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美羽ルート
ブラコン姉妹は、天使だろうか? 美羽√(27)
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「美咲、ちょっと良い?」
「何ですか?今は勝負の最中ですよ。馴れ合いはどうかと思いますが……」
「馴れ合いじゃないよ。ちゃんと勝負するけれど、美羽が言いたい事は違う事」
「……聞きましょう。美羽がどんな答えを出したのか、聞きたい気もしますし。けれど、良いんですか?私が勝ってしまった場合、美羽はお兄様の近くに居る事が出来なくなるのですよ?」
教室から違う教室へと行く移動教室の最中、そんな会話が行われていた。美羽の表情は真剣そのもので、朝よりも何かが吹っ切れたような顔付きとなっている。いや、朝だけではない。今までの彼女とは別格であり、彼女自身、神楽坂美羽という人間の本性と云える部分だろう。
「大丈夫。美咲、美羽は絶対に負けない。負けるつもりで勝負するなんて、美羽のプライドが許さない」
「あら、プライドなんてあったのですか?珍しい事を言うのですね、プライドなんて」
「美羽はこれでも運動部からのスカウトが多いし、それなりに運動出来ると思ってるよ。本番に弱い美咲には、勝てる自信しかないよ」
「……大きく出ましたわね、美羽。それでは見せて頂きますわよ?美羽の本気を。これで姉妹喧嘩も最終章ですわね」
「ううん、喧嘩はずっとしたいかな。だから美羽が言いたいのは、勝負の後の話」
「なるほど。ではこの授業中にでも聞きましょう。どうせ実験の授業では、お喋りしても私たちは怒られませんしね。サボりと思われない程度で、その話を聞くとしましょう」
美咲はそう言って、美羽へと視線を送る。その言葉に頷いた美羽は、小さい声でお礼の言葉を言った。その言葉を聞いた美咲は、首を傾げて困惑したような笑みを浮かべたのである。
「ありがと」
「何のお礼ですか、それは。良いから、美羽の提案を聞きますよ。ですが勝負は勝負、どうせ美羽の事ですからお兄様を呼んでいるのでしょう?でしたら、その事も考える時間を……」
「ううん。それは駄目だよ、美咲。美羽はそれを許さないし、するつもりも無い。この気持ちは美咲と同じで真剣な物で、美羽にしかない気持ちだから」
「……そうでしたね。今の言葉は、忘れて下さいな」
「うん」
彼女たちの間には静寂が生まれ、お互いに考えている事は同じだと伝わってくる。それは兄である椎名崎幸一という人物に向けた言葉であり、気持ちであり、彼女たちが抱き続けてきた想いである。そして、その時間はついに訪れたのである――。
「兄者、来てくれたんだ」
「そりゃ大事な妹の話だからな」
「そっか。相変わらず、兄者は優しいね」
「そうでもないさ……」
幸一は肩を竦めながらそう呟くと、美羽の事を真っ直ぐに見た。真っ直ぐに見られた美羽は身体を硬直させ、ビクッと強張った表情となっていた。試合前でも試合中でも、緊張する事の無かった美羽。だが、これまで真っ直ぐに兄と視線を交わした事など数える程度でしか記憶に無いのだ。
「あ、兄者……美羽の話、聞いてくれる?」
か細い声だが、辛うじて耳に入ってくる言葉。いつも元気な美羽からすれば、その声から覇気を感じない弱々しい声だった。だがその頬は赤く染まっていて、その瞳は微かに揺れていた。勇気を振り絞り、自分の気持ちを言葉にする事が難しい。そう感じている美羽なのであった。
「何だ。俺がお前たちの話を聞かない日があったか?」
「……ん~、あった?かも」
「ええー、無ぇと思うぞ」
「いや、あるよ。いつも話半分で聞いてて、いつもは流されちゃうから」
