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プロローグ その2
しおりを挟む「朝、起きたら、こ、この子が枕元に!」
「み、見たことのない鳥の雛だし、どこの巣からおっこちてきたんでしょうか?」というフェリックスに「こいつは……」とナイトが目を見開いてまじまじと、足をパタパタ動かすそれを、じろじろあちこちから見る。次に瞬間にぽんとフェリックスの肩を叩いた。
「おめでとう、そいつは祝福された力だ」
「え?」と戸惑うフェリックスに「僕からも、おめでとう」と声がかかる。振り返れば、ファーザー・ルークが微笑んでいた。
「その子は君の魂の半身であるアニマル。君はガイドとして“目覚めた”んだよ」
フェリックスは大きく黄色の瞳を見開いた。
そのペンギンの雛、もといフェリックスの魂の分身のアニマルはチィオとファーザー・ルークが名付けてくれた。
センチネルもガイドも、自分の魂の分身であるアニマルがいるのだという。その出現が力が覚醒した証でもあるのだと、それが一番最初にフェリックスが習ったセンチネルに関しての知識だ。
そして、本当ならば十五で出なければならない孤児院にファーザー達の“お手伝い”という形でおいてくれた。そしてファーザー達から、ガイドとしての必要な様々な基礎教育を授けられた。
辺境の村からはセンチネルやガイドが所属するギルドがある街からは、馬車で三日もかかる距離でとても通えるものではなかったからだ。
ファーザー達からは様々なことを習った。
センチネルにガイドの知識や、ガイドとしての力の使い方だけではない。この世界の神話や、歴史、多くの国が興り滅んだこと。
そして戦争の道具としてセンチネルやガイド達がかり出された悲しい歴史も知った。
そんな悲劇を二度とくり返さないために、世界中のセンチネルとガイド達は団結してギルドを作り、各国と対抗する力を得たこと。
そしてギルドが出来たあとしばらくして、力に目覚めた優秀な子供達を導くために、この世界の二つの大陸の真ん中にある島に、センチネルとガイドのための学園が作られたこともだ。
その学園にはいることが今や一流のセンチネルやガイドとなる第一歩なのだという。
ファーザー・ルークとファーザー・ナイトのおかげで、三年のあいだにみるみる知識をみにつけたフェリックスは、その馬車で三日かかるセンチネルギルドにて試験を受けて、学園の奨学生として見事に合格した。
ギルドでは初めての合格者だと大騒ぎになったし、辺境の村でもみんなセンチネルやガイドがどんなものか理解して無くても、めでたい! と心づくしの祝いの宴を開いてくれた。
そして、村を出る日。
「立派なガイドとやらにやるんだぞ!」
「うん、ジョンおじさん」
「泣いて途中で帰って来たって村にいれねぇからな」
「ありがと、バーキ爺」
「なんで礼なんて言う。俺は入れないといってるんだぞ」
「だからありがとう」
これがこの偏屈な老人の精一杯のはげましなのだと、フェリックスにはわかっていた。畑でのお手伝いでふざけたり騒いだりした子供達を散々しかったそのあとは、泣きべそをかいた彼らにかならず井戸水で冷やした野菜を「出来損ないだから食べろ」とくれた。ちょっとだけ形がゆがんでいるだけなのに。
黙ってしまったバーキ爺の目は少し赤くなっていた。他の村人たちも兄弟も「元気でね」とフェリックスに声をかけてくれた。
最後に「がんばれよ」と肩を叩いてくれたファーザー・ナイトと、静かに微笑むファーザー・ルークと抱き合って、フェリックスは馬車に乗り込んだ。
一番近くの街までは馬車で、そこから先は汽車。それから港について蒸気船に乗った。
そして、初めて広い広い海を見て、その向こうに見えた島。かげろうのように浮かぶ学園のシンボルである幾つもの尖塔の形を見たときに大きな歓声をあげた。
だから学園はタワーと呼ばれているとファーザー達から聞いた。
「あれがブリューゲル学園!」
フェリックスは十八歳になっていた。
二つの大陸の真ん中にある大きな島、そこにあるセンチネルとガイドのための学校へといよいよやってきたのだ。
一人前のガイドとなるために。
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