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ブラコン姉妹は、天使だろうか?(7)
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「…………」
担任教師が黒板を叩くチョーク音を聞き流しながら、他のクラスの体育の授業を眺める。窓の外からは気持ちの良い風が頬を撫で、無理矢理に教科書のページ数が進んで行く。
「…………あ」
眺めていた体育の授業中、その中の誰かが派手に転んだのを見つけて小さく声が漏れる。その転んだ生徒の周囲に集まる人影の表情は様々で、心配している者も居れば、転んだ事が面白かったのか笑っている者も居る。
『こら、椎名崎。習った事があるからって、余所見をするな。ちゃんと俺の授業も聞いていけ』
「先生の授業は分かりやすくて良いとは思いますけど、たまにワンパターンで飽きてくるんですよね」
『お前なぁ、もう少し真面目に受けてもいいんじゃないか?前はもっと……』
「俺は真面目になった事なんてありませんよ。このクラス含めて、全校生徒が思ってるように卑怯者なので」
『んぅ~……ったく、相変わらずだなぁ。授業を続けるぞー』
「…………」
そう言って再びチューク音を響かせる中、クラスの誰かがヒソヒソと何かを話している。聞こえてきた内容は、『出たよ、卑怯者の癖に』『何であんなに偉そうなの?』なとといった具合である。だが同時に眠気に襲われ、それからの記憶は遮断される事になった――。
「――ふわぁぁ~、おお、昼休みか。いち、に、二つの授業を睡眠学習。それとも怒られないとは、何ともまぁ……」
怒られないからこそ、周囲の者達は声を揃えて『卑怯者』と言うのである。こちらはそのつもりも無いのだが、噂話に尾ひれが付くのは良くあることだ。それがエスカレートした所為で、俺の居場所は三箇所しか無いのである。
「さて、体育館裏と屋上と旧校舎……今日はどこに行くとするかな」
俺はうーんと悩みながら、廊下を一人で進んでいく。いつもなら屋上で昼寝でもするのだが、体育館裏に行くと妹たちのいる中等部の様子が分かる。だがそれをすれば、次はあらぬ噂が広まる事は間違いないだろう。
「旧校舎で良いか。普段人が居ない立ち入り禁止区域……心が躍るねぇ」
「椎名崎幸一氏、立ち入り禁止区域に自殺。校内新聞で何を狙ってるんですか?先輩」
「一ミリも自殺する気なんかねぇよ!何を勝手に殺してくれてんの!?お前、実は俺に恨みでもあるのか?」
「ありませんよ?多分……」
目を逸らしながら、多分と言わないで欲しいものだ。というか、流石は新聞部の行動派である。何処から現れたのか、全く分からなかった。神出鬼没過ぎて、俺の脳内にはロールプレイングゲームのエンカウント音が聞こえてしまった。さしずめこうかな?――野生の小鳥遊幽が現れた。
「それで?俺に何か用事か?言っておくが、くだらない質問コーナーはお断りだぞ」
「ええー」
「何だよその『うわー、この人。何も言ってないのに。うわー、引くわー』って言いたそうな顔は」
「いえいえ、そんな事は少ししか思ってませんのでご安心を」
「あぁ、少しは思ってるのね。お兄さん、軽くショックだわ。んで?何の用だ?」
俺は再び何の用事かと促すと、困惑した空気を纏わせて苦笑いをしていた。どうやら彼女にとって、対処が難しい事に直面していると悟った。何故なら、彼女は行動派であっても実力派ではない。その意味は彼女が説明してくれるだろう。
「はぁ……」
「あ、先輩。ドコに行くんですか!?まだ話は……」
「ドコて新聞部の部室だよ。たまにはこういう事があっても良い」
「あ、ありがとうございます!お礼はお金で良いですか?」
「それだけは勘弁。変な噂が一つ増えるだけだ」
「あはは~、そうですよねー♪先輩はただの後輩に優しいだけですもんねー」
「お前に優しくした覚えは無ぇ」
「またまた、照れないで下さいよ。先輩♪」
俺の隣でそう言いながら、彼女は笑みを浮かべる。さっきまで困っていた表情の面影は無く、曇りは晴れたような良い笑顔だ。それを見た俺は、自然と口角が上がっている事に自分で気付く事は無かったのであった――。
