ブラコン姉妹は、天使だろうか?【ブラてん】

三城 谷

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ブラコン姉妹は、天使だろうか?(5)

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 「ふわぁぁ~……ねっむ」

 学校の廊下を歩きながら、伸びをしてそんな事を呟く幸一。呆れるような青い空が見える外を眺めて、彼はボーっとした様子で歩を進めている。

 「あ、兄者発見!兄者~~、とぉっ!!」

 そんな眠そうな様子で廊下を歩く彼を見つけ、その背中を狙って美羽が突進を仕掛ける。彼女的にはハグなのだが、身体能力も優れている彼女の走力では微かに威力が上乗せされる。その為、幸一の背中には、速度+彼女の体重分の重さでタックルされるのである。

 「ぐおっ!?」
 「へっへぇ~、兄者捕獲完了♪」
 「み、美羽か。すてみタックルという技をいつ覚えたんだ、お前……」
 「すてみタックルは反動を受けちゃうから、美羽のはすてみタックルじゃないよ?」
 「じゃあ何?」
 「フフン♪兄者に美羽の想いを存分に込めた一撃、その名も――『素敵タックル』なのだ!」

 ニコッと笑顔を浮かべながら、フフーンと鼻を鳴らしてドヤ顔をする美羽。そんな彼女を幸一は、溜息混じりに引っ付いた彼女を離れさせた。ここにタックルが無ければ、本当に素敵だったと幸一は思うのである。

 「はいはい、素敵だ素敵。でも美羽、廊下で走ったら危ないだろ?兄ちゃんだから良かったものの、これが赤の他人だったらどうするんだ?」
 「ん?そもそも兄者にしか、こんな事しないよ?」
 「無邪気にそう言ってくれるのは嬉しいんだけど、怪我したら危ないから。次は気を付けような?」
 「……はーい」

 そう言って幸一は、ムゥッと納得のいかない表情を浮かべる彼女の頭を撫でる。その撫でた場面を見ていた人影が、幸一の背後から近寄って言うのだった。

 「椎名崎幸一、下級生を調教するっと。うん、これは良い情報が」
 「はい、そこ~、ちょっと待とうか。何をしているのかな?お前は」
 「あぁ、次はボクを調教するという事ですね。なかなかの守備範囲の広さ、先輩には感服致します」
 「何が守備範囲だ。何でもかんでもスクープにされちゃ、俺の居場所が無くなるだろうが!」

 メモ帳に書いた所を取り押さえ、幸一は小柄で片目の隠れた少女を猫のように持ち上げる。そのまま連行するように歩くのだが、その光景を不思議そうに眺める美羽だった。

 「えっと、兄者のお友達?」
 「冗談は止めてくれ。俺はこんな変態新聞部が友人とは認めたくない」
 「へ、変態新聞部?」

 首を傾げてそう呟いた美羽の言葉を聞き、持ち上げられている少女はニヤッと笑みを浮かべる。

 「お答えしましょう、無垢なそこの娘さん」
 「何キャラだよ」
 「先輩は黙っていて下さい。ゴホン……ボクはこの学園で『新聞部』をしている者です。あぁ、これは名刺ですが、どうぞ捨てるなり焼くなりご自由に」
 「……」

 受け取った名刺を眺めて、美羽はまたもや首を傾げて口を開いた。

 「小鳥ことり、遊び……ゆう?」
 「小鳥遊たかなしかすか、安心しろ美羽。初対面でそれを読めるのは、こいつと同類の人間だけだ」
 「そっかぁ!ちなみに兄者はどうだったの?」
 「…………読めなか」
 「一発で読めましたね。先輩は」
 「ぐっ、お前は黙ってろよ」
 
 読めなかったと言いたかった幸一を遮るように、彼女が本当の事をさらっと言った。彼は自分の言葉を思い出しながら、美羽に言い訳のように言葉を並べ始めた。

 「い、いや、これは違うんだ。そ、そう!たまたま、本当にたまたま名刺を渡された時に辞書を引いていてな?本当に、偶然にも名前が読めたんだよ!な、なぁ小鳥遊っ!」
 「普段から辞書を持ち歩いているのですか?先輩は。なんともまぁ、シュールな光景ですねぇ。スクープにもなりませんね。もう少しまともな嘘を吐きましょうよ」
 「ふうん、兄者はウソを吐いたんだ。ふぅ~ん」

 そう聞いた途端、美羽はジトーッとした目で幸一を見る。その目には哀れみのような空気を纏っていた。その目に耐え切れなかった幸一は、冷や汗をかきながら項垂うなだれるようにして言うのだった。

 「……分かった。白状する、普通に読めた。読めたんだから、仕方ないだろー?」
 「うわー、格好の悪いお兄ちゃんですねぇ。良いんですか、神楽坂美羽さん。こんな人が兄で」
 
 そんな事を言いながら、フッフと笑う幽の言葉と同時にチャイムが校内で鳴り響く。それを合図にして、彼女は幸一たちの前から鼻歌をしながら立ち去った。

 「ん?……ねぇねぇ、兄者?」
 「何だ?我が妹の美羽よ」
 「美羽、あの人に自己紹介したっけ?」
 「……してないな。しなくて良かったのか?」
 「ううん、そうじゃなくてね?あの人、美羽の名前をフルネームで呼んでた。教えてないのに」
 
 その言葉を聞いた途端、幸一と美羽は顔を見合わせた。やがて冷や汗をかいて、同時に去って行った彼女の方を見て言うのだった――。

 「新聞部やべー!」
 「新聞部怖いのだっ!」
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