【運命】に捨てられ捨てたΩ

諦念

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第四章 最愛の番

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翌朝、南が起きると、拓海の顔が目の前にあり、一瞬心臓が止まりそうになった。
 そうだった。昨日泊めたんだった。眉間に皺を寄せて、寝てる時まで悩んでいるのか?
南は名残惜しそうに、昨日の拓海の醜態を片付けなくてはとリビングに移動した。
リビングの様子を改めて見て、昨日の拓海の面白さを思い出し小さく鼻で笑う。
 やっぱり、そのままにしておこう。反応が楽しみだな。
南が目覚めに入れた珈琲の香りにつられて起きたのか、拓海は真っ青な顔をしながら寝室から出てきた。
かと思えば、「あ」と言って廊下とリビングに散らばる衣服を手繰り寄せる。
南はその様子に笑みを吹き出してしまった。
「昨日は、相当荒れてたぞ」
「すみません。俺、記憶が無くて」
拓海は申し訳なさそうに衣服を畳んでいる。
「まじか、ほんとに覚えてないのか?」
「う、はい」
「家に着くなり、服を脱ぎだして上裸になった後、鼻歌しながらソファに寝っ転がって、音程が外れると一人ででかい声で笑って、音が小さくなったと思ったらいきなり起きだして」
「本当にすみません。ご迷惑おかけしました」
拓海は謝りながらも、どこか別の事を考えているようで、しかしそれを口にするのを躊躇しているようだ。南は拓海が本当に聞きたい事がなんであるか、気づいて残念そうに言った。
「それだけだよ、友達同士でよくある泊りと同じだよ」
「あ、はい」
 明らかにホッとした顔しやがって。
そう心で皮肉を言っても、南は拓海を追い詰めたいわけじゃない。これ以上拓海の負担を増やして悩ませたくないと思いから、昨夜の拓海の体に下心を持って触れなかった。

「その、昨日はご迷惑かけて朝までお邪魔しちゃって、俺帰りますね」
 あまり、友人みたいな関係でも、池上の手前俺の家に居続けるのには遠慮するよな。
そう思うと南は無性に拓海を引き止めたくなった。
「朝ごはん食べたらにしたら? ちょうど作ろうとしてたんだ」
拓海の答えを聞く前に、南は強引に話し続ける。
「そうだ、昨日風呂に入れなかっただろう、勝手に使って良いよ」
南は浴室の場所を拓海に教える。拓海は「ありがとうございます」と困ったように言って
 困らせたくないのに、帰らせたくない。俺、こんな自制きかなかったか?
拓海がお風呂から上がり髪の毛を乾かしていると、ちょうど料理が出来上がり、朝食を共にした。
「南先輩って何でもできますよね。このオムレツとかお店で出せますよ」
「ハハ、そんな事ないよ」
「そんな事ありますよ」
 拓海にだけにしか作る気はないよ。
南はその言葉を飲み込み、代わりに「ありがとう」と言って笑った。
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