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6.戻らない長女(モブside)
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マートン伯爵家では、混乱が起こっていた。
長女であるミリーシャがヴェリトン伯爵家の屋敷に行ったきり、帰って来ない。それはマートン伯爵家において、大きな問題だといえた。
「家からヴェリトン伯爵家までの道のりで、特に問題が起こっている訳ではないのだな?」
「はい。事故や災害などは、確認できておりません」
「道の都合によって遅れている訳ではないということか。それなら……」
当主であるマートン伯爵は、ゆっくりとため息をついた。
事故や災害などによって、街道が封鎖されるということは稀に発生することだ。彼は今回もそういった類のものではないかと、期待していた。
しかしそうではないというならば、最悪の場合を想定しなければならない。マートン伯爵にとって、それは苦痛であった。
「ティシア、少し相談をしたい」
「……なんでしょうか?」
マートン伯爵は、妻であるティシアに声をかけた。
その声は震えていたが、ティシアは表情を変えない。彼女は目を瞑りながら、夫の声に応える。
「ミリーシャが野盗の類に襲われた可能性を考えなければならないと、私は思っている」
「街道に問題が発生していないというなら、ミリーシャの帰りが遅いのは個人の問題ということになるでしょう……考えたくないことではありますが」
「そうだな……」
ティシアの言葉に、マートン伯爵は頷いた。
彼にとって妻の言葉は、最終確認である。娘の帰りがいつもより遅いと感じた時から、ずっと抱いていた懸念と、彼は向き合うことを決めた。
「誰か、地図を持ってきてくれ」
「こちらに……」
マートン伯爵の言葉に、一人の使用人がすぐさま反応した。
もたされた地図を見ながら、マートン伯爵夫妻は考える。ミリーシャがどこでいなくなったのかを。
「ヴェリトン伯爵家の屋敷に最短で辿り着けるのは、ネルヴァン子爵家の領地を経由するルートだ。ミリーシャはいつも、そこを使っていたと記憶している」
「ええ、そうですね。しかし、ヘンゼル侯爵家の領地を経由している可能性もあると思います。強力を要請するなら、この三家ということになるでしょう」
「すぐに手紙をまとめよう」
妻の言葉に頷いてから、マートン伯爵はすぐさま手紙の準備を始めた。
ことは一刻を争う。マートン伯爵はそう思いながら、ペンを走らせていく。
「旦那様、失礼します」
「む……」
そこでマートン伯爵は、手を止めることになった。執務室に、慌てた様子で使用人が入ってきたからだ。
当然のことながら、それは非常事態を意味している。状況からマートン伯爵は、ミリーシャに関する何かがあったと推測した。
「……何かあったのか?」
「手紙が届きました。ミリーシャ様に付き添っていたメイドのリエネッタさんからです」
「それは……」
使用人の言葉に、マートン伯爵は思わず立ち上がった。
そして彼は、ティシアと顔を見合わせる。突然の知らせに動揺しながらも、彼は妻と頷き合うのだった。
長女であるミリーシャがヴェリトン伯爵家の屋敷に行ったきり、帰って来ない。それはマートン伯爵家において、大きな問題だといえた。
「家からヴェリトン伯爵家までの道のりで、特に問題が起こっている訳ではないのだな?」
「はい。事故や災害などは、確認できておりません」
「道の都合によって遅れている訳ではないということか。それなら……」
当主であるマートン伯爵は、ゆっくりとため息をついた。
事故や災害などによって、街道が封鎖されるということは稀に発生することだ。彼は今回もそういった類のものではないかと、期待していた。
しかしそうではないというならば、最悪の場合を想定しなければならない。マートン伯爵にとって、それは苦痛であった。
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その声は震えていたが、ティシアは表情を変えない。彼女は目を瞑りながら、夫の声に応える。
「ミリーシャが野盗の類に襲われた可能性を考えなければならないと、私は思っている」
「街道に問題が発生していないというなら、ミリーシャの帰りが遅いのは個人の問題ということになるでしょう……考えたくないことではありますが」
「そうだな……」
ティシアの言葉に、マートン伯爵は頷いた。
彼にとって妻の言葉は、最終確認である。娘の帰りがいつもより遅いと感じた時から、ずっと抱いていた懸念と、彼は向き合うことを決めた。
「誰か、地図を持ってきてくれ」
「こちらに……」
マートン伯爵の言葉に、一人の使用人がすぐさま反応した。
もたされた地図を見ながら、マートン伯爵夫妻は考える。ミリーシャがどこでいなくなったのかを。
「ヴェリトン伯爵家の屋敷に最短で辿り着けるのは、ネルヴァン子爵家の領地を経由するルートだ。ミリーシャはいつも、そこを使っていたと記憶している」
「ええ、そうですね。しかし、ヘンゼル侯爵家の領地を経由している可能性もあると思います。強力を要請するなら、この三家ということになるでしょう」
「すぐに手紙をまとめよう」
妻の言葉に頷いてから、マートン伯爵はすぐさま手紙の準備を始めた。
ことは一刻を争う。マートン伯爵はそう思いながら、ペンを走らせていく。
「旦那様、失礼します」
「む……」
そこでマートン伯爵は、手を止めることになった。執務室に、慌てた様子で使用人が入ってきたからだ。
当然のことながら、それは非常事態を意味している。状況からマートン伯爵は、ミリーシャに関する何かがあったと推測した。
「……何かあったのか?」
「手紙が届きました。ミリーシャ様に付き添っていたメイドのリエネッタさんからです」
「それは……」
使用人の言葉に、マートン伯爵は思わず立ち上がった。
そして彼は、ティシアと顔を見合わせる。突然の知らせに動揺しながらも、彼は妻と頷き合うのだった。
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