【R18】仏頂面次期公爵様を見つめるのは幼馴染の特権です

べらる

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「────へえ」

 兄が面白そうに口角をあげ、アルヴァトランを横目で見ていた。
 リサリスティは首を傾げた。

「なにか面白いことでも?」
「いいや、この距離で聞き取れるなんてなと思って、さ。いやぁ、リサを想う気持ちなら誰にも負けないと思っていたのだけど、上には上がいるものだね」
「何の話ですか?」
「じゃあ……もうちょっとだけ焚きつけておくか」
「だから何の話────」

 兄の顔がぐっと近づいてくる。
 リサリスティと同じく黒髪で青宝玉サファイアの瞳を持つ兄は、妹のリサリスティから見てもかなりの美形だ。
そんな兄のご尊顔が、鼻と鼻がくっつきそうな距離にある。兄の人差し指が、リサリスティの唇に押し当てられた。


「嫉妬は時に彫刻の男を狼に変えるという話だよ、可愛い俺のお姫様マイ・レディ


 にっこにこの笑顔で離れていく兄を見て。

「だ・か・ら、何の話ですの!?」
「────リサ、ちょっといいか」
「は、はい!?」

 もう一度兄を追求しようとしたところで、耳心地の良い声がすぐそばで聞こえた。

 アルヴァトランだ。
 振り返ってみれば、卒倒しそうなほどの美貌が、リサリスティの眼前にある。

(近い……っ!!)

 近すぎて、呼吸を止めてしまう。
 毎日歯磨きはしているから匂いとか大丈夫だと思うけれども、念には念だ。

「リサ、話がある」

(話……?)

 話とはなんだろう。

「サフィール卿、リサをお借りしても?」
「どうぞ。手荒い真似をしないのなら、一日くらい貸してあげますよ」
「……。感謝する」

(手荒い真似? 貸す??? え、そんな物品みたいに言われても)

 リサリスティが疑問に思う傍で、サフィールはにやりと口角をあげていた。


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