「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵令息から溺愛されています。

木山楽斗

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45.事実を知って

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「俺が奴から聞いたことは以上だ」
「……」

 アルベルドお兄様の言葉に、私は何も言い返すことができなかった。
 何を言うべきか、何を言っていいのか、それがわからなかったのだ。アルベルドお兄様が話した内容は、私にとってはそういうものだった。

「アルベルド、それは本当なのか?」
「物的な証拠もある。カルディアス、お前が王家の捜査能力を疑っているというなら、話は別ではあるが……」
「……本当、なんだな」

 衝撃を受けたのは、カルディアスも同じだったようだ。
 それは当然のことかもしれない。彼はもしかしたら私以上に、ジグールに対して怒りを覚えてくれていたのだろうから。

 私としても、すぐに心の整理がつくようなことではない。
 ジグール・オルバディオン、結婚してから三年間もの間私を冷遇してきた彼に対して、当然思う所はあった。

 しかし彼は、自らの謀反を王家に伝え、さらには自分を刺したのである。その事実は、彼の行動の意味合いを変えるものだ。

「アルベルドお兄様、つまり彼は自らを犠牲にすることで……この国を守ろうとした、ということなのですよね?」
「そういうことに、なるのだろうな……」
「私への対応も……彼にとっては、その一環だったのでしょうか?」
「それについては、特に聞いてはいない。だが奴の目的から、そう考えることはできるだろう」
「そう、ですよね……」

 ジグールは自らの破滅を持って、オルバディオン公爵家を含む王家への反発勢力を抑え込もうとしていた。
 そんな彼にとって、私を厚遇することは計画の妨げになりかねないことだ。単純に計画を知られる可能性もある以上、鳥籠の中に閉じ込めておくのが得策だったのかもしれない。

 それは私にとって、納得できることではない。ただ、理解することはできる。大義を背負うために、何かを犠牲にする。それは時に必要なことだ。王家の一人として、それはわかっている。

「エリーム、大丈夫かい?」
「あ、うん……」

 様々な感情が渦巻く中、私はカルディアスの言葉で少しだけ冷静になることができた。
 ジグールの行いに対して、納得する必要があるという訳ではない。それはもう、終わったことだ。
 過去を振り返るのは、後からでもできる。今は前を向かなければならないだろう。問題が解決した訳ではないのだから。

「アルベルドお兄様、ジグールに関して、どのような対応をするつもりなのでしょうか?」
「……奴がやろうとしたことを、俺は肯定するつもりはない。しかし、それは王家にとって、大いに利用できることだ」
「利用……アルベルドお兄様、まさか」
「奴にはこのまま、謀反を企てた者として死んでもらう。それでコルステル王国は、盤石なものになるのだからな」

 アルベルドお兄様の言葉に、私はカルディアスとともに顔を見合わせた。
 ジグールがしたことは、納得できるものではない。しかしそこには、確かな大義があった。にも関わらず、お兄様は彼を亡き者にしようというのだろうか。
 それが王家にとって最も都合が良いことであったとしても、それこそ納得できるものではない。
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