私を家から追い出すと言っていた夫が、逆に家から追い出されました。義理の家族は私の味方です。

木山楽斗

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19.父の失脚

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「マークス侯爵、父上のせいで申し訳ありませんでした」
「いや、そのことは気にしていない。こちらもエリシア嬢には迷惑をかけた。しかし本当なのかね?」
「ええ、父上は失脚しました。僕と母は数年前から、それを望んでいました」

 ディオン様は、私達に驚くべきことを告げてきた。
 それは父――ダンカー子爵の失脚である。彼は私がマークス侯爵いる間に、ダンカー子爵夫人と協力して父親の権力を奪い去ったらしい。

「父上は欲深い人です。その割に貴族……統治者としての才能がありません。マークス侯爵家の支援を求めなければならなくなるくらいですからね」
「彼が優れた人間ではないということは、私も耳にしていた。それは残念ながら真実だったということか……」
「今回の件でも、父上はマークス侯爵を騙していました。それでいい気になっていたこともあって、簡単に失脚させられましたよ。元々人望もありませんでしたからね」

 ディオン様は、涼しい顔をしていた。実の父親を失脚させたことに対して、彼は特に何も感じていないようだ。
 それは理解できる。ダンカー子爵は最低の人間だ。私も一応彼の娘であるが、会ってから一度もその評価を改める機会はなかったくらいに。

「これからは僕が当主となって、ダンカー子爵家を背負っていきます。まあそれは、マークス侯爵家にはもう関係がないことかもしれませんが……」
「……マルガンとエリシアが離婚したとはいえ、私はダンカー子爵家との繋がりが絶たれたとは思っていません。もちろん、あなたが問題が起きた侯爵家との繋がりが必要ないというなら話は別ですが」
「まさか、マークス侯爵がこれからも懇意にしてくれるというなら、こちらとしてはありがたい限りです」

 ディオン様とマークス侯爵は、握手を交わしていた。
 色々と問題があった二家ではあるが、それでもその繋がりはこれからも続いていくようだ。それは私にとって、とても嬉しいことである。

「エリシア……あなたにも色々と迷惑をかけてしまいましたね」
「ディオン様……」
「もうかつてのような生活はさせはしません。これからは自由に生きてください」
「自由に、ですか?」
「今回の件で色々とありましたから、あなたにこちらから何かを求めようとは思っていません。あなた自身の夢などに向かって行って欲しいと思っています」

 そこでディオン様が、私に言葉をかけてきた。
 どうやら彼は、結婚によって色々と大変な目にあった私を気遣って、提案してくれているらしい。
 しかし急に自由にしろと言われても、少々困ってしまう。別に私に夢などは特にない。

 ただ私は、ふとレディオル様の方を見た。
 すると彼と目が合った。それはなんというか、私の進むべき道を示しているような気がした。
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