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12.町に着いて

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 ロモレイツの町には、ペリュトン共和国に入ってから程なくして着くことができた。
 ロモレイツは大都市という訳ではないが、それなりの町である。豊かなこの町でなら、何かしらの仕事も見つかりそうだ。
 そんな町の片隅にある教会に、私は来ていた。ここが、レネシアさんが現在お世話になっている教会であるらしい。

「おや、レネシアさん帰られたんですか?」
「ルバートさん? いらしていたんですか?」
「ええ、少しだけ様子を見に来ていました。最近は、色々と物騒ですからね……おや、そちらの方は?」

 そんな教会の前には、二人組の男性達がいた。
 その内の一人である爽やかな男性は、レネシアさんと親しそうに話している。
 もう一人の少し目つきが悪い男性は、そんな二人からは離れた場所で私を見ていた。その二人は、身なりからして恐らく騎士に類する人達なのだろう。

「旅先で私を助けてくれたイルフェリアさんという方です。なんでもペリュトン共和国に移り住みたかったらしくて、縁もあってこのロモレイツの町まで来ていただいたんです」
「おや、そうでしたか」

 ルバートさんと呼ばれた男性は、私の方に笑顔で近寄ってきた。
 彼は、私に対してゆっくりと手を差し出してくる。なんというか、とても友好的だ。

「僕は、騎士のルバートと申します。こっちは弟のレオールです」
「え? 兄弟なんですか?」
「ええ、兄弟で騎士をやっているんです」

 ルバートさんの説明に、私は少し驚いてしまった。
 まさかその二人が兄弟であるとは、まったく思っていなかったのだ。ただ、言われてみれば二人はよく似た顔つきをしているような気はする。

「……あんた、何者だ?」
「え?」

 そんな私に対して、レオールという人物は突如鋭い視線を向けてきた。
 その視線に、私は少し怯んでしまう。どうして、こんなにも警戒されているのだろうか。

「あんたは、見るからに普通じゃない。ただの旅人って訳じゃないんじゃないか?」
「おい、レオール、やめないか」
「兄貴、俺達は治安を守る騎士だぞ? 素性を確かめる必要があるはずだ」

 どうやらレオールさんは、私の身なりを見て何かを感じ取ったようだ。
 確かによく考えてみれば、私の格好は普通ではない。高価な服などは、私が少なくともお金持ちの家の者だということを表している。
 そんな私が、国を移り住んだと言っている。それは確かに、結構怪しく思えるかもしれない。
 そこで私は、考えることになった。事情をどうやって話すべきなのかを。
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