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【14】プリンスの賭け その4
しおりを挟む「前回の大演習ではプリンスが一位だったし、競技会だってプリンスが“たまたま”暴走しなければ、スコル、君は進路妨害で得点をマイナスされて、結局二位だった」
「……なにがいいたいんだよ」
「今度の大演習では確実に一位をとってもらわなきゃいけない。それもあのプリンスを完膚なきまでに引き離してね。
ついでにあの落ちこぼれのフェリックスも学園から追い出してやる」
「どうすりゃいいんだよ?」
いまさらになってウォーダンに確実に勝てるのか不安げな顔で聞いてくるスコルに、ネラが「自分で考えられないの?」とあきれたようにため息をつく。
「わかんねぇから聞いてるんだろう!」
「“戦闘薬”を使うよ」
「あの薬は一度飲んだだろう? それで俺もお前もアニマルが幻想種に進化出来たんだ」
「だから、さらに強化するんだよ。いつものどおり前もって“情報”は手に入れているし、今度こそ確実に一位をとってよね」
「もちろんだ。これで俺達がプリンスとプリンセスになる。学園は俺達のものだ!」
スコルは高笑いして、シャンパンの瓶に口をつけた。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
同じ夜、プリンスの塔。
いつもの卵型の図書室には、ウォーダンとフェリックスの他に、ハートリーとメディの姿があった。
二人の報告でウォーダンが暴走した“原因”がわかった。
今は違法となっている対センチネル用の幻覚剤だというのだ。その効果は過去のトラウマの記憶の呼び戻しやフラッシュバッグ。大戦時に使われて多くのセンチネルがこれによって暴走し、ガイドもそれに引きずられて精神崩壊したという。
戦闘薬とともに禁止になった違法薬物だ。
センチネルとガイドの能力をあげる戦闘薬。こちらも禁止になったのは、大量摂取によって心身に異常を来す者が続出したからだ。なかには人として形も保てない異形となった……なんて恐ろしい話もある。
いずれも数百年前の大戦時の話で、今はその製法さえ、学園の地下の禁書庫のみに、厳重に封印されている。もちろん大戦後にすべての薬は処分されたし、新たな製造も重犯罪とされている。
どこから手にいれたのか? と言いたいけれど、しかしスコルがウォーダンにそれを使ったという証拠は結局なかった。ネラがそのような薬品を手に入れたという痕跡も。
「しかし、ずいぶん大胆な賭けに出ましたね」
「一位のものにプリンスとプリンセスの座を譲られるなど、本気ですか?」
ハートリーとメディの問いにウォーダンは「もちろん一位は、俺とフェリがとる」と返した。同じソファーに座るフェリックスを見る。フェリックスもウォーダンを見てうなずいて。
「うん、ウォーダンが負けるわけがないって、僕は信じているから」
「ああ、俺もフェリを頼りにしてる」
見つめ合う二人にこほんとハートリーが咳払いをする。メディが「お熱いですね」というのにフェリックスは頬を染める。「それでですが」とハートリーが口を開いた。
「では、あの二人の“情報源”に関してはプリンスのご指示通り、そのまま“泳がせる”ということで」
「ああ、彼らの捕縛に関しても、演習が始まってからでいい」
“情報源”については、先ほど二人から報告をうけた。スコルとネラが、このところの不審な事件にかかわったという証拠はない。しかし、二人の周辺を調査したところ、色々と出てきたのだ。
きっかけはもちろん、ウォーダンが暴走した先の演習だけれど。
あの二人はうまくやったと思っているのだろうが、逆にいうなら“うまくやりすぎた”。
「今回の演習でも当然彼らは“情報源”から情報を得るだろうな」
「では演習の内容を変えますか? 当日の朝でも変更は可能ですが」
そう訊ねるハートリーにウォーダンは少し考えてから「そうだな」と口を開く。その内容にフェリツクスは大きく目を見開いた。
メディが「それは面白い」と口許をゆがめる。
「最後の最後で“突き落とされる”なんて、プリンスもお人が悪い」
「彼らにはせいぜい直前まで、自分達の勝利を確信して夢を見てもらいたいからな」
「もくろみが破れたときに、人間はボロが出るものだ」とウォーダンは続ける。
「あ、もちろん“最終試験”の内容は僕達には知らせないでよ」
フェリックスは口を開く。
「どんな内容か知ってたら“ズル”してる彼らと同じになっちゃうでしょう?」
「そうだな。俺達は俺達の力を合わせて“正々堂々”と突破するのみだ」
ウォーダンの言葉にフェリックスは笑顔で「うん」と答えた。
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