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馬車の旅は、特に問題なく終わった。
私達は無事に、目的地である王城に辿り着いたのだ。
これから働く場所を見上げながら、私は色々なことを思っていた。これから、どのようなことが待っているのだろうか。色々と不安はあるが、ここまで来たのだから、後はもう進むしかない。
「さて、こちらに来てください。王城の中を案内しますよ」
「ウェリクス様が?」
「ええ、何かご不満でも?」
「いえ、不満という訳ではありませんが……」
ウェリクス様の提案は、少しだけ不安が残るものだった。
王子によって、案内される。その図が、少しまずいものであるように思えたのだ。
きっと、彼は親切心でそういう行動をしているのだろう。だが、周りからどう見えるかという点については、考慮していないように思える。
「それでは、行きましょう」
「え、ええ……」
王子が、使用人を案内する。それは、端から見れば、おかしな光景だ。
そんな光景を見ている人達が、どのように思うのか。人によってそれぞれではあると思うが、私に対していい印象を覚える人は、恐らく少ないだろう。
「ウェリクス、帰ったのか?」
「え?」
そこで、ウェリクス様に話しかけてくる人がいた。
その人物は、私が知っている人だ。というよりも、国民なら大抵知っている人だと言った方が正しいだろう。
彼は、第二王子のレイドール様である。ウェリクス様の兄が、私達を迎えてくれたのだ。
もっとも、彼がここに来たの偶々だろう。言葉の感じから、それが読み取れる。
「兄上、ただいま帰りました。こちらが、今日からここで働くことになるリメリア・マルークさんです」
「リメリア・マルーク……かの有名なフェルリンド家に尽くしていたという使用人一家の者か。ふむ、なるほど」
「えっと……リメリア・マルークです。これから、よろしくお願いします」
「ああ、私のことは知っているだろうが、一応自己紹介しておこうか。レイドール・ストライナ。この国の第二王子である」
レイドール様は、少々大袈裟な身振り手振りを交えながら、私に自己紹介してくれた。
そんな彼の視線に、私は少し戸惑っている。なんというか、少し怪訝そうな目で、私を見ているのだ。
「ふん、なるほど、これがお前のお気に入りという訳か」
「お気に入り? 兄上、何を言っているのですか?」
「お前の彼女に対する扱いは、一使用人に対する扱いとは思えないが?」
「彼女には少々迷惑をかけました。これは、その償いです」
「償いか……お前らしい表現だ」
レイドール様は、少し悲しそうな瞳をしていた。
どうやら、彼は私がしていたような懸念を覚えているようだ。ウェリクス様の私の扱い。それが少し危ういと気づいているのだろう。
「お前は、昔から少し抜けている所があったな……人を疑うことはできるものの、お前はどちらかというと人間の善性を信ずる。それを愚かとは言わないが、今回の場合は悪く働きそうだ」
「兄上、どういうことですか?」
「リメリア・マルーク、我が弟の行いに対して、私は流石に少々心を痛めている。もし何かあれば、私が手を貸してやろう。弟の過ちを正すのも、兄の役目だ」
「え? あ、はい……ありがとうございます」
レイドール様は、私に対して少しだけ笑みを浮かべた。
明るい笑みという訳ではない少し不穏な笑みだ。
それは、私にこれから起こることを表しているのだろうか。これから、私が彼を頼る可能性は低いとは言い辛い。
だが、できることなら、王子の手は煩わしたくはないものである。
私達は無事に、目的地である王城に辿り着いたのだ。
これから働く場所を見上げながら、私は色々なことを思っていた。これから、どのようなことが待っているのだろうか。色々と不安はあるが、ここまで来たのだから、後はもう進むしかない。
「さて、こちらに来てください。王城の中を案内しますよ」
「ウェリクス様が?」
「ええ、何かご不満でも?」
「いえ、不満という訳ではありませんが……」
ウェリクス様の提案は、少しだけ不安が残るものだった。
王子によって、案内される。その図が、少しまずいものであるように思えたのだ。
きっと、彼は親切心でそういう行動をしているのだろう。だが、周りからどう見えるかという点については、考慮していないように思える。
「それでは、行きましょう」
「え、ええ……」
王子が、使用人を案内する。それは、端から見れば、おかしな光景だ。
そんな光景を見ている人達が、どのように思うのか。人によってそれぞれではあると思うが、私に対していい印象を覚える人は、恐らく少ないだろう。
「ウェリクス、帰ったのか?」
「え?」
そこで、ウェリクス様に話しかけてくる人がいた。
その人物は、私が知っている人だ。というよりも、国民なら大抵知っている人だと言った方が正しいだろう。
彼は、第二王子のレイドール様である。ウェリクス様の兄が、私達を迎えてくれたのだ。
もっとも、彼がここに来たの偶々だろう。言葉の感じから、それが読み取れる。
「兄上、ただいま帰りました。こちらが、今日からここで働くことになるリメリア・マルークさんです」
「リメリア・マルーク……かの有名なフェルリンド家に尽くしていたという使用人一家の者か。ふむ、なるほど」
「えっと……リメリア・マルークです。これから、よろしくお願いします」
「ああ、私のことは知っているだろうが、一応自己紹介しておこうか。レイドール・ストライナ。この国の第二王子である」
レイドール様は、少々大袈裟な身振り手振りを交えながら、私に自己紹介してくれた。
そんな彼の視線に、私は少し戸惑っている。なんというか、少し怪訝そうな目で、私を見ているのだ。
「ふん、なるほど、これがお前のお気に入りという訳か」
「お気に入り? 兄上、何を言っているのですか?」
「お前の彼女に対する扱いは、一使用人に対する扱いとは思えないが?」
「彼女には少々迷惑をかけました。これは、その償いです」
「償いか……お前らしい表現だ」
レイドール様は、少し悲しそうな瞳をしていた。
どうやら、彼は私がしていたような懸念を覚えているようだ。ウェリクス様の私の扱い。それが少し危ういと気づいているのだろう。
「お前は、昔から少し抜けている所があったな……人を疑うことはできるものの、お前はどちらかというと人間の善性を信ずる。それを愚かとは言わないが、今回の場合は悪く働きそうだ」
「兄上、どういうことですか?」
「リメリア・マルーク、我が弟の行いに対して、私は流石に少々心を痛めている。もし何かあれば、私が手を貸してやろう。弟の過ちを正すのも、兄の役目だ」
「え? あ、はい……ありがとうございます」
レイドール様は、私に対して少しだけ笑みを浮かべた。
明るい笑みという訳ではない少し不穏な笑みだ。
それは、私にこれから起こることを表しているのだろうか。これから、私が彼を頼る可能性は低いとは言い辛い。
だが、できることなら、王子の手は煩わしたくはないものである。
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