担任教師が黒板を叩くチョーク音を聞き流しながら、他のクラスの体育の授業を眺める。窓の外からは気持ちの良い風が頬を撫で、無理矢理に教科書のページ数が進んで行く。
「…………あ」
眺めていた体育の授業中、その中の誰かが派手に転んだのを見つけて小さく声が漏れる。その転んだ生徒の周囲に集まる人影の表情は様々で、心配している者も居れば、転んだ事が面白かったのか笑っている者も居る。
『こら、椎名崎。習った事があるからって、余所見をするな。ちゃんと俺の授業も聞いていけ』
「先生の授業は分かりやすくて良いとは思いますけど、たまにワンパターンで飽きてくるんですよね」
『お前なぁ、もう少し真面目に受けてもいいんじゃないか?前はもっと……』
「俺は真面目になった事なんてありませんよ。このクラス含めて、全校生徒が思ってるように卑怯者なので」
『んぅ~……ったく、相変わらずだなぁ。授業を続けるぞー』
「…………」
そう言って再びチューク音を響かせる中、クラスの誰かがヒソヒソと何かを話している。聞こえてきた内容は、『出たよ、卑怯者の癖に』『何であんなに偉そうなの?』なとといった具合である。だが同時に眠気に襲われ、それからの記憶は遮断される事になった――。
「――ふわぁぁ~、おお、昼休みか。いち、に、二つの授業を睡眠学習。それとも怒られないとは、何ともまぁ……」
怒られないからこそ、周囲の者達は声を揃えて『卑怯者』と言うのである。こちらはそのつもりも無いのだが、噂話に尾ひれが付くのは良くあることだ。それがエスカレートした所為で、俺の居場所は三箇所しか無いのである。
「さて、体育館裏と屋上と旧校舎……今日はどこに行くとするかな」
俺はうーんと悩みながら、廊下を一人で進んでいく。いつもなら屋上で昼寝でもするのだが、体育館裏に行くと妹たちのいる中等部の様子が分かる。だがそれをすれば、次はあらぬ噂が広まる事は間違いないだろう。
「旧校舎で良いか。普段人が居ない立ち入り禁止区域……心が躍るねぇ」
「椎名崎幸一氏、立ち入り禁止区域に自殺。校内新聞で何を狙ってるんですか?先輩」
「一ミリも自殺する気なんかねぇよ!何を勝手に殺してくれてんの!?お前、実は俺に恨みでもあるのか?」
「ありませんよ?多分……」
目を逸らしながら、多分と言わないで欲しいものだ。というか、流石は新聞部の行動派である。何処から現れたのか、全く分からなかった。神出鬼没過ぎて、俺の脳内にはロールプレイングゲームのエンカウント音が聞こえてしまった。さしずめこうかな?――野生の小鳥遊幽が現れた。
「それで?俺に何か用事か?言っておくが、くだらない質問コーナーはお断りだぞ」
「ええー」
「何だよその『うわー、この人。何も言ってないのに。うわー、引くわー』って言いたそうな顔は」
「いえいえ、そんな事は少ししか思ってませんのでご安心を」
「あぁ、少しは思ってるのね。お兄さん、軽くショックだわ。んで?何の用だ?」
俺は再び何の用事かと促すと、困惑した空気を纏わせて苦笑いをしていた。どうやら彼女にとって、対処が難しい事に直面していると悟った。何故なら、彼女は行動派であっても実力派ではない。その意味は彼女が説明してくれるだろう。
「はぁ……」
「あ、先輩。ドコに行くんですか!?まだ話は……」
「ドコて新聞部の部室だよ。たまにはこういう事があっても良い」
「あ、ありがとうございます!お礼はお金で良いですか?」
「それだけは勘弁。変な噂が一つ増えるだけだ」
「あはは~、そうですよねー♪先輩はただの後輩に優しいだけですもんねー」
「お前に優しくした覚えは無ぇ」
「またまた、照れないで下さいよ。先輩♪」
俺の隣でそう言いながら、彼女は笑みを浮かべる。さっきまで困っていた表情の面影は無く、曇りは晴れたような良い笑顔だ。それを見た俺は、自然と口角が上がっている事に自分で気付く事は無かったのであった――。
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