私に聖女は荷が重いようなので田舎に帰らせてもらいます。

木山楽斗

文字の大きさ
16 / 24

16.手遅れな状態(モブ視点)

しおりを挟む
 第三王子であるドルマールは、驚愕していた。
 自分に逆らう不穏分子を消し去る。そう考えた彼は、一連の首謀者であるトルフェリア・エーケンシスの殺害を企てた。
 しかし、その目論見は失敗した。ドルマールが送り込んだ暗殺者は返り討ちにされてしまったのだ。

「くそっ……!」

 暗殺者を返り討ちにしたのは、兄であるダルガリスが率いている騎士団の人間だった。
 トルフェリアのことを騎士団が極秘で護衛していた。その事実から、ドルマールは一つの推測をする。

「兄上め! 僕を嵌めやがったな!」

 トルフェリアが危険であると教えたダルガリスが護衛を用意していた。それはつまり、一連の流れが仕組まれていたということである。
 それにまんまと引っかかった。その事実にドルマールは屈辱を覚えていた。プライドの高い彼にとって、それは許せないことだったのだ。

「失礼する」
「む? 誰だ?」
「私だ。ドルマール。お前の兄であるダルガリスだ」
「兄上? ……何をしに来た!」
「ふん……」

 そんな彼の元をダルガリスが訪ねて来た。後ろには騎士団もいる。それが何を意味するかは、ドルマールにも理解できた。
 だが、ドルマールは疑問を覚えていた。確かに自分の目論見は失敗したが、どうしてこの状況になったかがわからないのだ。

「兄上、一体どういうことですか?」
「トルフェリア嬢を狙った暗殺者が吐いた。今回の件の首謀者はお前であると」
「なっ……」
「故に、俺はお前を捕まえに来た。身内だからといって、容赦はしない。お前の悪行を白日の元に晒して、裁きを与える。それが王族としての俺の覚悟だ」

 暗殺者が自分の名前を吐く。それは、あり得ないことである。
 依頼主の名前を絶対に吐かない。それが暗殺者というものだ。いくら捕まったからといって、自分の名前が出てくるなんてあり得ない。

「兄上、まさか暗殺者の言い分を信じるのですか?」
「ほう?」
「奴らは依頼主の名前なんて口が裂けても言わないでしょう? もしも仮に僕の名前が出てきたのだとしたら、それはブラフでしかない。兄上は、そんなこともわからないのですか?」
「往生際の悪い奴だな……お前はもう終わりなんだ。諦めろ」
「何を言って……あ、ああ!」

 そこで、ドルマールは絶望的な表情を浮かべることになった。
 ダルガリスが率いる騎士団の中に、見知った顔がいた。それは、ドルマールが雇った暗殺者である。
 それを見て、彼は理解する。既に自分は四方を囲まれた状態なのだと。全ては、ダルガリスの手の内。つまり手遅れなのだと。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

完結 私の人生に貴方は要らなくなった

音爽(ネソウ)
恋愛
同棲して3年が過ぎた。 女は将来に悩む、だが男は答えを出さないまま…… 身を固める話になると毎回と聞こえない振りをする、そして傷つく彼女を見て男は満足そうに笑うのだ。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

【完結】婚約破棄して泥を投げつけた元婚約者が「無能」と笑う中、光り輝く幼なじみの王子に掠め取られました。

ムラサメ
恋愛
​「お前のような無能、我が家には不要だ。今すぐ消えろ!」 ​婚約者・エドワードのために身を粉にして尽くしてきたフィオナは、卒業パーティーの夜、雨の中に放り出される。 泥にまみれ、絶望に沈む彼女の前に現れたのは、かつての幼なじみであり、今や国中から愛される「黄金の王子」シリルだった。 ​「やっと見つけた。……ねえ、フィオナ。あんなゴミに君を傷つけさせるなんて、僕の落ち度だね」 ​汚れを厭わずフィオナを抱き上げたシリルは、彼女を自分の屋敷へと連れ帰る。 「自分には価値がない」と思い込むフィオナを、シリルは異常なまでの執着と甘い言葉で、とろけるように溺愛し始めて――。 ​一方で、フィオナを捨てたエドワードは気づいていなかった。 自分の手柄だと思っていた仕事も、領地の繁栄も、すべてはフィオナの才能によるものだったということに。 ボロボロになっていく元婚約者。美しく着飾られ、シリルの腕の中で幸せに微笑むフィオナ。 ​「僕の星を捨てた報い、たっぷりと受けてもらうよ?」 ​圧倒的な光を放つ幼なじみによる、最高に華やかな逆転劇がいま始まる!

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····

藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」 ……これは一体、どういう事でしょう? いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。 ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全6話で完結になります。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

処理中です...