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4.引き継がれた婚約
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婚約者であるバラルド様は、ボーキンス侯爵家の次男であった。
私よりも少し年上の彼は、かつてお姉様の婚約者だった人物である。
お姉様が不慮の事故で行方不明となって、それらの縁談は一度流れた。しかし話し合った結果、私にその婚約が引き継がれたのである。
「アルネシアの妹か……ふん、確かに彼女とよく似ている」
「そ、そうでしょうか」
バラルド様のことは、それ程よく知っている訳ではなかった。婚約者について、お姉様からあまり話を聞いていなかったのだ。
聞いておけばよかったと、今になって少し後悔している。バラルド様のことを知っているのと知っていないのとでは、心構えがきっと違っただろう。
「アルネシアは、僕に相応しい才女だった……その点、君はどうなのだろうか?」
「え?」
「妹であるならば、彼女に匹敵する才能があって然るべきだろう」
バラルド様は、私を舐め回すように見てきた。
その視線には、覚えがある。これは、お父様やお母様が昔私に向けてきた目だ。
恐らく彼は、期待しているのだろう。あの二人と同じように、私に勝手な期待を向けてきているのだ。
「……残念ながら、私はお姉様程に優秀ではありません」
「ほう?」
「バラルド様の期待には応えられません。私は、凡庸ですから」
「ふんっ……」
私の言葉に、バラルド様は鼻を鳴らした。
彼の表情からは、失望が伝わってくる。それも何度も見てきた顔だ。
「まったく、期待外れだ。まさか、この僕が貧乏くじを引かされてしまうとはな……なんというか、裏切られた気分だよ」
バラルド様の言葉も、聞いたことがあるものだった。
それも今まで、両親から散々聞かされてきた言葉なのだ。
本当に、私はいつも勝手に期待されている。その期待に応えられないと、いつも裏切られたと言われるのだ。
それはなんとも理不尽なことである。どうして私が、こんな扱いを受けなければならないのだろうか。
確かに私は、お姉様と比べて出来が悪い。しかし、それは私がこんな扱いを受ける理由にはならないはずだ。
「……勝手に期待しておいて、裏切られたなんて言わないでください」
「……なんだと?」
「別に私は、あなたを裏切ってなんかいません。あなたが勝手に期待しただけではありませんか。その責任を私に求めないでください」
積もりに積もった不満が一気に爆発して、私はバラルド様に思わずそんなことを言っていた。
それに対して、バラルド様は面食らったような顔をしている。流石の彼も、初対面で私がこんなことを言ってくるとは思っていなかったようだ。
その顔を見て、私は理解した。自分がとんでもないことをしてしまったことを。
しかし、言ってしまったことを今更取り下げることができる訳でもない。
こうして私は、婚約者に対して言うべきではなかったことを言ってしまったのだった。
私よりも少し年上の彼は、かつてお姉様の婚約者だった人物である。
お姉様が不慮の事故で行方不明となって、それらの縁談は一度流れた。しかし話し合った結果、私にその婚約が引き継がれたのである。
「アルネシアの妹か……ふん、確かに彼女とよく似ている」
「そ、そうでしょうか」
バラルド様のことは、それ程よく知っている訳ではなかった。婚約者について、お姉様からあまり話を聞いていなかったのだ。
聞いておけばよかったと、今になって少し後悔している。バラルド様のことを知っているのと知っていないのとでは、心構えがきっと違っただろう。
「アルネシアは、僕に相応しい才女だった……その点、君はどうなのだろうか?」
「え?」
「妹であるならば、彼女に匹敵する才能があって然るべきだろう」
バラルド様は、私を舐め回すように見てきた。
その視線には、覚えがある。これは、お父様やお母様が昔私に向けてきた目だ。
恐らく彼は、期待しているのだろう。あの二人と同じように、私に勝手な期待を向けてきているのだ。
「……残念ながら、私はお姉様程に優秀ではありません」
「ほう?」
「バラルド様の期待には応えられません。私は、凡庸ですから」
「ふんっ……」
私の言葉に、バラルド様は鼻を鳴らした。
彼の表情からは、失望が伝わってくる。それも何度も見てきた顔だ。
「まったく、期待外れだ。まさか、この僕が貧乏くじを引かされてしまうとはな……なんというか、裏切られた気分だよ」
バラルド様の言葉も、聞いたことがあるものだった。
それも今まで、両親から散々聞かされてきた言葉なのだ。
本当に、私はいつも勝手に期待されている。その期待に応えられないと、いつも裏切られたと言われるのだ。
それはなんとも理不尽なことである。どうして私が、こんな扱いを受けなければならないのだろうか。
確かに私は、お姉様と比べて出来が悪い。しかし、それは私がこんな扱いを受ける理由にはならないはずだ。
「……勝手に期待しておいて、裏切られたなんて言わないでください」
「……なんだと?」
「別に私は、あなたを裏切ってなんかいません。あなたが勝手に期待しただけではありませんか。その責任を私に求めないでください」
積もりに積もった不満が一気に爆発して、私はバラルド様に思わずそんなことを言っていた。
それに対して、バラルド様は面食らったような顔をしている。流石の彼も、初対面で私がこんなことを言ってくるとは思っていなかったようだ。
その顔を見て、私は理解した。自分がとんでもないことをしてしまったことを。
しかし、言ってしまったことを今更取り下げることができる訳でもない。
こうして私は、婚約者に対して言うべきではなかったことを言ってしまったのだった。
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