私を陥れたつもりのようですが、責任を取らされるのは上司である聖女様ですよ。本当に大丈夫なんですか?

木山楽斗

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9.重大な失敗

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 オーロンド王国の王都を守る結界が崩壊したという事実は、すぐに上層部まで伝わることになった。
 ことは重大である。一瞬できた隙によって、この王都は混乱するかもしれない。

 そんな出来事を引き起こした一員である私は、ゼルフォン殿下の元へ連れて来られていた。
 彼の前で、私は怯えることしかできない。いくらなんでも、ひどすぎる失敗をしたからだ。

「……この世の終わりのような顔をしているな?」
「……」
「まあ、仕方ないことだろうか。ことの大きさを理解しているならば、そういう顔にもならざるを得ない」

 ゼルフォン殿下は、私の前でゆっくりとため息をついた。
 そのため息に、私は体を震わせてしまう。これからどうなるかわからないという恐怖が、自然と私の体を動かしたのだ。

「しかし安心しろ。俺は君のことを咎めようとは思っていない。というよりも、俺に君は咎められない。それは君が一番よくわかっていることではないのか?」
「あっ……」

 ゼルフォン殿下は、笑みを浮かべながら重要なことを指摘してきた。
 その言葉で私は思い出す。私と彼との間には、約束を破れないという魔法の契約が交わされているのだと。

 その契約によって、ゼルフォン殿下は私の安全を保障しなければならない。
 例えどのようなことがあっても、彼は私のことを助けざるを得ないのだ。

 それに関しては、まったく想定していなかった副産物である。
 まさかこんな時に役に立つなんて、思ってもいなかった。

「もっとも、俺が許さざるを得ない状況であったとしても、父上や兄上、その他の者達は君を許しはしないだろうが……」
「……それはそうですよね」
「ただ、今回の件に関しては話しが色々と別だ。君を咎める必要がないと、恐らく全員が判断するだろう」
「え?」

 ゼルフォン殿下の言葉に、私は少し混乱していた。
 どうして私が、咎められないということになるのだろうか。失敗は失敗なのだから、どう考えても何かしらの罰を受けると思うのだが。

「君は気付いていないようだが、今回の件には聖女エムリーナの思惑が隠れている……いや、隠れているというのは大袈裟か。実際の所、彼女の思惑は多くの者に知られているのだからな」
「……どういうことですか?」
「端的に言ってしまえば、君は嵌められたのだよ。聖女エムリーナにとって、君は邪魔者だった。故に彼女は、君を排除する策略を企てたのだ」
「なっ……」

 私は思わず、声にならない声を出していた。
 聖女エムリーナの策略、そんなものがあったなんて、まったく思っていなかったからだ。
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