢屋につれて行かれました。
そこに入れ違いに白亜のお城の前にたくましい黒馬で乗り付けた姿が。後ろになでつけられた漆黒の黒髪、輝く星のような黒い瞳。長身でたくましい体躯。シンデレオです。
マントをひるがえしすとんと降り立つ姿。
王子様と並び立つような美丈夫に「あれはどこの貴公子様?」とざわめくなか、王子様は自ら歩み寄るシンデレオの手を取り、大広間までの階段を二人は腕を組んでのぼりました。
「俺はこの国の王子だ」
「え?あなたは魔法使いではなくて王子様?」
シンデレオの手を取り踊り出す王子様。
二人の美丈夫の美しいダンスに、みんなうっとりと見とれました。そして同時に、これほど王子に似合いのお方には誰もかなわないと思うのでした。
王子様とダンスを踊ったシンデレオは彼に手を取られるままに広間から出て、そのまま王子様の寝室へと。
あれよあれよという間に、王子様から与えられた貴公子の服を脱がされて、12時の鐘が鳴っても、ベッドから出してもらえず、そのまま朝まで甘い声をあげ続けて、そのまま三日後には結婚式を挙げていました。
ママハーハーと双子ですが、不敬罪のうえに色々な罪が露見し鉱山送りとなりました。
クマを素手で一撃で倒す王様と王妃?様の元で王国はますます栄えたそうです。
さらには王妃様は七人ものたくましい王子を産み……。
白雪王子と七人のたくましい王子には……続かない……。
【完】
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