45 / 47
45.事実を知って
しおりを挟む
「俺が奴から聞いたことは以上だ」
「……」
アルベルドお兄様の言葉に、私は何も言い返すことができなかった。
何を言うべきか、何を言っていいのか、それがわからなかったのだ。アルベルドお兄様が話した内容は、私にとってはそういうものだった。
「アルベルド、それは本当なのか?」
「物的な証拠もある。カルディアス、お前が王家の捜査能力を疑っているというなら、話は別ではあるが……」
「……本当、なんだな」
衝撃を受けたのは、カルディアスも同じだったようだ。
それは当然のことかもしれない。彼はもしかしたら私以上に、ジグールに対して怒りを覚えてくれていたのだろうから。
私としても、すぐに心の整理がつくようなことではない。
ジグール・オルバディオン、結婚してから三年間もの間私を冷遇してきた彼に対して、当然思う所はあった。
しかし彼は、自らの謀反を王家に伝え、さらには自分を刺したのである。その事実は、彼の行動の意味合いを変えるものだ。
「アルベルドお兄様、つまり彼は自らを犠牲にすることで……この国を守ろうとした、ということなのですよね?」
「そういうことに、なるのだろうな……」
「私への対応も……彼にとっては、その一環だったのでしょうか?」
「それについては、特に聞いてはいない。だが奴の目的から、そう考えることはできるだろう」
「そう、ですよね……」
ジグールは自らの破滅を持って、オルバディオン公爵家を含む王家への反発勢力を抑え込もうとしていた。
そんな彼にとって、私を厚遇することは計画の妨げになりかねないことだ。単純に計画を知られる可能性もある以上、鳥籠の中に閉じ込めておくのが得策だったのかもしれない。
それは私にとって、納得できることではない。ただ、理解することはできる。大義を背負うために、何かを犠牲にする。それは時に必要なことだ。王家の一人として、それはわかっている。
「エリーム、大丈夫かい?」
「あ、うん……」
様々な感情が渦巻く中、私はカルディアスの言葉で少しだけ冷静になることができた。
ジグールの行いに対して、納得する必要があるという訳ではない。それはもう、終わったことだ。
過去を振り返るのは、後からでもできる。今は前を向かなければならないだろう。問題が解決した訳ではないのだから。
「アルベルドお兄様、ジグールに関して、どのような対応をするつもりなのでしょうか?」
「……奴がやろうとしたことを、俺は肯定するつもりはない。しかし、それは王家にとって、大いに利用できることだ」
「利用……アルベルドお兄様、まさか」
「奴にはこのまま、謀反を企てた者として死んでもらう。それでコルステル王国は、盤石なものになるのだからな」
アルベルドお兄様の言葉に、私はカルディアスとともに顔を見合わせた。
ジグールがしたことは、納得できるものではない。しかしそこには、確かな大義があった。にも関わらず、お兄様は彼を亡き者にしようというのだろうか。
それが王家にとって最も都合が良いことであったとしても、それこそ納得できるものではない。
「……」
アルベルドお兄様の言葉に、私は何も言い返すことができなかった。
何を言うべきか、何を言っていいのか、それがわからなかったのだ。アルベルドお兄様が話した内容は、私にとってはそういうものだった。
「アルベルド、それは本当なのか?」
「物的な証拠もある。カルディアス、お前が王家の捜査能力を疑っているというなら、話は別ではあるが……」
「……本当、なんだな」
衝撃を受けたのは、カルディアスも同じだったようだ。
それは当然のことかもしれない。彼はもしかしたら私以上に、ジグールに対して怒りを覚えてくれていたのだろうから。
私としても、すぐに心の整理がつくようなことではない。
ジグール・オルバディオン、結婚してから三年間もの間私を冷遇してきた彼に対して、当然思う所はあった。
しかし彼は、自らの謀反を王家に伝え、さらには自分を刺したのである。その事実は、彼の行動の意味合いを変えるものだ。
「アルベルドお兄様、つまり彼は自らを犠牲にすることで……この国を守ろうとした、ということなのですよね?」
「そういうことに、なるのだろうな……」
「私への対応も……彼にとっては、その一環だったのでしょうか?」
「それについては、特に聞いてはいない。だが奴の目的から、そう考えることはできるだろう」
「そう、ですよね……」
ジグールは自らの破滅を持って、オルバディオン公爵家を含む王家への反発勢力を抑え込もうとしていた。
そんな彼にとって、私を厚遇することは計画の妨げになりかねないことだ。単純に計画を知られる可能性もある以上、鳥籠の中に閉じ込めておくのが得策だったのかもしれない。
それは私にとって、納得できることではない。ただ、理解することはできる。大義を背負うために、何かを犠牲にする。それは時に必要なことだ。王家の一人として、それはわかっている。
「エリーム、大丈夫かい?」
「あ、うん……」
様々な感情が渦巻く中、私はカルディアスの言葉で少しだけ冷静になることができた。
ジグールの行いに対して、納得する必要があるという訳ではない。それはもう、終わったことだ。
過去を振り返るのは、後からでもできる。今は前を向かなければならないだろう。問題が解決した訳ではないのだから。
「アルベルドお兄様、ジグールに関して、どのような対応をするつもりなのでしょうか?」
「……奴がやろうとしたことを、俺は肯定するつもりはない。しかし、それは王家にとって、大いに利用できることだ」
「利用……アルベルドお兄様、まさか」
「奴にはこのまま、謀反を企てた者として死んでもらう。それでコルステル王国は、盤石なものになるのだからな」
アルベルドお兄様の言葉に、私はカルディアスとともに顔を見合わせた。
ジグールがしたことは、納得できるものではない。しかしそこには、確かな大義があった。にも関わらず、お兄様は彼を亡き者にしようというのだろうか。
それが王家にとって最も都合が良いことであったとしても、それこそ納得できるものではない。
272
あなたにおすすめの小説
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
お望み通り、別れて差し上げます!
珊瑚
恋愛
「幼なじみと子供が出来たから別れてくれ。」
本当の理解者は幼なじみだったのだと婚約者のリオルから突然婚約破棄を突きつけられたフェリア。彼は自分の家からの支援が無くなれば困るに違いないと思っているようだが……?
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
もうあなた達を愛する心はありません
佐藤 美奈
恋愛
セラフィーナ・リヒテンベルクは、公爵家の長女として王立学園の寮で生活している。ある午後、届いた手紙が彼女の世界を揺るがす。
差出人は兄ジョージで、内容は母イリスが兄の妻エレーヌをいびっているというものだった。最初は信じられなかったが、手紙の中で兄は母の嫉妬に苦しむエレーヌを心配し、セラフィーナに助けを求めていた。
理知的で優しい公爵夫人の母が信じられなかったが、兄の必死な頼みに胸が痛む。
セラフィーナは、一年ぶりに実家に帰ると、母が物置に閉じ込められていた。幸せだった家族の日常が壊れていく。魔法やファンタジー異世界系は、途中からあるかもしれません。
離婚した彼女は死ぬことにした
はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
旦那様は離縁をお望みでしょうか
村上かおり
恋愛
ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。
けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。
バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる