6 / 28
6 天の川
しおりを挟む
ある日、その小鳥が死んだ。
ほんの軽い風邪をこじらせ、次の朝には鳥かごの端で小さく横たわっていた。
朝、小鳥のかごに被せた布を取ったラオンが、それを見つけた。
いつも止まり木に居る筈の小鳥が、何故下の端でうずくまっているのか、最初ラオンは判らななかった。
小鳥の名前を呼んでみた。おはよう、と声をかけてみても、小鳥は動かなかった。
かごの中に手を入れ、ラオンは小鳥の体に触れてみた。
いつもと同じ、羽根の感触。けれど、ほんの少し冷たい。ラオンが手のひらを差し出すと、いつも自分からちょこんと飛び乗ってくるのに。
ラオンはぐったりと動かなくなった小鳥を、そっと手のひらに乗せた。その途端、小さな体がだらりとあお向けになった。
硬直したまま、わずかに開いたくちばし、うっすらと閉じたまぶたの隙間から、乾ききった瞳が覗いていた。細い足が、枯れた小枝のように垂れ下がり、柔らかな羽根が、しっとりと小さな体に張りついていた。
小鳥はもう、ここには居ないのだとラオンは気づいた。
ぽろぽろと、ラオンの大きな両眼から涙が零れた。
ポタポタ、ポタポタ。
大粒の雨のように。
ラオンは大声で泣きじゃくった。
その声に驚いて駆けつけたジイやが困り果ててしまう程に、いつまでも泣き続けた。
その日の夕食に、チキンステーキが出た。
ラオンはナイフとフォークを持ったまま、それを口に運ぶ事ができなかった。ラオンの大好きなメニューのひとつなのに。
料理長が気を落としている姫の為にと、腕をふるって用意してくれたのだろう。が、ほんの少し配慮が足りなかったようだ。
昨日までは喜んで口にしていた料理だけど、死んでしまった小鳥の事を考えると、どうしても食べる事ができなかった。
この皿の上に乗せられた鳥も、ここに運ばれてくる前はきっと元気に生きていた。今朝死んでしまった、大好きな小鳥のように。
そう思うと、また涙が溢れてきた。
ラオンに食べられる為に命を奪われてしまった鳥の事を思うと、可哀想で罪悪感でいっぱいになった。今まで、そんな事考えてもみなかったのに。
急に、命というものの重さを知った。
辛くて苦しくて、心が弾けてしまいそうだった。
うつ向いたまま、ただ涙を流しているラオンの頭を、母である王妃ミアムが優しく撫でた。
「ラオン、あなたがちゃんと食べてあげないと、この鳥さんの命は無駄になってしまうでしょう?」
ミアムは抱き締めるような声で、ラオンを諭した。
「この鳥さんは、ラオンがきちんと綺麗に食べてあげなきゃ。そうすれば、ラオンの体の仲間になって、これからもずっとラオンと一緒に生きていけるのよ」
「……僕と、一緒に……?」
見上げたラオンに、母は微笑んでうなずいた。
「鳥さんだけじゃないのよ。この野菜も、お米の粒も、全部の命がラオンに手渡されて、ラオンと一緒に生きていくの」
一緒に生きていく。
すぐにラオンが理解するには、少し難しい話だった。けれど、大切な意味が込められている事ははっきりと判った。
「だから、ちゃんと食べようね、ラオン」
ラオンは桜色の頬に涙を飾ったまま、小さくうなずいた。
夕食後、ラオンは父である王アルスオンと、城のバルコニーから星を見上げた。
城内や街の光が明るすぎて、ここからではあまり多くの星を見る事はできない。それでも晴れていれば、大きな星やわずかな星座を見つける事はできる。
ラオンは父と一緒に星を数えた。父は星の筋を辿り、天の川を教えてくれた。
「ラオン、天の川には、数え切れないくらいたくさんの星の命が集まっているのだよ」
「……星の命?」
「そうだよ。星も、ラオンと同じように生きている。生まれてきて、そして死んでしまったら、あの場所に還っていくんだよ」
星も生きている。
ラオンは必死に眼を凝らしながら、夜空に散らばる星を探した。
父上、母上、ジイやたち、死んでしまった小鳥、そしてラオン。
同じように命を与えられた星。
「死んでしまった生き物の命も、あの天の川の星の処へ還っていくんだよ」
ラオンは、背の高い父の横顔を見上げた。
「じゃあ、僕の小鳥も、あの星の中に居るの?」
「そうだよ」
ラオンの瞳が、星を宿したように煌めいた。
「じゃあ、いつかあの場所に行ったら、もう一度会える?」
