勝手に期待しておいて「裏切られた」なんて言わないでください。

木山楽斗

文字の大きさ
23 / 30

23.騎士達との出会い

しおりを挟む
「よっと……これは、こっちに置いておけばいいのか?」
「あ、はい。そこにお願いします」
「ふう……」

 ロモレイツの町に着いてから数日後、私はお姉様とともにとある集合住宅の一室を借りることにした。今まで離れ離れになっていた分、これはお姉様との時間を過ごすつもりだ。
 そのための引っ越しに、レオールさんとルバートさんが手伝いに来てくれた。私達にとっては、とてもありがたい助っ人だ。

「本当に、今日はすみませんね。わざわざ来てもらって……」
「いや、気にする必要はないさ。困った時は、お互い様というだろう」
「……そういえば」

 そこで私は、少し気になることを思いついた。
 よく考えてみたら、この兄弟とお姉様はどういう関係なのだろうか。
 ぼんやりと知り合いであることはわかっているが、詳しいことはまだ聞いていなかった。それは今後のためにも聞いておいた方がいいことかもしれない。

「レオールさんとルバートさんは、いつお姉様と知り合ったのですか?」
「うん? ああ、レネシアが町に来たばかりの時にとある事件が起きてな。その時に知り合ったんだ。あの時はまだ俺達も、騎士ではなかったな……」
「事件ですか?」
「ああ、ちょっとした事件だ。そんなに大事件という訳じゃないぞ?」
「あ、そうなんですか……」

 レオールさんの言葉に、私は一瞬驚いてしまった。
 しかしどうやら、私が心配をするようなことはないようだ。そんなに大きな事件ではないなら、きっと問題はなかったということなのだろう。

「というか、騎士ではなかったのにお二人も事件に巻き込まれたんですか?」
「まあ、巻き込まれたというか……俺達は首を突っ込んだというのが正しいな」
「え?」
「あの頃の俺達はなんというか、騎士に憧れて愚かにもそういうことに首を突っ込んでいたのさ。今となっては、苦い記憶だ」
「なるほど……」

 お姉様がこの町に来たばかりの頃ということは、二人もまだ子供だったということになる。
 故に分別がつかず、事件に首を突っ込んだということだろうか。それはなんというか、想像できない訳ではない。

「まあ、その事件をきっかけに、レネシアと知り合ったんだ。当時は記憶喪失で大変だったし、俺達はお節介を焼いていた訳だ。まあ、レネシアからすればいらぬお節介だったかもしれないが……」
「いえ、きっとそんなことはないと思いますよ。ありがとうございます、お姉様を気にかけてくれて……」
「いや、別にお礼を言われることなんてないさ……」

 記憶喪失で新しい町に来たお姉様にとって、二人の存在はきっと心強かったはずだ。
 妹として、二人の助けはありがたい限りである。二人のような存在がいてくれて、本当によかった。私はなんだか、とても安心するのだった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

婚約者の姉を婚約者にしろと言われたので独立します!

ユウ
恋愛
辺境伯爵次男のユーリには婚約者がいた。 侯爵令嬢の次女アイリスは才女と謡われる努力家で可愛い幼馴染であり、幼少の頃に婚約する事が決まっていた。 そんなある日、長女の婚約話が破談となり、そこで婚約者の入れ替えを命じられてしまうのだったが、婚約お披露目の場で姉との婚約破棄宣言をして、実家からも勘当され国外追放の身となる。 「国外追放となってもアイリス以外は要りません」 国王両陛下がいる中で堂々と婚約破棄宣言をして、アイリスを抱き寄せる。 両家から勘当された二人はそのまま国外追放となりながらも二人は真実の愛を貫き駆け落ちした二人だったが、その背後には意外な人物がいた

さようなら、たった一人の妹。私、あなたが本当に大嫌いだったわ

青葉めいこ
恋愛
おいしい? よかったわ。あなたがこの世で飲む最後のお茶になるからね。 ※番(つがい)を否定する意図はありません。 小説家になろうにも投稿しています。

私を見下していた婚約者が破滅する未来が見えましたので、静かに離縁いたします

ほーみ
恋愛
 その日、私は十六歳の誕生日を迎えた。  そして目を覚ました瞬間――未来の記憶を手に入れていた。  冷たい床に倒れ込んでいる私の姿。  誰にも手を差し伸べられることなく、泥水をすするように生きる未来。  それだけなら、まだ耐えられたかもしれない。  だが、彼の言葉は、決定的だった。 「――君のような役立たずが、僕の婚約者だったことが恥ずかしい」

義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!

ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。 貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。 実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。 嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。 そして告げられたのは。 「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」 理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。 …はずだったが。 「やった!自由だ!」 夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。 これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが… これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。 生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。 縁を切ったはずが… 「生活費を負担してちょうだい」 「可愛い妹の為でしょ?」 手のひらを返すのだった。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

処理中です...