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私は、ウェリクス様の告白を受け入れた。
こうして、私達は晴れて婚約者になることができたのである。
「えっと……嬉しいですね、なんだか……」
数秒、いや数分の沈黙の後、ウェリクス様がそう呟いた。
何を話していいかわからなかったので、この言葉はありがたい。
「ええ、そうですね……」
色々と言いたいことはあったはずだが、私の口から出るのはそんな言葉だけだった。
こういう時に、すぐに切り替えるにはどうしたいいのだろうか。いや、切り替えることなどできないのが、人間なのかもしれない。
「ああ、そうだ。あなたが貴族になった経緯を説明しなければなりませんね」
「え? あっ……ええ、そうですね。お願いします」
ウェリクス様の言葉に、私は思い出した。そういえば、私が貴族になった事情を彼は話してくれるのだった。
だが、最早それは必要ないことである。私も、大方の事情は知っているからだ。
しかし、私は敢えて聞くことにした。その話をしている間に、お互いに落ち着けるのではないかと思ったからだ。
「平民と王族が結ばれることは、非常に難しいことです。ですが、あなたが貴族であるならば、それは変わります。まあ、難しいことには変わりないのかもしれませんが、それでも天と地の差があると思います」
「でも、急に貴族になった私が王子の妻になってもいいのでしょうか?」
「それは、問題ないと思います。そもそも、マルーク家は有名な一家です。貴族の地位を与えることに反対する者は、そういないでしょう。フェルリンド公爵家の繁栄を支えた者。例え、今はその公爵家が落ちぶれているとしても、その評価は変わりませんよ」
「そうですか……」
ウェリクス様との会話は、それ程頭の中に入ってこなかった。
きちんと聞いてはいるが、どこか心が離れている。そんな感覚だった。
それを自覚することができて、私は自分が落ち着けていることに気がついた。どうやら、目論見通り、会話で冷静さを取り戻せたようだ。
「えっと……とりあえず、どうしょうましょうか?」
「どうしましょうか? えっと……」
「あ、レイドール様に報告するべきでしょうか? お礼も言わないといけませんし……」
「ああ、そうですね。そうしましょうか」
しかし、その落ち着きは一気に吹き飛んでしまった。
彼と会話すると、どうしても意識してしまう。しばらくは、この胸の高鳴りを抑えることはできないのかもしれない。
「それでは、行きましょうか?」
「え? は、はい……」
ウェリクス様から差し出された手を、私はゆっくりと取った。
手を繋いで彼の温もりを感じると、誰かに見られたらまずいなんて考えは吹き飛んだ。このまま歩いて行きたい。その感情しか残らなかった。
「あの、ウェリクス様……」
「なんでしょうか?」
「不束な者ですが、これからよろしくお願いします」
「……いえ、こちらこそ、よろしくお願いします」
私達は、お互いに照れながら挨拶をした。その恥ずかしい空気が、今はとても心地よかった。きっと、これからもそれは心地よいのだろう。
私達は、ゆっくりと歩き始めた。お互いの温もりをその手に感じながら、ただゆっくりと歩いた。
これからも、困難はあるかもしれない。でも、きっと大丈夫だ。隣に彼がいる限り、私に立ち向かえない困難なんてないのだから。
こうして、私達は晴れて婚約者になることができたのである。
「えっと……嬉しいですね、なんだか……」
数秒、いや数分の沈黙の後、ウェリクス様がそう呟いた。
何を話していいかわからなかったので、この言葉はありがたい。
「ええ、そうですね……」
色々と言いたいことはあったはずだが、私の口から出るのはそんな言葉だけだった。
こういう時に、すぐに切り替えるにはどうしたいいのだろうか。いや、切り替えることなどできないのが、人間なのかもしれない。
「ああ、そうだ。あなたが貴族になった経緯を説明しなければなりませんね」
「え? あっ……ええ、そうですね。お願いします」
ウェリクス様の言葉に、私は思い出した。そういえば、私が貴族になった事情を彼は話してくれるのだった。
だが、最早それは必要ないことである。私も、大方の事情は知っているからだ。
しかし、私は敢えて聞くことにした。その話をしている間に、お互いに落ち着けるのではないかと思ったからだ。
「平民と王族が結ばれることは、非常に難しいことです。ですが、あなたが貴族であるならば、それは変わります。まあ、難しいことには変わりないのかもしれませんが、それでも天と地の差があると思います」
「でも、急に貴族になった私が王子の妻になってもいいのでしょうか?」
「それは、問題ないと思います。そもそも、マルーク家は有名な一家です。貴族の地位を与えることに反対する者は、そういないでしょう。フェルリンド公爵家の繁栄を支えた者。例え、今はその公爵家が落ちぶれているとしても、その評価は変わりませんよ」
「そうですか……」
ウェリクス様との会話は、それ程頭の中に入ってこなかった。
きちんと聞いてはいるが、どこか心が離れている。そんな感覚だった。
それを自覚することができて、私は自分が落ち着けていることに気がついた。どうやら、目論見通り、会話で冷静さを取り戻せたようだ。
「えっと……とりあえず、どうしょうましょうか?」
「どうしましょうか? えっと……」
「あ、レイドール様に報告するべきでしょうか? お礼も言わないといけませんし……」
「ああ、そうですね。そうしましょうか」
しかし、その落ち着きは一気に吹き飛んでしまった。
彼と会話すると、どうしても意識してしまう。しばらくは、この胸の高鳴りを抑えることはできないのかもしれない。
「それでは、行きましょうか?」
「え? は、はい……」
ウェリクス様から差し出された手を、私はゆっくりと取った。
手を繋いで彼の温もりを感じると、誰かに見られたらまずいなんて考えは吹き飛んだ。このまま歩いて行きたい。その感情しか残らなかった。
「あの、ウェリクス様……」
「なんでしょうか?」
「不束な者ですが、これからよろしくお願いします」
「……いえ、こちらこそ、よろしくお願いします」
私達は、お互いに照れながら挨拶をした。その恥ずかしい空気が、今はとても心地よかった。きっと、これからもそれは心地よいのだろう。
私達は、ゆっくりと歩き始めた。お互いの温もりをその手に感じながら、ただゆっくりと歩いた。
これからも、困難はあるかもしれない。でも、きっと大丈夫だ。隣に彼がいる限り、私に立ち向かえない困難なんてないのだから。
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