「会えるよ。小鳥さんはいつだって、あの星の中からラオンを見ていてくれるからね」
ラオンは、もう淋しくなかった。
いつか必ず、あの天の川に会いに行こうと決めた。
大好きな小鳥に会いに行く。
ラオンは、そう決めた。
「明日、行くのか?」
しばしの沈黙の後、ソモルが訊いた。
なんだかこの小さな姫と別れるのが、酷く名残惜しい気がした。
「うん、明日の朝、この星を発とうと思う。探し物が一体何処にあるのか見当もつかないけど、絶対に見つけ出すんだ」
ラオンの見詰める先には、広大な銀河が幾重にも重なり、瞬いていた。
途方もなく限りない宇宙。
無謀な程のラオンの奔放さが、今のソモルには酷く羨ましかった。
「一緒には行ってやれないけど、ラオンならきっと大丈夫だな」
ほろ苦い笑みを浮かべて、ソモルは云った。
ラオンが、強い眼差しでうなずいた。
今宵限りで、お別れだった。もうきっと、会う事もないのだろう。
けれど、ずっと友達なんだ。
この広い宇宙の片隅に、大切な友達が居る。たとえもう会う事ができなくても、それだけで嬉しかった。
「宇宙ステーションまで案内してやるよ。あのジイやたち一行に見つかったらヤバいんだろ?」
ラオンが悪戯っぽくへへっと笑う。
「そろそろ眠らなきゃいけない頃だけど、もうちょっとだけ星を眺めてから。本当はね、一晩中でも眺めていたい気分なんだ」
ラオンは記憶に焼きつけるように、夜空に広がる銀河をもう一度見上げた。
忘れない、このマーズの空を。
その日の星空は、ラオンの希望満ちた心を映し描いたようなまたとない満天の煌めきだった。
ほんの軽い風邪をこじらせ、次の朝には鳥かごの端で小さく横たわっていた。
朝、小鳥のかごに被せた布を取ったラオンが、それを見つけた。
いつも止まり木に居る筈の小鳥が、何故下の端でうずくまっているのか、最初ラオンは判らななかった。
小鳥の名前を呼んでみた。おはよう、と声をかけてみても、小鳥は動かなかった。
かごの中に手を入れ、ラオンは小鳥の体に触れてみた。
いつもと同じ、羽根の感触。けれど、ほんの少し冷たい。ラオンが手のひらを差し出すと、いつも自分からちょこんと飛び乗ってくるのに。
ラオンはぐったりと動かなくなった小鳥を、そっと手のひらに乗せた。その途端、小さな体がだらりとあお向けになった。
硬直したまま、わずかに開いたくちばし、うっすらと閉じたまぶたの隙間から、乾ききった瞳が覗いていた。細い足が、枯れた小枝のように垂れ下がり、柔らかな羽根が、しっとりと小さな体に張りついていた。
小鳥はもう、ここには居ないのだとラオンは気づいた。
ぽろぽろと、ラオンの大きな両眼から涙が零れた。
ポタポタ、ポタポタ。
大粒の雨のように。
ラオンは大声で泣きじゃくった。
その声に驚いて駆けつけたジイやが困り果ててしまう程に、いつまでも泣き続けた。
その日の夕食に、チキンステーキが出た。
ラオンはナイフとフォークを持ったまま、それを口に運ぶ事ができなかった。ラオンの大好きなメニューのひとつなのに。
料理長が気を落としている姫の為にと、腕をふるって用意してくれたのだろう。が、ほんの少し配慮が足りなかったようだ。
昨日までは喜んで口にしていた料理だけど、死んでしまった小鳥の事を考えると、どうしても食べる事ができなかった。
この皿の上に乗せられた鳥も、ここに運ばれてくる前はきっと元気に生きていた。今朝死んでしまった、大好きな小鳥のように。
そう思うと、また涙が溢れてきた。
ラオンに食べられる為に命を奪われてしまった鳥の事を思うと、可哀想で罪悪感でいっぱいになった。今まで、そんな事考えてもみなかったのに。
急に、命というものの重さを知った。
辛くて苦しくて、心が弾けてしまいそうだった。
うつ向いたまま、ただ涙を流しているラオンの頭を、母である王妃ミアムが優しく撫でた。
「ラオン、あなたがちゃんと食べてあげないと、この鳥さんの命は無駄になってしまうでしょう?」
ミアムは抱き締めるような声で、ラオンを諭した。
「この鳥さんは、ラオンがきちんと綺麗に食べてあげなきゃ。そうすれば、ラオンの体の仲間になって、これからもずっとラオンと一緒に生きていけるのよ」
「……僕と、一緒に……?」
見上げたラオンに、母は微笑んでうなずいた。
