誰からも必要とされていないから出て行ったのに、どうして皆追いかけてくるんですか?

木山楽斗

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11.しおらしい妹

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 目の前にいる妹のメセリアは、なんだかしおらしい。
 私が部屋に招き入れると、ここに来るまでの勢いは消えて、そうなったのだ。

 とりあえずリエネッタさんに紅茶を準備してもらったので、私はそれに口をつける。するとメセリアも、それに続いた。

「ううっ……」
「え?」
「ぐすっ……」

 どう切り出すべきか、それに悩んでいた私は、メセリアの表情の動きに面食らった。
 彼女は目や口を顔の中央に寄せて、その表情を歪めていた。それはまるで、泣くのを我慢しているかのようだ。

 いや実際に、そういうことなのだろう。それを理解して私は、慌てながらもとりあえず声をかけることにした。

「ど、どうしたの?」
「だ、だって……」
「ああ、ちょっと……」

 メセリアの目からは、涙が零れ始めていた。どうやら我慢することは、できなかったらしい。
 私と十歳違う妹は、大人びた印象があると思っていた。しかし今は、ただの子供にしか思えない。そのギャップに戸惑いながらも、私はとりあえずメセリアの傍に寄る。

「どうしたの、メセリア……あなたが、そんなに急に泣き出すなんて」
「だって、お姉様が……いなくなって」
「それは……」

 メセリアの言葉に、私は息を呑んだ。それはまったく、予想もしていない言葉だったからだ。
 しかし妹が涙を流している原因は、私がいなくなったことにあるらしい。それを妹は悲しんで、再会したことで感情が露わになったということだろう。

 それは私にとって、驚くべきことだった。メセリアが私に涙を流す程の情があったなんて、思ってもいなかったことである。
 しかしこの涙が演技なんて訳はないだろうし、そういうことなのだろう。

「え、えっと、メセリア……」
「は、はい」
「ご、ごめんなさい。その、私……」

 なんというか、急に罪悪感が湧いてきた。
 つまり私は、身勝手な理由でいなくなって、まだ幼さが残る妹をこんな風に泣かせた訳だ。それは凡そ、最低である。知らなかったとはいえ、ひどいことをしてしまったものだ。

 私はとりあえず、メセリアの体を抱き寄せる。そんな風にしたのは、初めてのことだ。しかし妹は、私に身を任せてきた。

「ごめんね、メセリア……」
「い、いえ、別に謝ってもらいたいとは、思っていませんから……」

 メセリアは尚も、涙を流し続けていた。
 これは落ち着くまで、しばらく待たなければならないかもしれない。
 私は妹の背中をゆっくりと撫でる。泣き止むまで、いくらでもそうしていよう。メセリアを泣かせてしまったのは、私なのだから。
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