海月

出会い

　ガヤガヤと賑わっているのを横目に僕は机に突っ伏していた。暖かくて春の風が心地よいそんな日だった。
　チャイムが鳴り、皆席に着く。ソワソワとした様子で落ち着かないようだ。
　ガラガラッと音がなり先生が入ってきた。

「三年二組の担任をする事になりました、佐々木です。よろしくお願いします。」

　彼女は今年入ってきたばかりの先生だった。ちょっと小柄で気の弱そうなにこにことした先生だった。

「今日は転入生が来ています。入ってきていいよ。」
　と、ドアの方を見た。全員の視線がそこに集まる。

　スタスタと髪の長い細身な女子が入って来た。
「初めまして、一ノ瀬千鶴です。よろしくお願いします」
頭を下げ、先生の指示で席に座る。
なんだか自然と目を奪われてしまう、彼女は不思議な雰囲気だった。

それから放課後、部活に入っていない僕はただ家に帰るだけだ。転校生の彼女はみんなに囲まれ連れていかれたようだ。
「おい、」
肩がビクッとする。後ろを振り向いた途端頭に衝撃が走る。あぁ、またか。舌打ちをするのが聞こえたかと思うと今度は背中に衝撃が走る、一発、二発と何発も。
三年ではクラスが離れたから大丈夫だと油断していた。一年の頃からだろうかこんな目に会うようになったのは。何故こうなったのかは分からない、僕が気に入らないのか、何か気に触る事をしてしまったのか。
「ねぇ、そういう事して楽しい？」
ピシャリと叱るような声が聞こえた方を見ると転校生が居た。
「誰だか知んねえけどチクったら許さねぇからな」
そう吐き捨てて奴らは教室から去っていった。
「大丈夫？立てる？」
と、彼女は手を貸してくれた。
「ありがとう、一ノ瀬さん」
僕は顔を背けた。
「いいの、いいの、それより大丈夫？」
そう言って顔を覗き込まれる。
「大丈夫…」
恥ずかしさを隠しながら答えた。
「それは良かった。ねぇ、君名前は？」