【R18】仏頂面次期公爵様を見つめるのは幼馴染の特権です

べらる

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「あぁ……今日もなんてかっこいいのかしら!」

 煌びやかな夜会。
 円柱の影から、リサリスティ・ファルベ・ラティアーノは、青宝玉サファイアの瞳を細めて、ほぅ……っと、小さなため息をついた。

「かっこいい。最高。眼福よ眼福! いつにもまして素敵だわっ!!」

 きゃっきゃするリサリスティの視線の先──
 大勢の紳士淑女に囲まれているのに、ひときわ存在感を放つ青年の姿がある。

 アルヴァトラン・フォン・ロンディニア。
 名門ロンディニア公爵家のご嫡男であり、年齢は21歳。

 髪は艶のある淡い金色オフ・ゴールドで、切れ長な深緑の瞳は理知的ながら、冷たさは感じさせない色合い。
 すっと通った鼻梁に、整えられたかたちのよい眉で。
 背は高く、細身ながらも引き締まった体つきで、彼が日々剣術の鍛錬を欠いていない証拠である。

「あぁ……いま一瞬だけ微笑わらったわ! 仏頂面を常とするアルヴァトラン様でこれはレアよレア!! お兄様もそう思いません!?!?」
「幼馴染だろう? 取り巻き令嬢みたいに陰からこそこそファンアピールしてないで、直接話しかけに行けばいいじゃないか」
「た、確かにそうですが」
「我が妹らしいよ。好きな人を遠くから見つめることしか出来ないだなんて」

 隣で肩をすくめてみせたのは、リサリスティの実の兄だ。
 リサリスティは「だって……」とゴニョゴニョする。

 兄の言う通り、リサリスティにとってアルヴァトランは『初恋の人』であり『幼馴染』である。ラティアーノ伯爵リサリスティの父ロンディニア公爵アルヴァトランの父が学院時代の同級生でとりわけ仲が良く、その流れでロンディニア家とは家族ぐるみの付き合いがある。それこそリサリスティが5歳の頃から、4つ年上のアルヴァトランと交流していた。

 彼は感情を表に出すタイプではない。
 無口なわけではなく、ただ必要最低限のことしか話さないだけ。
 ゆえに冷静沈着。

「あんまりしつこく話しかけて、幼馴染感を押し付けて婚約者の座を狙ってるしたたかで図太い女だって思われて、嫌われたくないんですの」
「はぁ……。まったく、どこにいるんだよ、そんな奴。俺の可愛い妹リサを嫌ったら、その瞬間に剣の餌食だ」
シスコンお兄様とアルヴァトラン様を一緒にしないでくださいまし」

 剣の達人であり、リサリスティにでろっでろに甘いシスコン属性を持つ兄にジト目を返す。
 兄は続けた。

「俺はお兄様だよ? この愛情を無下にするのかい? 俺はこんなにリサを想っているというのに」
「はいはい、わたくしもお兄様を想っておりますし愛しておりますわそれなりに」
「なんだいそれ。最後の一言は余計だろうに」
「お兄様は早く────」

 妹離れしてくださいませ、と続けようとしたところで。
 リサリスティは、視線を感じた。

(気のせいかしら。いま、アルヴァトラン様にじっと見られていたような……)

 もうアルヴァトランは、別の紳士と談笑している。
 
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