11 / 28
11.しおらしい妹
しおりを挟む
目の前にいる妹のメセリアは、なんだかしおらしい。
私が部屋に招き入れると、ここに来るまでの勢いは消えて、そうなったのだ。
とりあえずリエネッタさんに紅茶を準備してもらったので、私はそれに口をつける。するとメセリアも、それに続いた。
「ううっ……」
「え?」
「ぐすっ……」
どう切り出すべきか、それに悩んでいた私は、メセリアの表情の動きに面食らった。
彼女は目や口を顔の中央に寄せて、その表情を歪めていた。それはまるで、泣くのを我慢しているかのようだ。
いや実際に、そういうことなのだろう。それを理解して私は、慌てながらもとりあえず声をかけることにした。
「ど、どうしたの?」
「だ、だって……」
「ああ、ちょっと……」
メセリアの目からは、涙が零れ始めていた。どうやら我慢することは、できなかったらしい。
私と十歳違う妹は、大人びた印象があると思っていた。しかし今は、ただの子供にしか思えない。そのギャップに戸惑いながらも、私はとりあえずメセリアの傍に寄る。
「どうしたの、メセリア……あなたが、そんなに急に泣き出すなんて」
「だって、お姉様が……いなくなって」
「それは……」
メセリアの言葉に、私は息を呑んだ。それはまったく、予想もしていない言葉だったからだ。
しかし妹が涙を流している原因は、私がいなくなったことにあるらしい。それを妹は悲しんで、再会したことで感情が露わになったということだろう。
それは私にとって、驚くべきことだった。メセリアが私に涙を流す程の情があったなんて、思ってもいなかったことである。
しかしこの涙が演技なんて訳はないだろうし、そういうことなのだろう。
「え、えっと、メセリア……」
「は、はい」
「ご、ごめんなさい。その、私……」
なんというか、急に罪悪感が湧いてきた。
つまり私は、身勝手な理由でいなくなって、まだ幼さが残る妹をこんな風に泣かせた訳だ。それは凡そ、最低である。知らなかったとはいえ、ひどいことをしてしまったものだ。
私はとりあえず、メセリアの体を抱き寄せる。そんな風にしたのは、初めてのことだ。しかし妹は、私に身を任せてきた。
「ごめんね、メセリア……」
「い、いえ、別に謝ってもらいたいとは、思っていませんから……」
メセリアは尚も、涙を流し続けていた。
これは落ち着くまで、しばらく待たなければならないかもしれない。
私は妹の背中をゆっくりと撫でる。泣き止むまで、いくらでもそうしていよう。メセリアを泣かせてしまったのは、私なのだから。
私が部屋に招き入れると、ここに来るまでの勢いは消えて、そうなったのだ。
とりあえずリエネッタさんに紅茶を準備してもらったので、私はそれに口をつける。するとメセリアも、それに続いた。
「ううっ……」
「え?」
「ぐすっ……」
どう切り出すべきか、それに悩んでいた私は、メセリアの表情の動きに面食らった。
彼女は目や口を顔の中央に寄せて、その表情を歪めていた。それはまるで、泣くのを我慢しているかのようだ。
いや実際に、そういうことなのだろう。それを理解して私は、慌てながらもとりあえず声をかけることにした。
「ど、どうしたの?」
「だ、だって……」
「ああ、ちょっと……」
メセリアの目からは、涙が零れ始めていた。どうやら我慢することは、できなかったらしい。
私と十歳違う妹は、大人びた印象があると思っていた。しかし今は、ただの子供にしか思えない。そのギャップに戸惑いながらも、私はとりあえずメセリアの傍に寄る。
「どうしたの、メセリア……あなたが、そんなに急に泣き出すなんて」
「だって、お姉様が……いなくなって」
「それは……」
メセリアの言葉に、私は息を呑んだ。それはまったく、予想もしていない言葉だったからだ。
しかし妹が涙を流している原因は、私がいなくなったことにあるらしい。それを妹は悲しんで、再会したことで感情が露わになったということだろう。
それは私にとって、驚くべきことだった。メセリアが私に涙を流す程の情があったなんて、思ってもいなかったことである。
しかしこの涙が演技なんて訳はないだろうし、そういうことなのだろう。
「え、えっと、メセリア……」
「は、はい」
「ご、ごめんなさい。その、私……」
なんというか、急に罪悪感が湧いてきた。
つまり私は、身勝手な理由でいなくなって、まだ幼さが残る妹をこんな風に泣かせた訳だ。それは凡そ、最低である。知らなかったとはいえ、ひどいことをしてしまったものだ。
私はとりあえず、メセリアの体を抱き寄せる。そんな風にしたのは、初めてのことだ。しかし妹は、私に身を任せてきた。
「ごめんね、メセリア……」
「い、いえ、別に謝ってもらいたいとは、思っていませんから……」
メセリアは尚も、涙を流し続けていた。
これは落ち着くまで、しばらく待たなければならないかもしれない。
私は妹の背中をゆっくりと撫でる。泣き止むまで、いくらでもそうしていよう。メセリアを泣かせてしまったのは、私なのだから。
574
あなたにおすすめの小説
訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果
柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。
彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。
しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。
「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」
逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。
あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。
しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。
気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……?
虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。
※小説家になろうに重複投稿しています。
王子様への置き手紙
あおた卵
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!
さら
恋愛
王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。
――でも、リリアナは泣き崩れなかった。
「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」
庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。
「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」
絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。
「俺は、君を守るために剣を振るう」
寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。
灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。
その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
ワザとダサくしてたら婚約破棄されたので隣国に行きます!
satomi
恋愛
ワザと瓶底メガネで三つ編みで、生活をしていたら、「自分の隣に相応しくない」という理由でこのフッラクション王国の王太子であられます、ダミアン殿下であらせられます、ダミアン殿下に婚約破棄をされました。
私はホウショウ公爵家の次女でコリーナと申します。
私の容姿で婚約破棄をされたことに対して私付きの侍女のルナは大激怒。
お父様は「結婚前に王太子が人を見てくれだけで判断していることが分かって良かった」と。
眼鏡をやめただけで、学園内での手の平返しが酷かったので、私は父の妹、叔母様を頼りに隣国のリーク帝国に留学することとしました!
甘やかされた欲しがり妹は~私の婚約者を奪おうとした妹が思わぬ展開に!
柚屋志宇
恋愛
「お姉様の婚約者ちょうだい!」欲しがり妹ルビーは、ついにサフィールの婚約者を欲しがった。
サフィールはコランダム子爵家の跡継ぎだったが、妹ルビーを溺愛する両親は、婚約者も跡継ぎの座もサフィールから奪いルビーに与えると言い出した。
サフィールは絶望したが、婚約者アルマンディンの助けでこの問題は国王に奏上され、サフィールとルビーの立場は大きく変わる。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
★2025/11/22:HOTランキング1位ありがとうございます。
王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。
これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。
しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。
それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。
事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。
妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。
故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる