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2.子爵家での味方
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ダンカー子爵家において、私の部屋は屋根裏の物置となった。
誇りに塗れたそこに押し込まれた時に、私はここに幸せなどないと思った。
「……失礼します。入っても構いませんか?」
「え?」
なんとか寝る場所を確保した私は、突然部屋の戸を叩かれて驚くことになった。
とりあえず私は、恐る恐る部屋の戸を開けてみる。無視などしたら、何をされるかわからないと思っていたからだ。
すると目の前に、当時の私と同じくらいの年の男の子が立っていた。彼の隣には、少し年上の女の子もいた。
「どうもこんにちは。僕はディオンと申します。あなたにとっては一応兄となりますか」
「兄……」
「こちらはメイド見習いのケイティアです」
「ど、どうも……」
二人がどういった人物であるかは、格好からある程度予測できることではあった。
ただ自身の兄と名乗られて、私は面食らっていた。彼がダンカー子爵家の令息であることと自分の兄であることが、結びつかなかったのだ。
自身がダンカー子爵家の血を引いている。それは私も先のやり取りでよくわかっていたはずなのだが。
「ケイティア、掃除を頼めるかな? 一人では少し荷が重いかもしれないけれど、僕は彼女と話したいんだ。それに僕には、不幸にも時間がない」
「お任せください」
メイドであるケイティアは、既に掃除道具などを携えていた。
屋根裏の物置の惨状は、理解していたということだろう。彼女は素早く掃除の準備を始めていた。
それを見ていた私は、ディオン様に手を引かれて部屋の外に出ることになった。それは私が掃除の邪魔になるということだったのだろう。
「エリシアで良かったでしょうか?」
「あ、はい。エリシアと申します」
「申し訳ありません。このようなことになってしまって……なんと言ったらいいのか、あなたにはかける言葉も見つからない」
ディオン様は首を振りながら、私に言葉をかけてきた。
それはなんというか言葉足らずであったが、私には理解できた。要するに母に見捨てられて、物置だった部屋に押し込まれた現状を嘆いているのだと。
「しかしご安心ください。少なくとも、僕はあなたの味方です。何か困ったことがあったら、僕に相談してください。父上では駄目です。信じられないことですが、あの人にはあなたに対する愛情が欠片もない。母上もやめておいた方が良いでしょう。あなたを利用しようとは考えていますが、丁重に扱うつもりも特にありませんから」
「は、はあ……」
ディオン様は早口に捲し立ててきた。それは恐らく、時間がなかったからなのだろう。後から知ったことだが、彼は父親から私と接触することを禁止されていたらしいのだ。
だから素早く、彼は私に味方であることを伝えてきたのである。それは私にも理解できたので、とりあえず話は通じていたといえる。
「さてと、それでは僕はこれで失礼します。ああ、ケイティアのことは好きに使っていただいて構いませんから。ただ他のメイドには気を付けてください。皆あなたのことを侮っています。信用できるのはケイティアと、彼女の祖父であるゲラートだけです。それをお忘れなきように」
「あっ……」
最後にそれを言い残して、ディオン様は去っていった。
それから私は、ケイティアと過ごすことになった。この時は二人のことを完全に信用できていなかったため気まずい時間だったが、それでもどん底だった私にとって、それは幸せな時間だったといえる。
誇りに塗れたそこに押し込まれた時に、私はここに幸せなどないと思った。
「……失礼します。入っても構いませんか?」
「え?」
なんとか寝る場所を確保した私は、突然部屋の戸を叩かれて驚くことになった。
とりあえず私は、恐る恐る部屋の戸を開けてみる。無視などしたら、何をされるかわからないと思っていたからだ。
すると目の前に、当時の私と同じくらいの年の男の子が立っていた。彼の隣には、少し年上の女の子もいた。
「どうもこんにちは。僕はディオンと申します。あなたにとっては一応兄となりますか」
「兄……」
「こちらはメイド見習いのケイティアです」
「ど、どうも……」
二人がどういった人物であるかは、格好からある程度予測できることではあった。
ただ自身の兄と名乗られて、私は面食らっていた。彼がダンカー子爵家の令息であることと自分の兄であることが、結びつかなかったのだ。
自身がダンカー子爵家の血を引いている。それは私も先のやり取りでよくわかっていたはずなのだが。
「ケイティア、掃除を頼めるかな? 一人では少し荷が重いかもしれないけれど、僕は彼女と話したいんだ。それに僕には、不幸にも時間がない」
「お任せください」
メイドであるケイティアは、既に掃除道具などを携えていた。
屋根裏の物置の惨状は、理解していたということだろう。彼女は素早く掃除の準備を始めていた。
それを見ていた私は、ディオン様に手を引かれて部屋の外に出ることになった。それは私が掃除の邪魔になるということだったのだろう。
「エリシアで良かったでしょうか?」
「あ、はい。エリシアと申します」
「申し訳ありません。このようなことになってしまって……なんと言ったらいいのか、あなたにはかける言葉も見つからない」
ディオン様は首を振りながら、私に言葉をかけてきた。
それはなんというか言葉足らずであったが、私には理解できた。要するに母に見捨てられて、物置だった部屋に押し込まれた現状を嘆いているのだと。
「しかしご安心ください。少なくとも、僕はあなたの味方です。何か困ったことがあったら、僕に相談してください。父上では駄目です。信じられないことですが、あの人にはあなたに対する愛情が欠片もない。母上もやめておいた方が良いでしょう。あなたを利用しようとは考えていますが、丁重に扱うつもりも特にありませんから」
「は、はあ……」
ディオン様は早口に捲し立ててきた。それは恐らく、時間がなかったからなのだろう。後から知ったことだが、彼は父親から私と接触することを禁止されていたらしいのだ。
だから素早く、彼は私に味方であることを伝えてきたのである。それは私にも理解できたので、とりあえず話は通じていたといえる。
「さてと、それでは僕はこれで失礼します。ああ、ケイティアのことは好きに使っていただいて構いませんから。ただ他のメイドには気を付けてください。皆あなたのことを侮っています。信用できるのはケイティアと、彼女の祖父であるゲラートだけです。それをお忘れなきように」
「あっ……」
最後にそれを言い残して、ディオン様は去っていった。
それから私は、ケイティアと過ごすことになった。この時は二人のことを完全に信用できていなかったため気まずい時間だったが、それでもどん底だった私にとって、それは幸せな時間だったといえる。
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