「鳥さんだけじゃないのよ。この野菜も、お米の粒も、全部の命がラオンに手渡されて、ラオンと一緒に生きていくの」
一緒に生きていく。
すぐにラオンが理解するには、少し難しい話だった。けれど、大切な意味が込められている事ははっきりと判った。
「だから、ちゃんと食べようね、ラオン」
ラオンは桜色の頬に涙を飾ったまま、小さくうなずいた。
夕食後、ラオンは父である王アルスオンと、城のバルコニーから星を見上げた。
城内や街の光が明るすぎて、ここからではあまり多くの星を見る事はできない。それでも晴れていれば、大きな星やわずかな星座を見つける事はできる。
ラオンは父と一緒に星を数えた。父は星の筋を辿り、天の川を教えてくれた。
「ラオン、天の川には、数え切れないくらいたくさんの星の命が集まっているのだよ」
「……星の命?」
「そうだよ。星も、ラオンと同じように生きている。生まれてきて、そして死んでしまったら、あの場所に還っていくんだよ」
星も生きている。
ラオンは必死に眼を凝らしながら、夜空に散らばる星を探した。
父上、母上、ジイやたち、死んでしまった小鳥、そしてラオン。
同じように命を与えられた星。
「死んでしまった生き物の命も、あの天の川の星の処へ還っていくんだよ」
ラオンは、背の高い父の横顔を見上げた。
「じゃあ、僕の小鳥も、あの星の中に居るの?」
「そうだよ」
ラオンの瞳が、星を宿したように煌めいた。
「じゃあ、いつかあの場所に行ったら、もう一度会える?」
「会えるよ。小鳥さんはいつだって、あの星の中からラオンを見ていてくれるからね」
ラオンは、もう淋しくなかった。
いつか必ず、あの天の川に会いに行こうと決めた。
大好きな小鳥に会いに行く。
ラオンは、そう決めた。
「明日、行くのか?」
しばしの沈黙の後、ソモルが訊いた。
なんだかこの小さな姫と別れるのが、酷く名残惜しい気がした。
「うん、明日の朝、この星を発とうと思う。探し物が一体何処にあるのか見当もつかないけど、絶対に見つけ出すんだ」
ラオンの見詰める先には、広大な銀河が幾重にも重なり、瞬いていた。
途方もなく限りない宇宙。
無謀な程のラオンの奔放さが、今のソモルには酷く羨ましかった。
「一緒には行ってやれないけど、ラオンならきっと大丈夫だな」
ほろ苦い笑みを浮かべて、ソモルは云った。
ラオンが、強い眼差しでうなずいた。
今宵限りで、お別れだった。もうきっと、会う事もないのだろう。
けれど、ずっと友達なんだ。
この広い宇宙の片隅に、大切な友達が居る。たとえもう会う事ができなくても、それだけで嬉しかった。
「宇宙ステーションまで案内してやるよ。あのジイやたち一行に見つかったらヤバいんだろ?」
ラオンが悪戯っぽくへへっと笑う。
「そろそろ眠らなきゃいけない頃だけど、もうちょっとだけ星を眺めてから。本当はね、一晩中でも眺めていたい気分なんだ」
ラオンは記憶に焼きつけるように、夜空に広がる銀河をもう一度見上げた。
忘れない、このマーズの空を。
その日の星空は、ラオンの希望満ちた心を映し描いたようなまたとない満天の煌めきだった。
0
あなたにおすすめの小説
左左左右右左左 ~いらないモノ、売ります~
菱沼あゆ
児童書・童話
菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。
『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。
旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』
大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。
#アタシってば魔王の娘なんだけどぶっちゃけ勇者と仲良くなりたいから城を抜け出して仲間になってみようと思う
釈 余白(しやく)
児童書・童話
ハアーイハロハロー。アタシの名前はヴーゲンクリャナ・オオカマって言ぅの。てゆうか長すぎでみんなからはヴーケって呼ばれてる『普通』の女の子だょ。
最近の悩みはパパが自分の跡継ぎにするって言って修行とか勉強とかを押し付けて厳しいことカナ。てゆうかマジウザすぎてぶっちゃけやってらンない。
