落ちこぼれが王子様の運命のガイドになりました~おとぎの国のセンチネルバース~

志麻友紀

文字の大きさ
51 / 62

【14】プリンスの賭け その3

しおりを挟む



 それから、二人そろって学園に戻る。フェリックスは久々に他の生徒達とタワーの門を朝くぐった。学園で暮らしていたウォーダンにとっては初めての経験だったらしい。
 「なかなか新鮮だな」なんて笑う彼に、ヨハンのパン屋の屋根裏に、たまに二人で泊まってもいいかな? と思う。“運動”はさすがに控えないといけないけど。

「おや、プリンスとプリンセスがおそろいで御登校なんてめずらしい」

 校門をくぐってすぐの日時計の広場。そこで会いたくもない人物がいた。ネラだ。
 シティで会った時も思ったけど、いつも自分達を待ちぶせしているんだろうか? だとしたらご苦労様なことだ。

「ああ、そちらはプリンスのボンドではないんですから、もうプリンセスではないんですっけ?」
「いいや、彼は変わらず俺のボンドだ」

 ウォーダンが答える。そしてフェリックスの足下にいる、チィオのフリッパーとロンユンの角、両方の左に金色の輪が輝いていることに、他の生徒達も気付いてざわめく。
 いつのまにか自分達の回りに生徒達の輪が出てきていた。そして、そこにまた「これはこれはプリンス“暴走”からようやく回復されましたようで」と無神経に大きな声。
 スコルだ。彼は口の片端をあげた挑発的な表情でウォーダンを見て。

「先日の競技会はまったく残念でしたね。“暴走”のせいであなたは得点無しの最下位。俺は一位でしたよ」

 “一位”をやたら強調してスコルがいう。「それはおめでとう」というウォーダンはいつもの王子様の微笑を口許にたたえた“無表情”だ。
 そんなウォーダンの反応を面白もないとスコルはギロリと一瞬ねめつけて「しかし、あ~本当に残念だ!」と大仰に肩をすくめる。

「プリンスが最下位なんて前代未聞だ。さらには暴走して他のセンチネルまで巻き込んだなんてね。幸いにも大きな怪我を負った者も、死人も出ませんでしたが」

 そういう口ぶりは、逆にそれがいなくて残念だというように聞こえる。「とはいえプリンスが最下位なんてね」と彼はくり返す。

「しかもよやうく選ばれたプリンセスは、灰色の雛を抱えた“元落ちこぼれ”。
 そもそも競技会で暴走したあげくに最下位なんて“不名誉”をいただいたセンチネルとガイドが、未だプリンスとプリンセスであることを俺は疑問に思いますがね」
「よしなよ、スコル。またプリンスとプリンセスに対する不敬だととられて、査定に響くよ」

 そうネラがいうけれど、とてもスコルを止めているとは思えない。

「プリンスはこの程度のちっぽけな言いがかりに、目くじらなんて立てたりしないよ」

 フェリックスが言い返すと思わなかったのか、ネラの意地悪な笑みが崩れて不快な表情となり、直情型のスコルが「ちっぽけだと!」と声をあげる。
 そこにあごに手をあてて少し考えていたウォーダンが「なるほど君達の言い分はよくわかった」とうなずく。

「たしかに俺は先の競技会で暴走し、他のセンチネルの危険を及ぼした。それは認める」
「認められるのですか? では、このプリンスとしてこの“責任”はどうされると?」
「もちろん、責任はとろう」
「どのように?」

 罠にかかった! とばかりに喜色満面でスコルがたずねる。フェリックスは口を開かず、黙ってウォーダンの横顔を見つめていた。ボンドとして再び繋がった彼の感情はとてもゆったりとしていて、安心できる。
 俺にまかせて……というように。

「今度の大演習で一位を取れなかったら、俺はプリンスの座を降りよう。そして、一位となった者をプリンスとする」

 これには周りを囲んでいた生徒達が大きくどよめいた。ネラが。

「ならばプリンスのボンドである、プリンセスも同時にその座を降りて、一位のガイドにプリンセスをゆずるということですか?」
「プリンスが決めたことならば、僕は同意します」

 フェリックスもまた、ネラを真っ直ぐ見ていった。



   ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇



「やったぞ! やったぞ! プリンスなんてちょっとつついてやればチョロいもんだったな」

 校門での騒動があったその日の夜。ここはシティにある秘密の店。ガヤガヤと騒がしいホール喧騒が扉越しに聞こえる、奥の個室にて。
 スコルが上機嫌で酒をあおっていた。高いシャンパンをグラスにも注がすにラッパ呑みで「祝杯だ!」と叫んで。
 掴んだ酒瓶の反対側の手には煙草。十八の学生にはどちらも禁じられたものだ。

「それも君が一位にならなければ、プリンスにはなれないんだけど?」
「なにいってるんだ。俺が一位になるに決まってるだろう?」

 同じソファーに座ってスコルがネラの肩を抱き寄せそうとするのに、彼が連れなく振り払う。




しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

処理中です...