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 私は、ウェリクス様とアルキーナ様の前ではっきりと宣言した。
 私を中庭に立たせていたのは、アルキーナ様。この証言により、彼女は窮地に立たされただろう。

「さて、まだ何か言いたいことがありますか?」
「……リメリア、取り消しなさい。そんな嘘は、許されることではありませんわよ」
「嘘ではありません。確かに、あなたが私を陥れた犯人です」
「あなた……」

 アルキーナ様は、私を睨みつけてきた。
 だが、もうその目に従ったりしない。私は、確固たる意志で彼女と戦うのだ。

「使用人に対する非道な行為。これは、許されることではありません」
「ウェリクス様、それは……」
「あなたが、自身の罪を認めないというなら、それでもいいでしょう。ただし、この件はきちんと各所に報告させていただきます。私の立ち会いの元、厳正なる調査が行われたなら、自ずと結論は出てくるでしょう」
「くっ……」

 ウェリクス様の言葉に、アルキーナ様は顔を歪めた。
 当然のことではあるが、彼女は犯行を隠すようなことを何もしていない。きちんと調査すれば、その犯行は明るみに出るだろう。
 ウェリクス様が立ち会うという言葉も、彼女にとっては嫌なものであるはずだ。圧倒的な権力を持つ者がいれば、色々と証言する人も出てくるはずだからである。

「当然のことながら、場合によってはあなたとの婚約は破棄させてもらいます……いや、敢えてここで言っておきましょう。あなたとは、婚約破棄させてもらいます」
「なっ……!」

 ウェリクス様は、アルキーナ様に婚約破棄を宣言した。
 私への不当な扱い。それが、婚約破棄の理由である。
 それは、至極全うな理由だ。王子にとって、その婚約破棄はそれ程痛手にならないだろう。
 一方、アルキーナ様やフェルリンド公爵家にとっては痛手である。犯罪者という肩書きを得て、王子との婚約は失われてしまう。大打撃といっても、過言ではない。

「あなたが……何故、こんなことをしたのか。それは、僕にはわかりません。ですが、その罪の重さというものを改めて考えてみてください。あなたの心に、まだ良心というものが欠片でも残っているなら……」
「……」

 ウェリクス様の言葉に、アルキーナ様は下を向いていた。
 恐らく、もう終わりだとか、そういうことを考えているのだろう。
 彼女に対して、同情する気持ちはない。自業自得でしかないと、思ってしまう。
 そんな私は、もしかしたら冷たいのかもしれない。でも、私はどうしてもそういう風に考えてしまうのだ。
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