前置きのような言葉。声が震えているのか、気恥ずかしさが勝っているのか。美羽本人でも理解が出来なくなって来ている。だがしかし、考えても仕方が無いと思ったのだろう。
美羽は、深呼吸をしてその言葉を伝えるのだった。
「兄者、美羽は……兄者が好きです」
「……」
「兄者を兄妹としてじゃなくて、一人の男の人として、兄者が好きです」
「……」
「優しい所、臆病な所、たまに冷たい時もあるけど、全部、全部が好きです!」
思い付く言葉を並べて、自分の気持ちを素直に吐き出す意志と決意。その両方は口で言うのは簡単だが、現実はそう簡単にはいかない。だが、どんなに難しい事であっても、不可能と思える事であっても、それを実際に行動に起こすには覚悟が必要になる。
そして今、神楽坂美羽はその覚悟を示した。自分では解決する事が出来ない気持ちを、他人とは共有するのは難しい感情を、自己完結するのではなく、その想いを言葉にして相手に告げる決意を下したのだ。
その決意は並大抵の覚悟ではないだろう。だからこそ、真っ直ぐな言葉は相手の心に刺さるのだ。
「――だから、美羽の……美羽の彼氏になって下さい。美羽を、兄者の彼女にして下さいっ!」
勢い良く頭を下げて、目を瞑って返事を待つ美羽。その身体は硬直はしなくなっているが、まだ微かに震えていた。それは心配や不安が、頭の中でぐるぐると巡り続けているからだ。もし、もしもという言葉が頭の中を巡り続け、美羽は自分自身を不安にさせている。
だがそれはきっと、この世界で最も美しい感情であると思う。喜怒哀楽、それは人間が持つ綺麗でもあり、汚くもある感情だ。そしてその人物の唯一無二のモノであり、誰にも真似できない感情もまた美しいのだろうと思う。
「顔を上げろ、美羽」
「っ……」
美羽の頭の上に乗せられた手は優しく動かされ、目の前に居る幸一の表情も優しい物だ。だが少し不安なのか、美羽はやや緊張している様子だった。だが次の言葉を聞いた美羽は、ぱぁっと輝いた笑顔を浮かべて、幸一に抱き着くのであった――。
「兄者、大好きっ!!」
「何ですか?今は勝負の最中ですよ。馴れ合いはどうかと思いますが……」
「馴れ合いじゃないよ。ちゃんと勝負するけれど、美羽が言いたい事は違う事」
「……聞きましょう。美羽がどんな答えを出したのか、聞きたい気もしますし。けれど、良いんですか?私が勝ってしまった場合、美羽はお兄様の近くに居る事が出来なくなるのですよ?」
教室から違う教室へと行く移動教室の最中、そんな会話が行われていた。美羽の表情は真剣そのもので、朝よりも何かが吹っ切れたような顔付きとなっている。いや、朝だけではない。今までの彼女とは別格であり、彼女自身、神楽坂美羽という人間の本性と云える部分だろう。
「大丈夫。美咲、美羽は絶対に負けない。負けるつもりで勝負するなんて、美羽のプライドが許さない」
「あら、プライドなんてあったのですか?珍しい事を言うのですね、プライドなんて」
「美羽はこれでも運動部からのスカウトが多いし、それなりに運動出来ると思ってるよ。本番に弱い美咲には、勝てる自信しかないよ」
「……大きく出ましたわね、美羽。それでは見せて頂きますわよ?美羽の本気を。これで姉妹喧嘩も最終章ですわね」
「ううん、喧嘩はずっとしたいかな。だから美羽が言いたいのは、勝負の後の話」
「なるほど。ではこの授業中にでも聞きましょう。どうせ実験の授業では、お喋りしても私たちは怒られませんしね。サボりと思われない程度で、その話を聞くとしましょう」
美咲はそう言って、美羽へと視線を送る。その言葉に頷いた美羽は、小さい声でお礼の言葉を言った。その言葉を聞いた美咲は、首を傾げて困惑したような笑みを浮かべたのである。
「ありがと」
「何のお礼ですか、それは。良いから、美羽の提案を聞きますよ。ですが勝負は勝負、どうせ美羽の事ですからお兄様を呼んでいるのでしょう?でしたら、その事も考える時間を……」
