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 ルグファド様の言葉に、私は訳がわからなくなっていた。
 とりあえず、私は深呼吸する。まずは落ち着くことにしたのだ。
 彼が言ったことを冷静に考えてみることにする。婚約破棄が、ドッキリだった。彼は、確かにそう言ったはずだ。
 ということは、婚約破棄は嘘だったということになる。なるほど、あの婚約破棄はそういうことだったのか。

「はあっ!?」

 当然のことながら、私はまったく納得できなかった。あれが、ドッキリ。そんなことを言われて、「はい、そうですか」なんて言えるはずがない。

「おいおい、どうしたんだ? そんなに声をあげて……やっぱり、驚いたのか?」
「驚いたって、あなたは自分が何をしたかわかっているのですか?」
「いや、悲しかったのはわかる。それについては、申し訳ないと思っている。でも、一度こういうことをやってみたかったんだよ」

 ルグファド様は、何故かにこにこしていた。この表情は、今まで何度も見たことがある。自分のことしか考えない彼は、相手のことを気にせず、こういう風に笑うのだ。
 その笑みに、私は怒りを覚えていた。今まで我慢していたが、これは流石に許せない。積もりに積もった分を、今ここで晴らしてもいいのではないだろうか。

「安心してくれ。君との婚約は、引き続ききちんと継続させてもらう。僕と別れるなんてことはないのだ」
「……」
「どうした? 嬉しくて言葉も出ないのか?」

 私に対して、ルグファド様は意味がわからないことを言ってきた。
 この人は、自意識過剰だ。私が、彼との婚約破棄を悲しんでいたことは確かだが、それは家同士の関係を考えてのことである。決して、今彼が思っているような好意を持っているからという理由ではない。
 昔から、ルグファド様は勘違いをしている。彼は、私が好意を持っていると思っている節があるのだ。
 元々、それは気に入らなかった。本当に、この人はどうしようもない人なのである。

「……ルグファド様、あなたはいくつか勘違いをしているようですね?」
「え? なんだって?」
「ですが、そんなことは最早どうでもいいことです。あなたに言いたいことはただ一つ。私はこの場で、あなたとの婚約を破棄すると宣言します」
「……何?」

 彼の勘違いを解くことはできない。長年の経験から、それはわかっていた。
 そのため、そのことについてはおいておくことにした。一番重要なのは、私と彼との婚約を破棄することだ。
 こんなドッキリをする人と、これから婚約を続けていくなんてはっきり言って無理である。あれが嘘だったとしても、彼との婚約は破棄したい。それが、今の私の正直な気持ちなのだ。
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