不幸を呼ぶ呪われた痣を持つ私ですが、皆気にせず溺愛してきます。

木山楽斗

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1.呪われた痣

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「くそっ! どうして俺がこんな目に……」

 小さな家の一室で、父は頭を抱えていた。
 それは私にとって、見慣れた光景だ。父はいつも、上手くいかないと癇癪を起こす。

「……全てはお前のせいだ、ルナリア!」
「……っ」

 父の矛先は、大抵の場合私に向けられる。自身の失敗さえも、私に押し付けてくるのだ。
 それを母も、止めることはない。二人にとって私は、邪魔な存在なのだ。

「ふんっ、見れば見る程に醜い痣ね……」
「うん?」
「この子の腕に刻まれた痣のことさ。蛇か何かに見えて、気味が悪いよ」

 父の言葉に怯んで尻餅をついた私を見て、母は疑問を口にした。
 それは私の右腕に刻まれている痣のことだ。生まれつき、私の体には奇妙な紋様のようなものが刻まれている。
 その形は、見ようによっては蛇のように見える。母は蛇が嫌いなため、この痣を見るといつも顔を歪めるのだ。

「それは当然だろうさ。この痣は呪いの痣なのだからな」
「呪いの痣?」
「俺も最近知ったことだ。この国における伝説がある。この痣を持つ者は不幸を呼ぶ。そう言い伝えられていたそうだ」
「不幸を呼ぶか。なるほど、私達がこんな生活を送っているのは、この子のせいということか……」
「ああ、正しくそういうことだ」

 父の語る事実に、母の私に対する視線も一層険しくなった。
 私自身もそこまで快く思っていなかった痣ではあるが、まさか呪いの痣だなんて思っていなかった。しかしそんなものが刻まれているとなると、私はこれから責められることになるのだろう。

「こんな子供なんていたって、一つの得にもなりはしない。愚かだったな、お前も俺も……」
「……認めたくないけれど、そうみたいだね。どうするつもりだい?」
「決まっているだろう。答えは一つだ。呪われた子供には、相応しい末路が待っているさ」

 父と母の会話は、不穏なものになっていた。
 それに恐怖を抱きながらも、私はどこか安心していた。これでやっとこの苦しい日々が終わるのだと、そう思ったのだ。

「……随分な物言いだな」
「え?」
「な、なんだい?」

 終わりを悟って目を瞑っていた私は、聞き慣れない声が聞こえてきて、少し驚くことになった。
 周囲を見渡してみると、一人の背が高い男性が立っていた。彼はとても鋭い視線を、父と母に向けている。
 もしかして、借金取りだろうか。いつも家に来る人とは違う人だが、代わりという可能性は充分にある。

「お久し振りですね、叔父上、元気そうで何よりです」
「お、お前は……アゼルトなのか?」
「ア、アゼルトって、あんた……」

 現れた男性は、父のことを叔父と呼んだ。それに私は驚いた。父に私達の他に家族がいたなんて、今まで知らなかったことである。
 しかし父の甥――つまり私にとってはいとこになる彼は、何をしに来たのだろうか。二人の雰囲気は、あまり良いものではないようだが。
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