「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい」なんて言われて、受け入れると思っているんですか?

木山楽斗

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1.平凡な姉として

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 廊下に張り出された成績表の真ん中くらいに、ラルーナという私の名前は記されていた。
 良くも悪くもないその順位は、私という人間をそのまま表しているといえる。

 多くの人が集うこの魔法学園の中で、私は平凡な人間であるといえるだろう。
 一応、ロディオン子爵家の貴族令嬢ではあるが、そもそも貴族が多いここではそれは特別なこととも言い難い。
 同時にここに通っているような平民は、特別な人である訳で、そういう意味で私という人間は没個性だといえるだろう。

「すごいな、また一位だ」
「入学してからずっとそうだよな……」

 一方で、この学園には天才といえる人が一人いた。
 彼女の名前は、リメルナ・ロディオン子爵令嬢。私の双子の妹だ。

 リメルナは、あらゆる科目において一位を取り続けている。
 彼女が入学してからというもの、その位置にある名前は一度も変わっていない。不動の一位と呼ばれており、この魔法学園において成績争いというのは実質的に二位争いだ。

 そんな彼女と私が双子の姉妹であるということを、一体この学園のどれだけの人が認識しているだろうか。
 違いがあり過ぎて、わかっていない人が多いかもしれない。双子と言っても、二卵性であるため、そっくりという訳でもないのも、その一因だといえるだろう。

 ただ、別に知られていることが良いこととも言い難い。
 なぜなら知っている人は、ほとんど私のことを馬鹿にするからだ。
 出涸らしなんて言われることも少なくはない。とにかく私は、侮られやすいのだ。まあそれは、仕方ないことではあるのだが。

「あれ? またリメルナが一位だったの?」
「あ、うん。そうみたい。でも、別に今更驚くことではないんじゃない?」
「まあ、そうなんだけどさ。よくやるよね、本当に」

 私が順位表を見ていると、友人であるテセネア・メルード子爵令嬢が話しかけてきた。
 彼女は、この学園に入学する前からの友人である。リメルナとも交流はあったのだが、今は基本的には二人で過ごすことが多い。

「本人はよくやっているという自覚すらないと思うけど……」
「天才だもんね。それで、今回の実質的に一位は誰なのかな?」
「ゼルート様みたい」
「おお、流石は公爵令息……」
「学力にそれが関係あるのかはわからないけれど、真面目な人だからね」

 順位表を見ながら、私とテセネアは下らない世間話をしていた。
 上位争いをしている人達は別なのかもしれないが、私達はこれを見ても、そこまで心が動くという訳でもない。
 結局の所、卒業することができればそれで良いのだ。一番になるとかそういったことを考えていない私達は、なんとも呑気であるといえる。
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