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36.戻って来る感覚

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「さて、とりあえず話はこの辺りでいいだろう……流石に、この体を長時間借りるのは忍びない」
「そうですね……それでは、二人に体を返すとしましょうか」

 そこで、ズグヴェルさんとシェリウェントさんはそのような会話を交わした。
 次の瞬間、私は奇妙な感覚に見舞われる。

「うっ、これは……」
「い、一体……」

 奇妙な感覚の直後、私の体は私の意思で動かせるようになっていた。
 今までは、少し俯瞰的に見ているようだった目の前の光景も元に戻っている。
 どうやら、ズグヴェルさんは宣言通り、私に体を返してくれたようだ。恐らく、目の前で驚いたような顔をしているセリティナも同じだろう。

「……えっと、エルファリナ様なんですか?」
「はい……そういうあなたは、セリティナさんですか?」
「はい、そうです。セリティナです」

 私とセリティナは、お互いがお互いであるかどうかを確認した。
 なんというか、それは変な会話だ。普通に考えたら、目の前の人間はその人でしかないのに、別の人である可能性を追わなければならないなんておかしな話である。

「先程までのあれは、一体なんだったのでしょうか? 私の体は、誰かに乗っ取られていたようですが……」
「えっと……なんといったら、いいか……色々と複雑なことが起こっているんです」
「複雑なこと……まあ、先程の会話で、大まかなことは理解しましたが……」

 セリティナは、とても混乱していた。
 それは、当たり前のことである。彼女は、私以上に知らないことが多い。今の現象なんて、まったく意味がわからないだろう。
 そんな彼女に、私は何から説明するべきだろうか。それを私は考える。

「……まず知っていた欲しいのが、あなたのその聖痕は、とあるものが宿ることによってできたものだということです」
「とあるものが宿っている……確か、彼らか彼女らかはわかりませんが、龍などといっていましたね?」
「ええ、ご明察の通り、聖痕は龍を宿しているという証なのです」
「そ、そうなのですね……」

 セリティナは、先程の話をよく聞いていた。
 これなら、思っていたよりも説明は少なく済むかもしれない。そのことに、私は少し安心する。私にもわからないことが多いので、そんなに説明するのに自信がなかったからだ。

「……でも、どうしてエルファリナ様がそんなことを」
「……この際ですから、全てをお話します。実は、色々なことがあって……」

 セリティナの言葉に、私は全てを話す決意をした。今更隠しても、無駄だからだ。
 こうして、私はセリティナに私の知っている情報を全て話すのだった。
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