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10.冷静に考えると
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「冷静に考えればわかることだと思うが、ことが重大であるため、君であってもそんな余裕はなかったということだろうか。聖女エムリーナは、君を排除するために今回の事件を起こしたのだ」
「……」
ゼルフォン殿下は、私の目を真っ直ぐに見てきた。
その視線に、私は少し冷静になる。それによって、考える余裕ができた。
今回の件が、聖女エムリーナの思惑。それを前提に、改めて考えてみると、色々と見えてくるものがある。
そういえば、エムリーナ様はやけに上機嫌だった。それがそもそも、おかしな話だ。
その時私は、確かに違和感を抱いていた。あの違和感を、私はもっと大事にするべきだったのかもしれない。
「改めて振り返ってみると、今回の結界は不安定過ぎました。あれは誰かが何かしらの細工をしていないと、あり得ません。それに、エムリーナ様はやけに強引に結界を張っていた。思えば変な話でした」
「なるほど、やはりそういった違和感があったか」
「ええ、色々とあります。どうして気づかなかったのか、不思議なくらいです」
エムリーナ様は、何かしらの思惑を持ってあの場にいた。
私はそのことを改めて認識していた。それに気付けなかったのは、不覚としか言いようがない。
私はまんまと嵌められてしまったのだ。エムリーナ様の思惑通りに、ことは進んでいる。それはきっと、まずいことであるだろう。
しかしそこで私は、あることが気になった。
今回の出来事がエムリーナ様の差し金であるとしたら、おかしな点があるのだ。
「……待ってください。エムリーナ様の差し金だとしたら、彼女は自らも破滅に向かっているということになりますよ? それはおかしいではありませんか」
「うむ……」
「ゼルフォン殿下?」
私の言葉に、ゼルフォン殿下は唸っていた。
それはなんというか、微妙な反応である。どういう意味の唸りなのだろうか。
「聖女エムリーナが今どのような主張をしているのか、君に伝えておく必要があるな」
「……はい。是非ともお願いします」
「彼女は、今回の件に関する責任は君にあると主張している。今回の件は、君のミスであり自分には責任はないと」
「な、なんですって?」
ゼルフォン殿下から伝えられたエムリーナ様の主張は、意味がわからないものだった。
確かに古い結界を崩壊させたのは私である。だが、だからといって私だけの責任になるはずはない。エムリーナ様にも、確実に責任はある。
「おかしな主張だとしか言いようがないな……呆れた言い分だ」
ゼルフォン殿下は、笑みを浮かべていた。
やはり彼からしても、エムリーナ様の主張は訳がわからないものであるようだ。
「……」
ゼルフォン殿下は、私の目を真っ直ぐに見てきた。
その視線に、私は少し冷静になる。それによって、考える余裕ができた。
今回の件が、聖女エムリーナの思惑。それを前提に、改めて考えてみると、色々と見えてくるものがある。
そういえば、エムリーナ様はやけに上機嫌だった。それがそもそも、おかしな話だ。
その時私は、確かに違和感を抱いていた。あの違和感を、私はもっと大事にするべきだったのかもしれない。
「改めて振り返ってみると、今回の結界は不安定過ぎました。あれは誰かが何かしらの細工をしていないと、あり得ません。それに、エムリーナ様はやけに強引に結界を張っていた。思えば変な話でした」
「なるほど、やはりそういった違和感があったか」
「ええ、色々とあります。どうして気づかなかったのか、不思議なくらいです」
エムリーナ様は、何かしらの思惑を持ってあの場にいた。
私はそのことを改めて認識していた。それに気付けなかったのは、不覚としか言いようがない。
私はまんまと嵌められてしまったのだ。エムリーナ様の思惑通りに、ことは進んでいる。それはきっと、まずいことであるだろう。
しかしそこで私は、あることが気になった。
今回の出来事がエムリーナ様の差し金であるとしたら、おかしな点があるのだ。
「……待ってください。エムリーナ様の差し金だとしたら、彼女は自らも破滅に向かっているということになりますよ? それはおかしいではありませんか」
「うむ……」
「ゼルフォン殿下?」
私の言葉に、ゼルフォン殿下は唸っていた。
それはなんというか、微妙な反応である。どういう意味の唸りなのだろうか。
「聖女エムリーナが今どのような主張をしているのか、君に伝えておく必要があるな」
「……はい。是非ともお願いします」
「彼女は、今回の件に関する責任は君にあると主張している。今回の件は、君のミスであり自分には責任はないと」
「な、なんですって?」
ゼルフォン殿下から伝えられたエムリーナ様の主張は、意味がわからないものだった。
確かに古い結界を崩壊させたのは私である。だが、だからといって私だけの責任になるはずはない。エムリーナ様にも、確実に責任はある。
「おかしな主張だとしか言いようがないな……呆れた言い分だ」
ゼルフォン殿下は、笑みを浮かべていた。
やはり彼からしても、エムリーナ様の主張は訳がわからないものであるようだ。
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