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2.普通ではない令嬢
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「……でも正直な話をしてしまいますと、私はこれ以上何も知らないんです」
「何も知らない?」
「ええ、メイド長からこれは第一王子の指示であるから、しっかりと務めるようにと言われただけで、それ以上のことは何も聞かされていません。だから、エリーファ様にお伝えできる情報は何も持っていないのです。すみません」
そこでラフェリーナは、申し訳なさそうにしながらそう言ってきた。
その態度に、私は少々面を食らってしまう。
「別に謝る必要なんてないわ。私が勝手に聞いたことなのだから、あなたは気にしないで」
「そ、そうですか?」
「ええ、そうなのよ」
多分ラフェリーナは、人が良いのだろう。それはこれまでの会話からなんとなく察していたことだ。
そういう面も合わせて彼女は少々危うい。やはり、私が教えられる限りのことは教えておくべきだろう。
ただそれは今後考えていけばいいことだ。今考えるべきは、ナーゼス様の目的である。
「一体、どういう風の吹き回しなのかしらね……」
「えっと……それは、ナーゼス殿下のことですか?」
「ええ……ああ、もしかしてあなたはそれ程事情を知っているという訳ではないのかしら?」
「あ、はい。断片的な情報はありますが……」
新人ということもあって、ラフェリーナは私とナーゼス様の間にある色々なことを知らないようだ。
それなら、ここで教えておいていいかもしれない。どうせ今後誰かからあることないこと聞かされるのだろうし、先に私が事実を伝えておく方がきっといいだろう。
「私はね、夫……つまりナーゼス様から、愛されていないの」
「愛されていない?」
「ええ、嫌われているのかどうかまでは定かではないけれど、少なくともそれだけは確実だといえるわ」
「そ、そうなんですか……」
私がとぼとぼと話し始めると、ラフェリーナは身を正した。
恐らく、真剣に話を聞く態勢になったということなのだろう。本来であれば食事を運んで来るだけだったはずの彼女にとって、それは予想外の事態かもしれない。
ただ、私が彼女を拘束する分には問題はないはずである。なぜなら彼女は、私の身の周りのお世話を担当するメイドだからだ。私の指示は、彼女にとって何よりも優先されるべきものなのである。
「……こう言っては失礼かもしれませんが」
「あら? 何かしら?」
「貴族であるなら、そういったこともあるのではありませんか? というか、愛のない結婚なんて当たり前だと思います。私も貴族の端くれですから、そういった覚悟は決めていますし……」
「まあ、それはそうよね……」
私の言葉に、ラフェリーナは疑問を覚えたらしい。
それを素直に言ってくれるのは、こちらとしてもありがたかった。変に疑問を隠されるよりも、こう言ってくれた方がこちらも話がしやすいものである。
「でも、私は普通ではないのよ」
「普通ではない?」
「少し驚くかもしれないけれど……」
「エリーファ様? 何を……」
私は、ラフェリーナに背中を向けて服をはだけさせた。
唐突な行動に彼女は一瞬驚いたみたいだが、すぐに言葉を詰まらせた。それは恐らく、私の背中に刻まれているものが目に入ったからだろう。
「これはなんですか?」
「私の体の中には、竜が封印されているの」
「竜……確か、強大な力を持つ生物ですよね? 数十年前に王国を襲ったという……」
「ええ、その竜が私の体には宿っているの」
王国において、それは一応秘密になっていることだ。
ただこの王城で働く者にとっては、半ば周知の事実である。流石に隠しておくことが、難しかったのだ。
そのため、別に彼女に話しても問題はない。どうせ後で知ることになるのだから。
「何も知らない?」
「ええ、メイド長からこれは第一王子の指示であるから、しっかりと務めるようにと言われただけで、それ以上のことは何も聞かされていません。だから、エリーファ様にお伝えできる情報は何も持っていないのです。すみません」
そこでラフェリーナは、申し訳なさそうにしながらそう言ってきた。
その態度に、私は少々面を食らってしまう。
「別に謝る必要なんてないわ。私が勝手に聞いたことなのだから、あなたは気にしないで」
「そ、そうですか?」
「ええ、そうなのよ」
多分ラフェリーナは、人が良いのだろう。それはこれまでの会話からなんとなく察していたことだ。
そういう面も合わせて彼女は少々危うい。やはり、私が教えられる限りのことは教えておくべきだろう。
ただそれは今後考えていけばいいことだ。今考えるべきは、ナーゼス様の目的である。
「一体、どういう風の吹き回しなのかしらね……」
「えっと……それは、ナーゼス殿下のことですか?」
「ええ……ああ、もしかしてあなたはそれ程事情を知っているという訳ではないのかしら?」
「あ、はい。断片的な情報はありますが……」
新人ということもあって、ラフェリーナは私とナーゼス様の間にある色々なことを知らないようだ。
それなら、ここで教えておいていいかもしれない。どうせ今後誰かからあることないこと聞かされるのだろうし、先に私が事実を伝えておく方がきっといいだろう。
「私はね、夫……つまりナーゼス様から、愛されていないの」
「愛されていない?」
「ええ、嫌われているのかどうかまでは定かではないけれど、少なくともそれだけは確実だといえるわ」
「そ、そうなんですか……」
私がとぼとぼと話し始めると、ラフェリーナは身を正した。
恐らく、真剣に話を聞く態勢になったということなのだろう。本来であれば食事を運んで来るだけだったはずの彼女にとって、それは予想外の事態かもしれない。
ただ、私が彼女を拘束する分には問題はないはずである。なぜなら彼女は、私の身の周りのお世話を担当するメイドだからだ。私の指示は、彼女にとって何よりも優先されるべきものなのである。
「……こう言っては失礼かもしれませんが」
「あら? 何かしら?」
「貴族であるなら、そういったこともあるのではありませんか? というか、愛のない結婚なんて当たり前だと思います。私も貴族の端くれですから、そういった覚悟は決めていますし……」
「まあ、それはそうよね……」
私の言葉に、ラフェリーナは疑問を覚えたらしい。
それを素直に言ってくれるのは、こちらとしてもありがたかった。変に疑問を隠されるよりも、こう言ってくれた方がこちらも話がしやすいものである。
「でも、私は普通ではないのよ」
「普通ではない?」
「少し驚くかもしれないけれど……」
「エリーファ様? 何を……」
私は、ラフェリーナに背中を向けて服をはだけさせた。
唐突な行動に彼女は一瞬驚いたみたいだが、すぐに言葉を詰まらせた。それは恐らく、私の背中に刻まれているものが目に入ったからだろう。
「これはなんですか?」
「私の体の中には、竜が封印されているの」
「竜……確か、強大な力を持つ生物ですよね? 数十年前に王国を襲ったという……」
「ええ、その竜が私の体には宿っているの」
王国において、それは一応秘密になっていることだ。
ただこの王城で働く者にとっては、半ば周知の事実である。流石に隠しておくことが、難しかったのだ。
そのため、別に彼女に話しても問題はない。どうせ後で知ることになるのだから。
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