てゆうかそんな毎日に飽きてるンだけどタイミングよく勇者のハルトウって子に会ったのょ。思わずアタシってば囚われの身なのってウソついたら信じちゃったわけ。とりまそんなン秒でついてくよね。
てゆうか勇者一行の旅ってばビックリばっか。外の世界ってスッゴク華やかでなんでもあるしアタシってば大興奮のウキウキ気分で舞い上がっちゃった。ぶっちゃけハルトウもかわいくて優しぃし初めての旅が人生の終着点へ向かってるカモ? てゆうかアタシってばなに言っちゃってンだろね。
デモ絶対に知られちゃいけないヒミツがあるの。てゆうかアタシのパパって魔王ってヤツだし人間とは戦争バッカしてるし? てゆうか当然アタシも魔人だからバレたら秒でヤラレちゃうかもしンないみたいな?
てゆうか騙してンのは悪いと思ってるょ? でも簡単にバラすわけにもいかなくて新たな悩みが増えちゃった。これってぶっちゃけ葛藤? てゆうかどしたらいンだろね☆ミ
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
アリアさんの幽閉教室
柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。
「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」
招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。
招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。
『恋の以心伝心ゲーム』
私たちならこんなの楽勝!
夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。
アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。
心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……??
『呪いの人形』
この人形、何度捨てても戻ってくる
体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。
人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。
陽菜にずっと付き纏う理由とは――。
『恐怖の鬼ごっこ』
アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。
突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。
仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――?
『招かれざる人』
新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。
アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。
強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。
しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。
ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。
最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
パンティージャムジャムおじさん
KOU/Vami
児童書・童話
夜の街に、歌いながら歩く奇妙なおじさんが現れる。
口癖は「パラダイス~☆♪♡」――名乗る名は「パンティージャムジャムおじさん」。
子供たちは笑いながら彼の後についていき、歌を真似し、踊り、列は少しずつ長くなる。
そして翌朝、街は初めて気づく。昨夜の歌が、ただの遊びではなかったことに。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる