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しおりを挟む「────へえ」
兄が面白そうに口角をあげ、アルヴァトランを横目で見ていた。
リサリスティは首を傾げた。
「なにか面白いことでも?」
「いいや、この距離で聞き取れるなんてなと思って、さ。いやぁ、リサを想う気持ちなら誰にも負けないと思っていたのだけど、上には上がいるものだね」
「何の話ですか?」
「じゃあ……もうちょっとだけ焚きつけておくか」
「だから何の話────」
兄の顔がぐっと近づいてくる。
リサリスティと同じく黒髪で青宝玉の瞳を持つ兄は、妹のリサリスティから見てもかなりの美形だ。
そんな兄のご尊顔が、鼻と鼻がくっつきそうな距離にある。兄の人差し指が、リサリスティの唇に押し当てられた。
「嫉妬は時に彫刻の男を狼に変えるという話だよ、可愛い俺のお姫様」
にっこにこの笑顔で離れていく兄を見て。
「だ・か・ら、何の話ですの!?」
「────リサ、ちょっといいか」
「は、はい!?」
もう一度兄を追求しようとしたところで、耳心地の良い声がすぐそばで聞こえた。
アルヴァトランだ。
振り返ってみれば、卒倒しそうなほどの美貌が、リサリスティの眼前にある。
(近い……っ!!)
近すぎて、呼吸を止めてしまう。
毎日歯磨きはしているから匂いとか大丈夫だと思うけれども、念には念だ。
「リサ、話がある」
(話……?)
話とはなんだろう。
「サフィール卿、リサをお借りしても?」
「どうぞ。手荒い真似をしないのなら、一日くらい貸してあげますよ」
「……。感謝する」
(手荒い真似? 貸す??? え、そんな物品みたいに言われても)
リサリスティが疑問に思う傍で、兄はにやりと口角をあげていた。
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