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16.予期せぬ再会

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「……うん?」
「レオールさん? どうかしましたか?」
「いや……」

 私が色々と考えていると、レオールさんの目が少し鋭くなった。
 その反応には、見覚えがある。私が彼を探しに来た時にしていた反応だ。
 それはつまり、誰かがここに来たことを表しているのだろう。そのため、私は周囲の様子を確認してみる。

「あれ? レネシアさん?」
「……す、すみません。お二人が中々帰って来ないので、心配になって見に来てしまいました」「なるほど、確かに結構話し込んでいたからな……」

 レオールさんは、どうやらやって来たレネシアさんの気配を感じ取ったようだ。
 彼女は、ぎこちなくこちらに歩いてくる。なんというか、少し気まずそうだ。もしかして、何か勘違いでもしているのだろうか。例えば、恋愛的なこととか。

「レネシアさんは、私達の話を聞いていなかったんですか?」
「え? ええ、えっと……聞いていませんよ?」
「本当ですか?」
「ええ、聞いていませんとも」

 私の質問に、レネシアさんは明らかに動揺していた。それはつまり、私達の話を聞いていたということなのだろう。
 しかしながら、それならむしろ彼女の態度は変だ。話を聞いていたなら、どうしてこんなにぎこちない態度になっていたのだろうか。
 多少は気まずいかもしれないが、こんなカチカチな感じにはならないと思うのだが。

「……レネシアさん、何かあったのか?」
「え?」
「いやなんというか、雰囲気が少し変わったような気がするんだが……」
「そ、そんなことはないと思うんですけどね……」

 レオールさんの言葉によって、私は気付いた。
 確かに、レネシアさんの雰囲気は少し変わったような気がする。
 何が変わったのか、明確にわかる訳ではない。ただ、確実に今までの彼女ではない。何かが変化しているのだ。

「と、とにかくそろそろ向こうに戻りましょう。ルバートさんも心配していますしね」
「うん?」

 そこでレネシアさんは、ゆっくりとその手を私に差し伸べてきた。
 それはなんというか、明らかにおかしい動作だ。レネシアさん自身も、驚いている。恐らく、無意識の行動だったのだろう。
 彼女と出会ってから、私はずっと疑念を抱いていた。今の動作を見て、その疑念は確信に変わった。

「……お姉様、ですか?」
「……」

 私の質問に対して、レネシアさんはゆっくりと目をそらした。
 それはつまり、図星であるということなのだろう。
 どうやら私は、行方不明になった姉と予期せぬ再会を果たしたようである。
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