私に聖女は荷が重いようなので田舎に帰らせてもらいます。

木山楽斗

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15.村長への報告

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 村に戻った私とロヴァイドは、村長に魔物のことを伝えておいた。
 村長は、凶悪な魔物が現れたことに驚いたり、その魔物が既に討伐されたことに安心したり、そしてロヴァイドの予想に眉を寄せたりしながら話を聞いてくれた。

「グラムダの村の若者が、修行してくると言ったきり帰っていないという噂を最近耳にしたのう。もしかしたら、その若者がヴァオールの被害者かもしれない」
「まあ、先程のは俺の推測ですから、なんともいえませんが……」
「うむ、前例もある訳じゃしな……とはいえ、それを前提としてあちらの村に伝えていいものかどうか」

 ロヴァイドは、このような報告には慣れているようだ。村長と話すことに特に緊張することすらなく、すらすらと言葉を述べている。
 一方で、私は少しだけ固まっていた。王都でもっと位の高い人達と接していたはずなのに、何故か緊張してしまっているのだ。
 その理由は、なんとなくわかっている。小さな頃の印象が抜けきっていないのだろう。

「死体から何か出て来れば、話は別じゃったかもしれないが……」
「ええ、まあ、先程の予測は伝えなくてもいいでしょう。ただヴァオールが下りて来たと、そう各地の村に伝えてください。俺と同じような予測をする人はいるでしょうし……」
「なるほど、確かに考えてみればそうじゃのう」

 カルックは小さな村であり、皆が助け合って暮らしている村だ。
 少し範囲を広げても、それは変わらない。この辺りにある村は、皆協力関係にあるのだ。
 それなりに離れてはいるが、強力な魔物が出たら連絡し合って危険を知らせる。それが当たり前なのだ。

「すみません。私が魔物を焼き尽くしたせいで……」
「いや、それは悔やむことではない。危険な存在を迅速に排除したお主には、むしろ感謝したい。もしもお主がいなかったら、この村もそれなりの被害を受けていたかもしれぬ」
「でも、もっといい倒し方があったように思えてしまって……」
「それは、簡単に倒せたからそう思うというだけじゃろう。まあ、お主が気にすることではない」

 村長も、私のことを責めようとはしなかった。
 自分でも、あの判断はそれ程間違っていた訳ではないと理解はしている。
 ただ、もしも行方不明の若者の手がかりがあったなら、私はそれを消してしまった。それは、その若者のご家族に申し訳ない。

「さて、まあ仮にヴァオールがそういった理由で山から下りて来たならその一頭で終わりということになるが、そうでない場合は問題じゃのう」
「ええ、食料がなくなった場合は、非常に危険な状態だといえるでしょう。そちらに関しては、あまり可能性は高くありませんが」
「もう一つ考えられるとしたら、ヴァオールでも敵わない魔物が山に現れたという場合か」
「確かにその可能性もあると思います。まあ、どんな理由があったとしても、しばらくは警戒しておいた方がよいかと」
「うむ、そうするべきじゃろうな」

 そんなことを考えている内に、村長とロヴァイドの話はまとまった。
 こうして、村はしばらく警戒態勢を敷くことになったのだった。
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