誰からも必要とされていないから出て行ったのに、どうして皆追いかけてくるんですか?

木山楽斗

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7.頼った先は

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 ラナフィス子爵家の領地のルーミルという町に、私は来ていた。
 家を出て新天地で暮らすにあたって、私は母の実家を頼ることにした。祖父母と伯父一家とはしばらくの間交流はなかったが、頼れる人は他にいなかったのだ。

 という訳でラナフィス子爵家を訪ねてみたが、突然の訪問にも関わらず歓迎してもらえた。
 マートン伯爵家の方針によって交流は失われたものの、ラナフィス子爵家は母の忘れ形見である私のことを気に掛けてくれていたようだ。

 いやそれ所か、特に事情も聞かず、私の無茶な要求も受け入れた。今まであまり考えたことはなかったが、祖父母に関しては割と過保護なのかもしれない。
 ともあれ私は、当面の間このルーミルという町で暮らすことになった。ここはラナフィス子爵家のお膝元ともいえる町なので、何かと融通が効くそうなのだ。

「ミリーシャさん、こちらの書類をお願いします」
「あ、はい。わかりました」

 私は、バラント商会にて働くことになった。
 それも、ラナフィス子爵家の紹介である。お祖父様が商会の代表のバラントさんと、懇意にしているそうなのだ。その縁で、働かせてもらうことになった。

 バラント商会の人達は、私の身分は知らない。代表が人を連れて来ることは珍しいことではないらしく、その辺りに関しては特に気にしている人はいないようだ。

 仕事については、特に問題なく行えている。マートン伯爵家で上等な教育を受けた私は、意外とできることが多かったのだ。
 という訳で私は、マートン伯爵家にいた頃よりも忙しくしている。次々と現れる書類の相手は、正直とても大変だ。

「ミリーシャさん、こちらもお願いできますか?」
「すみません、こっちもお願いします」
「あ、はい……」

 てんやわんやとしながらも、私はどこか満足していた。
 マートン伯爵家にて何をするべきか悩んでいた頃と比べると、今は本当に充実しているといえる。

 あのまま留まっていれば、私はきっとゆっくりと腐っていくだけだっただろう。そう考えると、大胆ではあるが、行動したことは間違いではなかったのかもしれない。

「ふう……」

 しかしながら、まだマートン伯爵家から私がいなくなったという事実は、特に話題となっていないようである。
 頃合いを見て、発表しようとしているということだろうか。少し奇妙なものである。

 いや、私の失踪については完璧に隠蔽するつもりということだろうか。その可能性も充分ある。例えば、病気で亡くなったなどとする方が、マートン伯爵家としてはいいのかもしれない。

 まあ、もしもそうだとしたら、私に不都合はない。
 それ所か好都合である。変に騒ぎになるよりは、そっとしておいてもらいたい。それが今の私の素直な気持ちだ。
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