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16.信頼しているから
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「マルガン様……私がそちらに行けば、ケイティアを解放してくれるのですか?」
「もちろんだとも。僕の目的はお前の命なのだからな」
私の質問に、マルガン様は意気揚々と答えてくれた。
それは恐らく、嘘ではないだろう。今の彼は正気ではないが、私への執着だけは確実なものだ。
「んんっ……」
「エリシア嬢、落ち着いてください。マルガンの要求など、受け入れてはいけません」
ケイティアとレディオル様は、それぞれ首を振っていた。
私が行くことに、彼らは反対してくれている。ケイティアは自己犠牲という観点から、レディオル様は騎士としての判断から。
ケイティアが犠牲になるというのは論外だ。それは考えるまでもない。
レディオル様の方は、どうだろうか。騎士としての彼の腕前は信頼できる。しかしそれでも、説得できなければこの状況を覆すことは難しいのではないだろうか。
「レディオル様……」
「エリシア嬢……まさか」
そこで私は、レディオル様に目で合図をした。
それは私が、囮になるという合図だ。恐らく彼には、伝わっているだろう。
ケイティアを助けつつ、マルガン様を無力化するなら、それが一番良い方法だ。私を切ろうとする時に、彼には必ず隙ができるのだから。
「……」
「エリシア嬢!
「ふはっ!」
私はゆっくりと、マルガン様の方に歩み寄っていく。
レディオル様は、それを見て剣に手をかける。私が動いた以上、彼も動かざるを得ないということだろう。
それならこちらとしては好都合だ。マルガン様は、私が想定していた通りにケイティアを放り投げて、私の方に向かってくる。それは正しく、私が思い描いた動きであった。
「エリシア! これでお前も終わり――」
「させるか!」
「――があっ!」
私に切りかかってきたマルガン様だったが、その剣が届くことはなかった。
彼の剣は、宙に浮いている。踏み込んだレディオル様が、手首ごと素早く切り離したのだ。
やはり彼の剣技の技術は、卓越している。その腕を信頼して良かったと、心から思う。
「うぎゃあああああああ!」
「エリシア嬢、なんという無茶を……」
「すみません。でもこれで……」
「でも何もありません。このような馬鹿げた真似は控えていただきたい」
「あ、うっ……申し訳ありませんでした」
レディオル様は、かなり怒っているようだった。
それは当然と言えば当然のことだ。ただ今まで見たことがない形相で怒られて、私は少し怯んでしまう。
しかし私は、すぐに状況を思い出した。叫びをあげているマルガン様は、恐らく危険な状態だ。早く治療をしなければ命に関わる。
「レディオル様、あれは……」
「……マークス侯爵」
そこで私の目に入ってきたのは、マークス侯爵だった。
彼は腕を押さえて膝をつくマルガン様を見下ろしていた。とても悲しそうな、しかしそれでも覚悟を決めた表情で。
「もちろんだとも。僕の目的はお前の命なのだからな」
私の質問に、マルガン様は意気揚々と答えてくれた。
それは恐らく、嘘ではないだろう。今の彼は正気ではないが、私への執着だけは確実なものだ。
「んんっ……」
「エリシア嬢、落ち着いてください。マルガンの要求など、受け入れてはいけません」
ケイティアとレディオル様は、それぞれ首を振っていた。
私が行くことに、彼らは反対してくれている。ケイティアは自己犠牲という観点から、レディオル様は騎士としての判断から。
ケイティアが犠牲になるというのは論外だ。それは考えるまでもない。
レディオル様の方は、どうだろうか。騎士としての彼の腕前は信頼できる。しかしそれでも、説得できなければこの状況を覆すことは難しいのではないだろうか。
「レディオル様……」
「エリシア嬢……まさか」
そこで私は、レディオル様に目で合図をした。
それは私が、囮になるという合図だ。恐らく彼には、伝わっているだろう。
ケイティアを助けつつ、マルガン様を無力化するなら、それが一番良い方法だ。私を切ろうとする時に、彼には必ず隙ができるのだから。
「……」
「エリシア嬢!
「ふはっ!」
私はゆっくりと、マルガン様の方に歩み寄っていく。
レディオル様は、それを見て剣に手をかける。私が動いた以上、彼も動かざるを得ないということだろう。
それならこちらとしては好都合だ。マルガン様は、私が想定していた通りにケイティアを放り投げて、私の方に向かってくる。それは正しく、私が思い描いた動きであった。
「エリシア! これでお前も終わり――」
「させるか!」
「――があっ!」
私に切りかかってきたマルガン様だったが、その剣が届くことはなかった。
彼の剣は、宙に浮いている。踏み込んだレディオル様が、手首ごと素早く切り離したのだ。
やはり彼の剣技の技術は、卓越している。その腕を信頼して良かったと、心から思う。
「うぎゃあああああああ!」
「エリシア嬢、なんという無茶を……」
「すみません。でもこれで……」
「でも何もありません。このような馬鹿げた真似は控えていただきたい」
「あ、うっ……申し訳ありませんでした」
レディオル様は、かなり怒っているようだった。
それは当然と言えば当然のことだ。ただ今まで見たことがない形相で怒られて、私は少し怯んでしまう。
しかし私は、すぐに状況を思い出した。叫びをあげているマルガン様は、恐らく危険な状態だ。早く治療をしなければ命に関わる。
「レディオル様、あれは……」
「……マークス侯爵」
そこで私の目に入ってきたのは、マークス侯爵だった。
彼は腕を押さえて膝をつくマルガン様を見下ろしていた。とても悲しそうな、しかしそれでも覚悟を決めた表情で。
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