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私は、フェルリンド公爵家の当主であるアルガーン様と話していた。
彼の話によって、アルキーナ様の心情が少しだけ理解できた。それで許せる訳ではないが、知らないよりは知っている方がいいだろう。
「よし、それでは、今後の話をするとしようか」
「今後の話?」
「はっきり言って、君はこの屋敷に居づらいだろう。色々とあったし、他の使用人との仲が良いとはいえないはずだ」
「え、ええ……」
そこで、アルガーン様は極めて明るくそんなことを言ってきた。
別に楽しい話ではないはずなのだが、どうしてこんなテンションなのだろうか。
でも、暗い話を明るく振る舞ってくれるのは、もしかしたらいいことなのかもしれない。その方が、気分的にもきっと楽なのではないだろうか。
「という訳で、君には新しい仕事を用意した。とある人物に話を持ち掛けた所、快く了承してくれたよ」
「えっと……それは、使用人としての仕事ということですか?」
「ああ、そうだ」
「それで、その人物とは?」
「君もよく知っている。ウェリクス殿下だよ」
「ウェリクス様が……?」
アルガーン様の言葉に、私はとても驚いていた。
ウェリクス様が了承した。ということは、私が働く場所というのは間違いなく王城である。
「私が、王城で?」
「そういうことになる。素質としては充分だろう。君は、このフェルリンド公爵家に代々仕えてきたマルーク家の人間なのだ」
「で、でも……」
「王城ということで怖がっているのかもしれないが、仕事としては公爵家とそこまで変わるということはない……ああ、もちろん、アルキーナからのような扱いをされるという訳ではないぞ?」
「え、ええ、それはわかっていますけど……」
王城で働く。まさか、そんなことになるとは思っていなかった。
だが、これはありがたい話である。この屋敷でこれ以上働くのは、正直難しいと思っていた所だ。この提案を受けない理由はない気がする。
「……すみません。動揺してしまいましたが、その話を受けさせてもらいたいです」
「ふむ、いきなり言ってしまったことについては、申し訳なかった。だが、心の整理ができたならよかった。それならば、私からウェリクス殿下、ひいては王城の方に連絡をしておこう」
「ありがとうございます」
私は、アルガーン様に頭を下げた。
彼は、本当に私を気遣ってくれている。それは恐らく、亡き母への思いがそうさせているのだろう。
「話は、これで終わりだ。君はしばらく休んでもらっていい。荷造りもしないといけないだろうからね?」
「あの……アルガーン様、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「何かね?」
「これから、フェルリンド公爵家はどうなるのでしょうか?」
私の質問に、アルガーン様は目を丸めていた。そんな質問をされるとは、思っていなかったのだろう。
しかし、マルーク家は代々フェルリンド公爵家に仕えてきた一家だ。その跡取りである私が、仕えてきた公爵家のことを心配するのは当然のことなのである。
「私は……今回の件の責任を取って、この公爵家の当主から下りるつもりだ。私の目も鈍ってしまった。後は息子に任せる方が賢明だと判断した。残りの人生は、この失態の補填に当てるつもりだ」
「補填……」
「君には非常に申し訳なく思っているが、アルキーナも助けなければならない。あれでも、私の娘なのでね。減刑を願うとしよう」
「そうですか……」
アルガーン様は、これから色々と忙しいようだ。本当に、アルキーナ様はとんでもないことをしてしまったようである。
「これから、フェルリンド公爵家は色々と変わっていくのだろう。だが、そこにマルーク家は関わらない。輝かしい使用人一家の歴史は、これからは別の者に仕えることで作ってくれ」
「……わかりました」
マルーク家の歴史は、フェルリンド公爵家の歴史だった。
だが、私の代でそれは変わる。主と使用人は、袂を分かつことになったのだ。
彼の話によって、アルキーナ様の心情が少しだけ理解できた。それで許せる訳ではないが、知らないよりは知っている方がいいだろう。
「よし、それでは、今後の話をするとしようか」
「今後の話?」
「はっきり言って、君はこの屋敷に居づらいだろう。色々とあったし、他の使用人との仲が良いとはいえないはずだ」
「え、ええ……」
そこで、アルガーン様は極めて明るくそんなことを言ってきた。
別に楽しい話ではないはずなのだが、どうしてこんなテンションなのだろうか。
でも、暗い話を明るく振る舞ってくれるのは、もしかしたらいいことなのかもしれない。その方が、気分的にもきっと楽なのではないだろうか。
「という訳で、君には新しい仕事を用意した。とある人物に話を持ち掛けた所、快く了承してくれたよ」
「えっと……それは、使用人としての仕事ということですか?」
「ああ、そうだ」
「それで、その人物とは?」
「君もよく知っている。ウェリクス殿下だよ」
「ウェリクス様が……?」
アルガーン様の言葉に、私はとても驚いていた。
ウェリクス様が了承した。ということは、私が働く場所というのは間違いなく王城である。
「私が、王城で?」
「そういうことになる。素質としては充分だろう。君は、このフェルリンド公爵家に代々仕えてきたマルーク家の人間なのだ」
「で、でも……」
「王城ということで怖がっているのかもしれないが、仕事としては公爵家とそこまで変わるということはない……ああ、もちろん、アルキーナからのような扱いをされるという訳ではないぞ?」
「え、ええ、それはわかっていますけど……」
王城で働く。まさか、そんなことになるとは思っていなかった。
だが、これはありがたい話である。この屋敷でこれ以上働くのは、正直難しいと思っていた所だ。この提案を受けない理由はない気がする。
「……すみません。動揺してしまいましたが、その話を受けさせてもらいたいです」
「ふむ、いきなり言ってしまったことについては、申し訳なかった。だが、心の整理ができたならよかった。それならば、私からウェリクス殿下、ひいては王城の方に連絡をしておこう」
「ありがとうございます」
私は、アルガーン様に頭を下げた。
彼は、本当に私を気遣ってくれている。それは恐らく、亡き母への思いがそうさせているのだろう。
「話は、これで終わりだ。君はしばらく休んでもらっていい。荷造りもしないといけないだろうからね?」
「あの……アルガーン様、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「何かね?」
「これから、フェルリンド公爵家はどうなるのでしょうか?」
私の質問に、アルガーン様は目を丸めていた。そんな質問をされるとは、思っていなかったのだろう。
しかし、マルーク家は代々フェルリンド公爵家に仕えてきた一家だ。その跡取りである私が、仕えてきた公爵家のことを心配するのは当然のことなのである。
「私は……今回の件の責任を取って、この公爵家の当主から下りるつもりだ。私の目も鈍ってしまった。後は息子に任せる方が賢明だと判断した。残りの人生は、この失態の補填に当てるつもりだ」
「補填……」
「君には非常に申し訳なく思っているが、アルキーナも助けなければならない。あれでも、私の娘なのでね。減刑を願うとしよう」
「そうですか……」
アルガーン様は、これから色々と忙しいようだ。本当に、アルキーナ様はとんでもないことをしてしまったようである。
「これから、フェルリンド公爵家は色々と変わっていくのだろう。だが、そこにマルーク家は関わらない。輝かしい使用人一家の歴史は、これからは別の者に仕えることで作ってくれ」
「……わかりました」
マルーク家の歴史は、フェルリンド公爵家の歴史だった。
だが、私の代でそれは変わる。主と使用人は、袂を分かつことになったのだ。
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