「ううん。それは駄目だよ、美咲。美羽はそれを許さないし、するつもりも無い。この気持ちは美咲と同じで真剣な物で、美羽にしかない気持ちだから」
「……そうでしたね。今の言葉は、忘れて下さいな」
「うん」
彼女たちの間には静寂が生まれ、お互いに考えている事は同じだと伝わってくる。それは兄である椎名崎幸一という人物に向けた言葉であり、気持ちであり、彼女たちが抱き続けてきた想いである。そして、その時間はついに訪れたのである――。
「兄者、来てくれたんだ」
「そりゃ大事な妹の話だからな」
「そっか。相変わらず、兄者は優しいね」
「そうでもないさ……」
幸一は肩を竦めながらそう呟くと、美羽の事を真っ直ぐに見た。真っ直ぐに見られた美羽は身体を硬直させ、ビクッと強張った表情となっていた。試合前でも試合中でも、緊張する事の無かった美羽。だが、これまで真っ直ぐに兄と視線を交わした事など数える程度でしか記憶に無いのだ。
「あ、兄者……美羽の話、聞いてくれる?」
か細い声だが、辛うじて耳に入ってくる言葉。いつも元気な美羽からすれば、その声から覇気を感じない弱々しい声だった。だがその頬は赤く染まっていて、その瞳は微かに揺れていた。勇気を振り絞り、自分の気持ちを言葉にする事が難しい。そう感じている美羽なのであった。
「何だ。俺がお前たちの話を聞かない日があったか?」
「……ん~、あった?かも」
「ええー、無ぇと思うぞ」
「いや、あるよ。いつも話半分で聞いてて、いつもは流されちゃうから」
前置きのような言葉。声が震えているのか、気恥ずかしさが勝っているのか。美羽本人でも理解が出来なくなって来ている。だがしかし、考えても仕方が無いと思ったのだろう。
美羽は、深呼吸をしてその言葉を伝えるのだった。
「兄者、美羽は……兄者が好きです」
「……」
「兄者を兄妹としてじゃなくて、一人の男の人として、兄者が好きです」
「……」
「優しい所、臆病な所、たまに冷たい時もあるけど、全部、全部が好きです!」
思い付く言葉を並べて、自分の気持ちを素直に吐き出す意志と決意。その両方は口で言うのは簡単だが、現実はそう簡単にはいかない。だが、どんなに難しい事であっても、不可能と思える事であっても、それを実際に行動に起こすには覚悟が必要になる。
そして今、神楽坂美羽はその覚悟を示した。自分では解決する事が出来ない気持ちを、他人とは共有するのは難しい感情を、自己完結するのではなく、その想いを言葉にして相手に告げる決意を下したのだ。
その決意は並大抵の覚悟ではないだろう。だからこそ、真っ直ぐな言葉は相手の心に刺さるのだ。
「――だから、美羽の……美羽の彼氏になって下さい。美羽を、兄者の彼女にして下さいっ!」
勢い良く頭を下げて、目を瞑って返事を待つ美羽。その身体は硬直はしなくなっているが、まだ微かに震えていた。それは心配や不安が、頭の中でぐるぐると巡り続けているからだ。もし、もしもという言葉が頭の中を巡り続け、美羽は自分自身を不安にさせている。
だがそれはきっと、この世界で最も美しい感情であると思う。喜怒哀楽、それは人間が持つ綺麗でもあり、汚くもある感情だ。そしてその人物の唯一無二のモノであり、誰にも真似できない感情もまた美しいのだろうと思う。
「顔を上げろ、美羽」
「っ……」
美羽の頭の上に乗せられた手は優しく動かされ、目の前に居る幸一の表情も優しい物だ。だが少し不安なのか、美羽はやや緊張している様子だった。だが次の言葉を聞いた美羽は、ぱぁっと輝いた笑顔を浮かべて、幸一に抱き着くのであった――。
「兄者、大好きっ!!」
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